【コラム】世界に追い付いた日本、不愉快な正常化遂げる-オーサーズ

コラムニスト:John Authers

Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

今年打撃を受けたのは米国の例外主義だけではない。経済の常識に当てはまらない国とされてきた日本もまた変わりつつある。

  日本の有権者はその現実を20日の参議院選挙であらためて突き付けた。長年政権を担ってきた自民党を中心とする政権は、衆議院に続き、参院でも過半数を割り込んだ。

石破政権存続の確率

   昨年10月に就任した石破茂首相は今後、新たな連立政権の構築を迫られる公算が大きい。予測市場では石破政権存続の可能性について、依然として厳しいが、わずかに改善されたとの見方が示されている。

  円相場がやや上昇し、市場がこの選挙結果をおおむね織り込んでいたことが分かる。

  長期的に見れば、日本の変化は否定できない。東京で長年にわたり投資銀行業務に携わり、ニュースレター「ジャパン・オプティミスト」を執筆するイェスパー・コール氏は次のように指摘している。

誤解してはならない。これは関税だけの話ではない。自民党の根本的な存在意義に、米国に解放され、民主化された日本において、独立してはいるものの米国に忠実な代理人としての役割があった。だが、その核心が今、揺らいでいる。米国の新たな国家的優先事項や経済課題、非民主的なリーダーシップスタイルを日本国民は単純に受け入れられなくなっており、それが自民党の信頼性を損ねている。

「氷河期」終わる

  ある意味で、有権者の判断は国債市場の評価を追認している。日本30年国債利回りはここ20年余りで最も高い3%に達した。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を経て、日本経済の「氷河期」がようやく終わりを迎えつつあるのかもしれない。

米国上回るインフレ率

  それはインフレ率にも表れている。消費税率の引き上げなど一時的な要因を除けば、日本の物価上昇率は過去40年間、米国の消費者物価指数(CPI)が示すインフレ率をほとんど上回ったことがなかった。だが、今は違う。

  他の多くの先進国のように、日本の有権者がこうした現状を招いた政治家に不満をぶつけているのは驚きではない。日本がもはや例外的な国ではなくなりつつあるという重要な兆しの一つだ。

後れを取る日本

  経済成長の面でも同様だ。人口減少が続く日本では、全体の国内総生産(GDP)では実態を正確に捉えにくい。

  1人当たりのGDPで見ると、日本は1990年代半ばまでに米国とドイツを上回り、2008年の世界金融危機後までは持ちこたえていた。しかし、12年に政権に返り咲いた安倍晋三首相が「アベノミクス」と呼ばれる経済政策を打ち出すと、円安が進み、ドル建ての1人当たりGDPは米独と大きな差が開いた。   

  参院選の結果は、パンデミック後の他国の選挙ほど劇的ではなく、今のところ明確なポピュリズム勢力の台頭も見られない。

  それでも、どうやら日本は「正常化」を遂げたと見なすべきだろう。ただし、それは好ましい意味での正常化ではない。日本はもはやインフレと無縁ではなく、国民はそれを快く思っていない。

(ジョン・オーサーズ氏は市場担当のシニアエディターで、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。ブルームバーグ移籍前は英紙フィナンシャル・タイムズのチーフ市場コメンテーターを務めていました。このコラムの内容は、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Japan Just Caught Up With the Rest of the World: John Authers (抜粋)

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