【動画】新種ネコ「ティルカヨ」熱狂の裏側、名前の意味が判明か
パオラ・ノガレス・アスカルンス氏は、この発見が世界中で大きな注目を集めるさまに驚いたという。(FERNANDO FACIOLE)
幸い、ティルカヨをめぐるメディアの大騒ぎから生まれた動きのほとんどは前向きなものだった。ティルカヨが話題になってから数週間、ノガレス・アスカルンス氏は世界中から寄せられるこのネコのファンアートを楽しんでいる。氏は論文共著者のエンソ・アリアガ・ロッセル氏とともにラパス県知事から表彰された。
この注目から生まれたちょっと面白い展開の一つは、ティルカヨの名前に関するものだった。
研究者たちが論文中でこのネコに「ティルカヨ」と名づけたのは、現地の住民の一部がそう呼んでいたからだ。しかし、ノガレス・アスカルンス氏がこの言葉の意味を調べたところ、スペイン語にもケチュア語(現地の先住民が話す言語)にも語源は見つからなかった。
ところが最近、ある言語学者から連絡があり、「ティルカヨ」は南米の別の先住民言語であるアイマラ語に由来している可能性があると指摘されたという。「ティル(til)」は「小さい」、「カヨ(cayo)」は「足」を意味する単語に由来するらしい。
ティルカヨの生息地は、違法な金採掘によって脅かされている。自然保護活動家たちは、新種への注目が生息地の保全につながることを期待している。(FERNANDO FACIOLE)
ティルカヨの足跡はオセロットやマーゲイ(いずれもオセロット属のネコ科動物)の足跡よりも小さいため、この説は理にかなっていると氏は言う。
さらに、自分たちもティルカヨの証拠を捉えたのではないかと期待する多くの市民科学者から、小型で斑点のあるネコ科動物の写真が送られてきているという。ノガレス・アスカルンス氏によると、これまでのところ、そのほとんどはマーゲイのようだ。それでもなお、人々が関心を持ってくれることは励みになると氏は言う。
違法な金採掘を根絶するきっかけになるか
ボリビアでは広い地域が違法な金の採掘によって脅かされている。ティルカヨの認知度の高まりは、地元の人々や動物を守るのに必要な政治的圧力を生み出す可能性もある。
違法採掘では、川底からすくい上げた堆積物に水銀を混ぜて金を取り出す。水銀は金を取り込んで合金(アマルガム)を作る性質をもつため、土砂を皿で揺すって金を選別するパンニングでは取りこぼしてしまうような微細な金の粒を抽出できるのだ。水銀の一部は河川に流れ込み、最終的には魚などの動物の体内に入り込む。地元の人々はこうした動物を食べているため、重金属中毒のリスクにさらされることになる。
オシオ氏によると、地元の地域でも違法な金採掘が頻繁に行われていて、保護区周辺の水質に影響を及ぼしているという。
ギャラリー:世界が熱狂した新種ネコ「ティルカヨ」 写真5点(写真クリックでギャラリーページへ)
ボリビアのユンガス地方に位置するセンダ・ベルデ動物保護区の近くにあるヨロサの集落。地元の人々は、新たに記載された種「レオパルドゥス・ティルカヨ(Leopardus tilcayo)」を、未記載種であることを知らずに、かねてより「ティルカヨ」と呼んでいた。(FERNANDO FACIOLE)
ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーで写真家のジョエル・サートレイ氏は、ティルカヨを撮影するためにセンダ・ベルデ保護区を訪れた。「採掘のせいで、水はチョコレートミルクのように見えました」と氏は語る。「3日後、警察が来て採掘を止めさせると、水はだいぶきれいになりました。水晶のように透き通っているとは言えませんでしたが、見ただけでその違いははっきりと分かりました」
これまで、違法採掘の根絶は困難だった。けれども、地方や国の政治家たちがこぞってティルカヨの保護に関心を寄せている今、状況は好転しはじめているのかもしれない。
「私たちはティルカヨを保全の旗印として活用し、近くの町コロイコから採掘をなくしたいと願っています」とオシオ氏は言う。
一方、ノガレス・アスカルンス氏は、このネコが国際的に注目されることで、次の段階に資金が集まりやすくなることを期待している。つまり、ティルカヨについて詳しく調べ、どうすれば保護できるかを明らかにするための研究への資金だ。
ボリビアはワールドカップの代表チームで知られるわけでもなく、世界四大ミスコンテストで優勝したことも一度もない、と氏は冗談を言う。「けれども今、科学と生物多様性のおかげで、全世界がボリビアのことを話題にしているのです」
特集ギャラリー:ひそやかなネコ 写真と図解18点(2017年2月号)(写真クリックでギャラリーページへ)
Otocolobus manul、コロンバス動物園・水族館(米国) (PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE)
ナショナル ジオグラフィック協会は、世界の素晴らしさに光を当て、保護することに取り組む活動の一環として、エクスプローラーのパオラ・ノガレス・アスカルンス氏の活動を支援しました。
文=Jason Bittel/写真・動画=Fernando Faciole/訳=三枝小夜子