フロントは再び決断の時を迫られている。 マリノスを再構築できる人材に監督を任せるべき [J20節 新潟戦レビュー]

八方塞がりに近い形での敗戦

未来に向けた積み上げをあきらめ、先行投資をするわけでもなく、ただ目の前の結果のみを追いかけている。すべては残留という至上命令をクリアするための最善策で、多くの犠牲を払ってでも掴み取らなければいけない居場所がある。

それなのに順位が近い直接のライバルに屈してしまった。前半に放ったシュートはわずかに1本。後半も3本のみ。シュート本数で良し悪しを語るつもりはないが、どれだけ劣勢だったのか、ものさしになる数字だ。

我慢と辛抱を続けたが、73分に相手の素晴らしい対角線フィードとゴラッソで先制を許した。それまでGK飯倉大樹の好セーブを中心に粘り強く守っていたとはいえ、やはりボールを持つ時間が少な過ぎるために疲弊してくる。アンデルソン・ロペスとともに最前線からプレスに走った天野純は「徐々に疲れさせられているのか行きたくても行けない状況になっていた。制御しきれない時間も出てしまった」と首を横に振った。

そこから反発しようにも、選手の駒が圧倒的に不足している。ここへきて不運なことに怪我人が多く、不可解な起用法が続けばベンチ入りしている選手のモチベーションも下がる。効果的な采配もない。これでは後半途中からのギアアップは不可能で、ビハインドの展開になった瞬間に暗いトンネルに入り込んでしまう。

鹿島アントラーズとFC町田ゼルビアに2連勝したのは、一過性の相性による部分が強かった。ボールを持つことに執着しない相手だからこそ、こちらも後ろ髪を引かれることなくロングボールを活用できた。ボールを持つ相手に対して、受動的な守備を繰り返せば疲弊するし、かといって同じようにポゼッションでも対抗できない。

あまりにも苦い黒星は、八方塞がりに近い形での敗戦だった。

はたしてそこに明るい未来はあったのか

23日の連戦ではない。時間は十分過ぎるほどにあった。準備期間の有無は、勝敗や内容と関係ないことがわかっただろう。水曜日に天皇杯2回戦が組まれていた日程など、何の言い訳にもならない。山根陸以外の10人を先発入れ替えしているのだから、体力的には十分にフレッシュな状態だった。

たしかに前半と後半途中までは、狙いとするサッカーを展開できていた。鹿島戦や町田戦で見つけた勝ち筋を追い求め、統一感を持って戦えていた。「75分くらいまで我慢しながらゲームをコントロールできていたし、新潟がやりたいサッカーをできていたわけでもない。あの失点のところだけなければ、そのあとの時間でもしかしたらチャンスがあったかもしれない」という山根陸の言葉にも頷ける。

しかし、はたしてそこに明るい未来はあったのか。

現体制の限界が見え隠れしている。試合後会見や囲み取材でコメントを求められても「すべてにおいて成長させていく」という抽象的な表現しか用いることができず、何かを具体的に提示できるわけでもない指揮官への求心力に疑問符が付く。試合後のロッカールームでは「戦う姿勢が足りない」と精神論を展開するだけで、選手と問題意識が乖離しているようにも感じる。

シーズンは残り半分を切った。19位のチームに敗れて最下位のままなのだから、少しも楽観視できる状況ではない。今すぐに何かを変える必要がある。

外国籍監督にこだわる必要はない

フロントは再び決断の時を迫られている。

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