ウクライナのスターリンク通信制限、「エネルギー停戦」に続くトランプの裏切りか(ニューズウィーク日本版)
アメリカの宇宙開発企業スペースXを率いる実業家イーロン・マスクは、ウクライナ軍が使用する衛星通信サービス「スターリンク」の通信制限について、責任はスペースXではなく、アメリカ政府にあると主張した。
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スターリンクの技術を活用した軍事向けサービス「スターシールド」はアメリカ政府が管理しており、その利用制限を最終的に決めるのはドナルド・トランプ大統領だという。マスクの発言は、ウクライナ当局が10月14日、事前通告なしに課された通信制限によってロシア軍に対する軍事作戦に支障が生じたと明らかにしたことを受けたものだ。「スターシールドのシステムはアメリカ政府が所有・管理している。通信速度や利用に関する制限はアメリカ軍が決定し、最終的には大統領が判断する」とマスクはXに投稿した。またマスクは、商用衛星インターネットサービス「スターリンク」と、軍事向けの「スターシールド」は別のシステムだと強調した。「スターリンクはスペースXが所有・管理する商用サービスだ。その利用は民間活動や防衛目的に限られ、攻撃を目的とした軍事行動には使用できない。民間企業として、そのような利用を認めるのは適切ではない」とマスクは述べた。こうしたなか、ウクライナの元国防相ミハイロ・フェドロフは、時速160キロ以下で飛行するドローンについて、スターリンクの通信が復旧しつつあり、攻撃や迎撃の任務を再開できる見通しだと明らかにした。フェドロフはXに「ウクライナの防衛にとって、スターシールドの速度制限を完全に撤廃することが今や不可欠だ」と投稿。マスクに謝意を示したうえで、「引き続き支援してくれることを期待している」と付け加えた。
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アメリカでは中間選挙を控え、燃料価格の高止まりが多くの消費者の負担となっている。こうしたなか、トランプは10月10日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、ロシアの製油所への攻撃をやめるよう伝えたと明らかにした。マスクも同日、Xに「ゼレンスキーはやりすぎだ」と投稿した。ベスクレストノフによれば、スターシールドを利用する通信端末は、移動速度が時速160キロを超えると通信に支障が生じるという。ウクライナの著名な活動家で、国防省のドローン技術担当顧問を務めたセルヒー・ステルネンコも、ドローンの速度が時速160キロを超えると「通信が途切れ始めた」と述べた。「我々の防衛部隊には、この制限について事前の通知がなかった。その結果、複数の作戦に支障が生じた」とベスクレストノフは述べた。ステルネンコも「複数の重要な作戦」が影響を受けたと明らかにした。ベスクレストノフは、今回の変更は「偶然とは考えられない」とし、「現在の政治情勢」と関係しているとの見方を示した。ステルネンコは「スペースXはトランプ政権の要請を受けて、こうした措置を取った可能性が高い」と主張していた。ただし、その根拠は示していない。
これに対し、マスクはその後の声明で、スターシールドの利用制限についてスペースXに責任があるとの見方を否定。政府が管理する同システムの制限を決める権限は、アメリカ軍とトランプにあると明言した。
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トランプが11日に「エネルギー停戦」を発表して以降、ウクライナがロシアの製油所を攻撃したと確認された事例はない。ゼレンスキーは13日、ロシアによるミサイル攻撃について、ウクライナは2日連続で同盟国から事前のミサイル警報を受けなかったと明らかにした。これを受け、アメリカがウクライナへの情報提供を制限したのではないかとの懸念が広がっている。ゼレンスキーによれば、ウクライナの防衛システムがミサイルを「探知したのは、すでにキーウの目前まで迫ってからだった」という。トランプは13日、アメリカは引き続きウクライナと情報を共有していると述べた。しかし、2025年初めにアメリカがウクライナへの情報提供を一時停止したことを覚えているウクライナ当局者は、警戒を強めているとみられる。また、ベスクレストノフは14日、その後に発表した声明で、スターリンクへのアクセスが制限されれば、ロシアのジェットエンジン搭載型自爆ドローン「シャヘド」がキーウなどの標的に到達する前に迎撃する能力が低下すると警告した。マスクは以前、ウクライナの政策に同意できない場合でも、スターリンクを紛争における「交渉の道具」として利用することは決してないと述べていた。ポーランドの副首相兼外相ラドスワフ・シコルスキは、マスクに向けて「大物のあなたは、また自社製品を政治に利用しているのか。我々ヨーロッパの顧客は、その動向を注視している」と投稿した。
シコルスキとマスクは、ウクライナでのスターリンクの利用をめぐり、これまでもSNS上でたびたび衝突している。