駒澤大学が全日本大学駅伝で2大会ぶりV 藤田敦史監督「非常に強い勝ち方ができた」
第57回全日本大学駅伝
11月2日@愛知・熱田神宮西門前~三重・伊勢神宮内宮宇治橋前の8区間106.8km優勝 駒澤大学 5時間06分53秒2位 中央大学 5時間08分54秒3位 青山学院大学 5時間09分28秒4位 國學院大學 5時間09分45秒5位 早稲田大学 5時間10分21秒6位 帝京大学 5時間10分56秒7位 創価大学 5時間11分56秒8位 順天堂大学 5時間14分33秒ーーーーーーーーーー9位 城西大学 5時間15分26秒
10位 日本大学 5時間15分37秒
11月2日に開催された第57回全日本大学駅伝で、駒澤大学が2年ぶり17度目の日本一をつかみとった。35秒差の4位で襷(たすき)を受けた5区(12.4km)の伊藤蒼唯(あおい、4年、出雲工業)が、区間新記録の走りで後続に52秒差のトップに浮上。そのリードを守り切った。MVPに輝いた伊藤は「これまで区間2位が何度もあったんですけど、この大会で区間賞が取れて優勝にも貢献できたので、価値のある区間賞になったと思います」と語った。
「5区をストロングポイントにして一回前に押し上げる」
10月13日の出雲駅伝で5位に終わり、駒澤大の選手たちは大きなショックを受けた。キャプテンの山川拓馬(4年、上伊那農業)は「タイムが拮抗(きっこう)していたとはいえ、初めて5番になったのは全員にとって衝撃的なことでした。このままではダメだと、4年生を中心に『残り二つを取りにいこう』という話をしました」と振り返る。ただ、光は見えていた。伊藤は言う。「惨敗はしたんですけど、個人個人を見たら区間2位が4人いたし、全日本で大砲が戻ってくる。優勝を目指せると思いました」。大砲とは、けがで出雲には間に合わなかった大エースの佐藤圭汰(4年、洛南)だ。
"大砲"佐藤圭汰は、全日本で復帰して7区を走った(撮影・高野みや)選手たちが「出雲ショック」から前を向いたことで、藤田敦史監督も思いを新たにしていた。國學院大學に負けて5連覇を逃した昨年の全日本から学んだ。「去年の國學院さんは5区の野中君、6区の山本君で一気に上がっていきました。ウチが7区篠原、8区山川で追い上げても届かなかった。何が必要かを考えたときに、各区間で5番以内を目指すことと、5区をストロングポイントにして一回前に押し上げる。そして7区の(佐藤)圭汰、8区の山川で勝負と考えました」
従来はチームで7、8番目の選手を配していた「つなぎの5区」。今回は「攻めの5区」と頭を切り替え、当日変更でエース格の伊藤に託した。そしてレースは藤田監督の思い描いた通りに動いた。
大会を終え、佐藤(右)に声をかける大八木弘明総監督(左から2番目、撮影・篠原大輔)箱根へ「チーム駒澤」で勝ちにいく
トップに35秒差の4位で走り始めた伊藤は「攻めの5区」起用を意気に感じていた。「やるしかない」。前だけ見て突っ込んだ。1.6kmで帝京大学を抜き、5.7km付近で先頭集団の中央大学、國學院大學に追いつく。中央が遅れ、7km付近で伊藤が國學院の飯國新太(2年、國學院久我山)を突き放す。区間記録を17秒短縮しての区間賞で6区の村上響(3年、世羅)につないだ。ここからは独走で、山川が両腕を掲げてゴールテープを切った。
伊藤から襷を受け、独走態勢を維持した6区の村上響(撮影・高野みや)「出雲で負けたことで学生たちの絆が深まったことが勝因だと思っています。私の考えた戦略と、実際に学生たちがレースを進めた流れが合致した。私の中では非常に強い勝ち方ができたのではないかと思っています」と藤田監督。静かな語り口ではあったが、力強い言葉を並べた。それだけの手ごたえを得た最多17度目の全日本制覇、そして最多30度目の3大駅伝制覇だった。
いざ箱根。得意の全日本で狙い通りのレースができても、藤田監督は「箱根は別物の駅伝だととらえています」と慎重に言った。「(山)上りと下り(のスペシャリスト)を作らないと勝てない。体調面も含めて、チーム一丸となって取り組みます。東京に残って寮で応援してくれた選手にも力のある者がたくさんいます。『チーム駒澤』で、総合力で戦って勝ちにいきたいです」。伊勢路のゴールから、3年ぶりの箱根総合優勝へと駆けだした。
伊勢路で歴代最多の優勝回数を更新、次は3年ぶりの箱根駅伝総合優勝を目指す(撮影・篠原大輔)「圭汰が帰ってきて、安心して自信を持って走れた」
7区で区間3位の佐藤圭汰の話「(6月に)3回目の恥骨のけがをして、すごく不安な気持ちでいっぱいでした。いろんな治療やリハビリを試して、完全に違和感がなくなるまで時間がかかりました。9月中旬にいい感じで復帰して、本格的な練習は10月からです。出雲は間に合わなかったんですけど、『全日本ではしっかりチームに貢献するぞ』という気持ちで過ごしていました。優勝できたのはうれしいんですけど、個人的にはよくなかったです。最低でも49分台と思ってたのに黒田選手に1分も差をつけられて、ふがいない思いがあります。13kmで一気に足が重くなって、練習不足を痛感しました」
佐藤圭汰(左)から襷を受けたキャプテンの山川拓馬(撮影・佐伯航平)8区で区間3位の山川拓馬キャプテンの話「追われる展開がなかったので、緊張しすぎて全然動かなかった感じです。2分半だったらやられるな、というのがあったので変に緊張しちゃいました。自分の課題であるラストは少し上げられたんですけど、逆に中盤が落ちてからの上がりだったので……。自分が(日本選手区間最高記録を)出したかったんですけど工藤にやられました。箱根ではずっといい走りができてないので、『四度目の正直』で5区なら区間記録を狙いますし、2区だったら日本選手最高は必ず取りにいきたいです。(佐藤)圭汰が帰ってきて、全員が安心して自信を持って走れたのはとてもすごく大きかったなと思ってます」