手足口病、プール熱、ヘルパンギーナ…夏に流行る“子どもの感染症”と家庭でできる対策とは【医師解説】
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夏になると、子どもたちの間で急増する“夏風邪”。中でも、手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱は、保育園や小学校で一気に広がることも少なくありません。高熱や発疹など、一見すると熱中症とも似た症状に戸惑う親も多いのではないでしょうか。
本記事では、夏に流行しやすい子どもの感染症の特徴や症状、熱中症との違い、家庭でできる予防対策について、専門医の武井先生にインタビュー。パパママが知っておきたい「家庭内感染を防ぐポイント」や、「免疫力を高める生活習慣」など、すぐに役立つ情報をお届けします。
■夏に流行しやすい子どもの感染症の特徴と症状
夏に子どもたちの間で流行しやすい感染症は、ウイルスが原因となるものがほとんどです。特に代表的なものとして、手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱(咽頭結膜熱)が挙げられます。
●手足口病
手足口病は、口の中、手のひら、足の裏などに水疱性の発疹が現れるウイルス性の感染症です。発熱はあっても微熱程度か、出ないことも多いでしょう。主な症状としては、口内炎のような痛みのある水疱、手のひらや足の裏、お尻にできる赤い発疹が見られます。口の中の痛みで食欲不振になることもあります。感染経路は、飛沫感染、接触感染、そして便中に排出されたウイルスを介した経口感染です。
●ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、急な高熱と、のどの奥にできる水疱や潰瘍が特徴の感染症で、俗に「夏風邪の王様」とも呼ばれます。38~40℃の高熱が2~4日続き、のどの奥(軟口蓋、口蓋垂あたり)に直径1~5mmの水疱や潰瘍ができます。のどの痛みが強く、食事が摂りにくくなることが多いでしょう。感染経路は、飛沫感染、接触感染、そして便中に排出されたウイルスを介した経口感染です。
●プール熱(咽頭結膜熱)
プール熱はアデノウイルスが原因で、高熱、のどの痛み、結膜炎の3つが主な症状です。プールを介して感染が広がることからこの名前がつきましたが、プール以外でも感染します。39~40℃の高熱が数日から7日と長く続き、のどの痛みや充血、目の充血や目やにが出ます。感染経路は飛沫感染と接触感染で、タオルの共有なども感染経路になります。
今年の流行傾向については、現時点(2025年7月)では明確な予測は困難ですが、例年通り手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱が流行の中心となる可能性が高いでしょう。特に、COVID-19の流行が落ち着き、人々の交流が活発になっているため、従来の感染症の流行が再び大きくなることも考えられます。
■感染症と熱中症の見分け方
感染症と熱中症は、どちらも発熱やぐったりするといった症状があるため、見分けにくいことがあります。特に、小さなお子さんの場合、症状をうまく伝えられないため、保護者の方が注意深く観察することが重要です。
●熱中症のサイン
熱中症は屋外での活動後、特に暑い環境にいた後に発症しやすいです。発熱とともに、汗をたくさんかいている、皮膚が赤くて熱っぽい、顔色が悪い、ぐったりしている、頭痛、吐き気、めまいなどが見られます。水分補給をしても改善しない、意識が朦朧とするなどの場合は重症の可能性が高いです。
●感染症のサイン
感染症は熱とともに、咳・鼻水・咽頭痛、発疹、下痢、嘔吐など、特定の部位に症状が出ていることが多いでしょう。周囲に同じような症状の人がいる、保育園や学校で流行しているなどの情報がある場合は、感染症の可能性が高まります。発熱しても比較的元気がある、特定の症状(のどの痛みで食べられない、発疹がかゆいなど)が際立っていることも特徴です。
●見分けるポイント
最も大きな違いは、原因が何かということです。熱中症は体温調節機能の破綻が原因である一方、感染症はウイルスが体内で増殖することが原因です。
発熱以外の症状(咳、鼻水、発疹など)の有無や、直前の状況(暑い場所での活動の有無)をよく観察し、判断に迷う場合は医療機関を受診しましょう。特に、乳幼児や持病のあるお子さんの場合は、早めに受診することが大切です。熱中症であれば体を冷やせば短時間で改善することが多いです。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
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夏にこれらの感染症が流行しやすいのには、以下の通りの理由が考えられています。
●集団生活の場で特に広がりやすい理由
●ウイルスの特性
手足口病やヘルパンギーナの原因となるエンテロウイルスは、高温多湿の環境で活性を保ちやすい性質があります。また、プール熱の原因となるアデノウイルスも、夏場に活動が活発になります。
●子どもの行動特性
保育園や幼稚園、小学校では、子ども同士の距離が近く、遊びの中で自然と接触する機会が多くなります。おもちゃの共有や遊具の使用なども、ウイルスの媒介になりやすいです。
また、小さな子どもは手洗いの習慣が十分に身についていないことが多く、鼻を触った手で物を触ったり、口に手を入れたりすることで、ウイルスを広げてしまいます。夏は水遊びやプールの機会が増えますが、プールの水を介してだけでなく、タオルの共有や、更衣室などでの接触でも感染が広がりやすいです。
●症状の発見の遅れ
発熱のみの場合や、発疹が目立たない場合など、初期症状を見過ごしてしまい、知らず知らずのうちに集団内で感染を広げてしまうことがあります。
■子どもから親世代への感染リスクと大人が感染した場合の注意点
これらのウイルスは子どもから親世代への感染するリスクは十分にありえます。親世代が罹患すると、子どもよる重症化することもあります。
●大人が感染した場合の注意点
子どもが感染しても軽症で済むことが多いこれらの感染症も、大人が感染すると、高熱や関節痛、全身倦怠感など、子どもよりも重い症状が出ることがあります。特に、手足口病は、大人が感染すると手足の発疹が非常に痛みを伴うことがあり、1か月して爪が剥がれてしまうといった後遺症が見られることもあります。
大人の場合、「ただの夏風邪だろう」と自己判断してしまい、診断が遅れることもあります。症状が長引く、高熱が続く、関節痛が強いなどの場合は、医療機関を受診しましょう。 また、大人が感染すると、家庭内でさらにウイルスを拡散させてしまうリスクもあります。症状が出ている間は、子どもとの密接な接触を避け、手洗いや消毒を徹底することが重要です。
■家庭内での予防策は?
夏の感染症から家族を守るためには、日々の生活習慣や衛生習慣の見直しが非常に重要です。
■感染症を家庭で防ぐために気をつけるべき生活習慣・衛生習慣
●徹底した手洗い
最も重要な予防策です。外出から帰った時、食事の前、トイレの後など、こまめに石鹸と流水で丁寧に手を洗いましょう。特に、子どもが触れるおもちゃや家具なども、定期的に消毒することが有効です。家族みんなで正しい手洗い方法を確認し、実践することが大切です。指・爪の間、手首まで意識して洗いましょう。
室内のウイルス濃度を下げるために、1日に数回、窓を開けて換気を行いましょう。対角線上の窓を開けると効率よく換気ができます。エアコンを使用している部屋でも、1時間に1回程度、定期的な換気を心がけてください。
●タオルの使い回しを避ける
手拭きタオルやバスタオルは、家族一人ひとりが専用のものを使うようにし、使い回しは避けましょう。感染症が流行している時期は、特に注意が必要です。
●排泄物の適切な処理
手足口病やヘルパンギーナのウイルスは便中にも1か月排出されるため、おむつ交換の際は使い捨て手袋を使用し、使用後は丁寧に手を洗うなど、排泄物の処理にも十分注意してください。
●室内の清掃・消毒
ドアノブ、電気のスイッチ、テーブル、リモコンなど、家族が 頻繁に触れる場所は、定期的に清拭・消毒を行いましょう。アルコール消毒液の使用も効果的です。
■子どもの免疫力を高めるための日常生活で大切な習慣
感染症にかかりにくい体を作るためには、日頃から子どもの免疫力を高める生活習慣を整えることが大切です。忙しい共働き家庭でも取り入れやすいポイントを紹介します。
●栄養バランスの取れた食事
毎日の食事で、炭水化物、タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂ることが基本です。特に、免疫細胞の働きを助けるビタミンA、C、Eや、腸内環境を整える食物繊維を多く含む野菜、果物を積極的に摂取してください。ヨーグルト、味噌、納豆などの発酵食品は、腸内の善玉菌を増やし、免疫力向上に繋がるのでおすすめです。
●十分な睡眠と規則正しい生活リズム
睡眠不足は免疫力を低下させます。年齢に応じた十分な睡眠時間を確保し、毎日決まった時間に就寝・起床する習慣をつけましょう。
●適度な運動
適度な運動は、ストレス解消になり、体力向上にも繋がります。積極的に体を動かす機会を作りましょう。
●ストレス管理と親子のコミュニケーション
ストレスは免疫力に悪影響を与えます。子どもの話を聞いてあげる時間を作ったり、一緒に遊ぶ時間を作るなどをして精神的な安定を保つことも重要です。忙しい共働き家庭では、親もストレスを感じやすいものです。親がリラックスできる時間を持つことも、結果的に家庭全体の雰囲気を良くし、免疫力を高めます。
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