NISMOロードカーの車種数倍増など、NMCの真田社長がNISMOブランドの新たな取り組みについて説明
日産自動車と日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)は12月16日、NISMOブランドを通じて、日産ブランド全体の価値向上を目指すことを目的とした新たな取り組みを発表した。
新たな取り組みでは、モータースポーツへの継続的な取り組みをする中で、カスタマイズ事業ではNISMOロードカーシリーズについて車種数を倍増させ、仕向地も拡大。現在、年間10万台規模の出荷台数を2028年に約1.5倍を目指す。また、ヘリテージ・レストア事業では現在展開している第2世代GT-R(R32~R34型)を中心としたレストア、レストモッド事業、パーツ販売事業の対象車種、対象地域を拡大していくことを明らかにした。
同日、NISMOショールームで「NISMOブランドの強化と活用」というタイトルで日産モータースポーツ&カスタマイズ 代表取締役社長 CEOの真田裕氏がこの取り組みについて説明した。
真田氏は最初にNMCについて説明。1984年に難波康晴氏が起こした日産モータースポーツインターナショナルは、モータースポーツのワークス活動をサポートするために日産から独立した組織である。
こちらとほぼ同時期に、櫻井眞一郎氏が日産自動車の大量生産車とは違うユニークなクルマを作りたいということから設立したオーテックジャパン、この2つの会社が2022年に統合してNMCとなっている。
NMCはさまざまなモータースポーツで活動を積み重ねてきている。直近では国内においてツーリングカーレースのSUPER GTに参戦。グローバルではフォーミュラEに参戦している。このフォーミュラEはすでにシーズンが開始されているが、昨シーズンは日産のオリバー・ローランド選手がドライバータイトルを獲得した。このことについて真田氏は「この活躍は、お客さまをワクワクさせるとともに、いろいろなものを鍛えるというわれわれの技術力が実を結んだ結果だと思います」と語った。
続けて「日産自動車は今、中期再建計画『Re:Nissan』を集中して実行しています。その中でエスピノーサ社長は日産のビジネスの安定には魅力ある商品をお客さまに届けることを第一に考えています。その中で進めているのが心がワクワクする、いわゆるハートビートモデルというものをしっかりと出していくことです。ハートビートモデルを構成するための1番大きな要素が“NISMO”になります」と現在の日産自動車においてのNISMOブランドが重要であるということを示した。
続いては今回の本題であるNISMOブランドの強化についての話となった。この取り組みには「モータースポーツへの継続的な取り組み」「カスタマイズ事業の拡充」「レストア事業の拡大」といった3つのアプローチが用意されている。
1番目に並べられているのが「モータースポーツへの継続的な取り組み」だ。日産自動車は継続的にモータースポーツと関わりを持っているが、これはユーザーにワクワク感を届けるほか、クルマ作りの面でも重要なものとなっている。モータースポーツの現場では非常に短い時間で「走る・止まる・曲がる」の要素について、現状と課題の把握から具体的な数値目標の設定、そして解決などを進めていけるものである。
そうしたモータースポーツの経験を生かして開発されているのが、カスタマイズ事業で手がける「NISMOロードカー」となるという。現在、NMCがフォーカスしているのが、日産の電動化技術「e-POWER」とBEV(バッテリ電気自動車)のチューニングとのこと。
標準車のe-POWERは加速が優れているところもユーザーに評価されているが、NMCでは独自に“加速感”という体験がどのようなものであればユーザーに好んでもらえるかを分析し、その結果を踏まえてe-POWERをさらにチューニングしたものを電動車におけるNISMOバージョンとしているとのことだ。
こうしたモデルは実際にユーザーに選ばれる傾向が強く、日産の先端電動技術モデルの販売では、例えば「ノート オーラ」では全体の20%がNISMOロードカーであり、「アリア」も全体の15%がNISMOロードカーであると説明した。
真田氏は「今後、車種展開を拡大することで、この数字をどんどん上げていきたいと考えています。そしてわれわれは日産自動車より小まわりがきく強みを持っているので、それを生かして試作車的なパイロットカーを作り、そのクルマをいろいろなサーキットに持ち込んで性能や魅力を追求していくことも検討しています。また、プロトタイプカーを製作してレースへ実戦投入し開発を進めて、技術的なフィードバックを盛り込んだ市販車の販売ということも進めていきたい」と語った。
最後に紹介するのが3つ目の柱として挙げられた「レストア事業の拡大」だ。現在もNMCは第2世代のスカイラインGT-Rと呼ばれるR32やR33、R34などを対象としたレストア事業を行なっており、どうやったらこれらのクルマをできるだけ長く「いいカタチで」乗ってもらえるかという研究を積み重ねてきたという。
そして現在、スカイラインGT-Rは日本だけでなくアメリカ、オーストラリア、欧州でも非常に人気が高まっており、市場規模としても看過できないものとなっていることから、これまで以上にユーザーのさまざまなニーズにしっかり応えつつ、ビジネスとしても日産自動車に貢献できるものとしていくと説明した。
このレストア事業について記者は真田氏に独自に1つの質問をしてみた。それはスカイラインGT-Rを乗り続けるために必要なパーツの供給についてだ。
現在もいくつかのパーツが再販されているが、オーナーレベル、レストア現場のレベルでは、足りない部品がまだまだたくさんある。それもスカイラインGT-Rの大きな魅力である「RB26DETT」の修理に必要なものも多い状況だ。
そこで「例えばエンジンブロック、エアフロメーター、燃料ポンプ、配線などの部品について再販する予定はあるか?」と聞いてみたところ、真田氏は「われわれも壊れるところはわかっています。レストア事業がグローバルな展開となればサプライヤーさまに対しても必要なパーツを多くの数で発注できるようになるので、これまで用意できなかったパーツも再販できる可能性は高くなります」と答えてくれた。
具体的にどのようになるかまでは今の段階では何もわからないが、NMCの今後の取り組みはスカイラインGT-Rファンにとって目が離せないものになりそうだ。
以上が「NISMOブランドの強化と活用」で真田氏から語られた主な内容になる。日産といえば、レース、スポーツカー、さらに過去の名車という3本の柱が日産ファンだけでなくクルマ趣味を持つ人にとって大きな魅力のポイントであるだけに、それらを強化していくNMCの今後の取り組みには期待したい。そしてその活動の一端が来年開催される東京オートサロン2026にて見られるはずだ。