ハマス包囲強まる、中東諸国がトランプ氏のガザ計画受け入れで圧力
アラブ諸国やイスラム諸国の首脳は、イスラム組織ハマスに対し、パレスチナ自治区ガザでの戦闘終結に向けたトランプ米大統領の新たな提案を受け入れるよう圧力をかけている。細部への懸念よりも、戦闘終結の必要性を優先する姿勢だ。
事情に詳しい複数の関係者によれば、20項目から成る和平への提案の一部は、ニューヨークで最近開かれた会談でトランプ氏とアラブ・イスラム諸国首脳が合意した内容と異なるものの、荒廃したガザでのイスラエルの軍事攻勢を終わらせるという目標では一致している。
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関係者らによると、2023年10月のハマスによる攻撃以降のイスラエルによるガザでの軍事作戦と、中東地域における軍事的覇権の主張は、自国の安全保障への脅威だとアラブ・イスラム諸国の首脳らはみている。関係者は、自由に話すためだとして匿名を条件に語った。イスラエルは約2年間にわたりハマスの壊滅を目指しており、その過程でガザを荒廃させ、人道危機を引き起こした。飢餓や死に直面するパレスチナ人の映像は世界中に流れている。
その間に紛争は拡大し、イスラエルはレバノンやシリア、イエメンで作戦を展開したほか、イランとの間では直接的なミサイル発射の応酬に至った。9月にはイスラエルがハマス幹部の殺害を狙い、カタールの首都ドーハで攻撃を実施した。
先週ニューヨークに滞在し、国連総会でのトランプ氏とアラブ・イスラム諸国首脳との会談について詳細な説明を受けた地域の高官は、トランプ氏とイスラエルのネタニヤフ首相が発表した計画が米国との合意内容と一部異なることは想定内だったと語った。この高官は詳細への言及は避けつつ、ガザ住民の移住構想が終わったことなど、パレスチナ人やアラブ・イスラム諸国にとっての成果を見失わないことが重要だと強調した。
トランプ氏の提案はいくつかの問いに答えていない。特にガザの暫定統治やパレスチナ警察を訓練・支援する国際安定化部隊の展開に関する点が不明瞭だ。それでも戦闘をやめ、パレスチナ人が残って再建に関わり、イスラエルが完全撤退することを明記した点は重要な成果だと、高官は述べた。
サウジアラビアの考えに詳しい関係者によれば、そうした理由から同国やヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)、インドネシア、パキスタン、トルコ、カタール、エジプトの外相は9月29日夜、速やかに提案への支持を表明した。
従ってハマスとしては理論上、提案を受け入れ、交渉に応じざるを得ない状況だ。特に、最も近い関係にあるエジプト、カタール、トルコがそれを望んでいると高官は語った。計画にはハマスの武装解除が盛り込まれているが、「平和共存を誓う者」への恩赦や、安全な退去の保証も含まれている。
カタールのムハンマド首相は、同国とエジプトが29日夜に計画をハマスに手渡したと明らかにした。事情に詳しい関係者によると、ハマスの代表団は30日、ドーハでカタールとエジプト、トルコの当局者に対し、提案を慎重に検討しているとしつつ、一部技術的側面の明確化を求めていると伝えた。
この関係者によると、ハマスは他のパレスチナ諸派と協議した上で対応を準備する見通し。トランプ氏は30日、ハマスが決断に使える時間は「3-4日程度」だと述べた。
ムハンマド首相は今週、カタールの報道機関アルジャジーラとのインタビューで、「実現に向かい始めた目標がある。戦争の終結だ」と発言。その上で、「明確化を要する事柄や、議論や交渉が不可欠な事項もある」と述べた。
ムハンマド首相は、ニューヨークでのトランプ氏との会合後、自国とアラブ・イスラム諸国の代表が「米国側と協力し」、ガザ計画に意見を反映させたと説明。一部は「考慮された」としつつ、反映されなかった部分も当然あると語った。
ムハンマド氏は具体的な内容には触れなかったが、「流血を止める解決策を模索する」ために、全員が「建設的」に計画を受け止め、関与することを期待すると付け加えた。
原題:Hamas Pressed by Arab, Muslim States to Accept Trump’s Gaza Plan(抜粋)
— 取材協力 Fiona MacDonald