日本も空対空ミサイルの長射程化、ASM
米国と中国は空対空ミサイルの長射程化競争に突入しており、防衛省も31日に公表した概算要求の中で「空対艦/対空ミサイル(ASM-3改)の取得整備」に言及し、射程が400kmを超えると予想されているASM-3改の空対空ミサイル化には海外のディフェンスメディアも注目している。
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は中国の航空戦力に関する報告書の中で「2020年時点のJ-20は技術的に比較的未熟で、2025年後半になると改良され技術的に成熟したJ-20Aが登場し、これをベースにした複座型のJ-20Sも含めて同機の年間生産数は120機、最低でも約13個航空旅団で320機~350機のJ-20、J-20A、J-20Sが運用されている」「まもなくPL-16も実戦配備されるだろう。PL-16はPL-15と同等の能力をもつ空対空ミサイルだが、本体の小型化と折りたたみ式のフィンを備えているためJ-20のウェポンベイに6発搭載できる」と言及。
出典:彩云香江
中国空軍が使用しているPL-15はデュアルパルス固体ロケットモーター(Dual-Pulse Rocket Motor)の採用によってAMRAAMを超える射程距離を実現しただけではなく、目標に接近した終末誘導段階で第2パルスに点火して再加速することで、最大9Gの回避機動までしか行えない戦闘機を追尾できるようになり、敵機がミサイルの接近に気づいて回避機動をとっても逃げ切れないノーエスケープゾーンを大きく拡大することに成功した。
さらに中国人民解放軍空軍の内部ブリーフィングで使用されたスライド画像が流出し、PL-16はPL-15を小型化しただけの空対空ミサイルではない可能性が浮上、このスライド画像が本物ならPL-16はデュアルパルス固体ロケットモーターではなく可変推力固体ロケットモーター(variable-thrust solid rocket motor)を採用している可能性があり、発射~巡航~終末機動の間の推力を連続的に調整できるため有効射程(300km超)とノーエスケープゾーンのさらなる拡張が可能になる。
出典:@RupprechtDeino
2016年に初めて登場したPL-17(当時はPL-20と呼ばれていた)も全長約6mという巨大な空対空ミサイルで、PL-15と同じデュアル・パルスロケットモーターを採用し、最大射程は約400km(実際の射程は交戦状況=発射する戦闘機の高度や速度によって変動する)と推定されており、この巨大な空対空ミサイルは空中給油機や空中早期警戒機といった高価値な大型資産を長距離から直接狙う、もしくはPL-17を搭載したJ-16を交戦空域に飛ばして西側諸国が採用する航空戦術の基盤=空中給油機や空中早期警戒機を後方空域に引き下げさせることが目的だ。
米国もAIM-120の射程を超える中国の空対空ミサイルの脅威が本物だと認識し、AIM-120と同サイズながらPL-15に対抗できる射程を備えるAIM-260 JATMを開発して米海軍が初期調達を開始、さらにSM-6の空中発射バージョン=AIM-174B Gunslinger(ガンスリンガー)の配備も進めており、8月にはF-35のウェポンベイに収まる2段式のブースター付き空対空ミサイル=AIM-424 LRAAM-Malice(マリス)を発表して注目を集めている。
出典:U.S. Navy
米海軍はAIM-424 LRAAM-Maliceの仕様について全長:4.11m、直径:0.34m、翼幅:0.67m、重量:680.4kg、射程距離:250海里(463km)以上、推進方式:固体燃料ロケットモーターと公式に発表し、TWZは「これらの数値は、特に射程に関しては諜報活動のために意図的に操作されている可能性があることを留意すべきだ。それでもAIM-424はAIM-260(推定射程200km以上)とAIM-174B(推定射程240~400km以上)の中間に位置し、どちらかと言えばAIM-174Bに近い可能性がある」と指摘しているため、AIM-424はウェポンベイに携行できるAIM-174B並みの長射程空対空ミサイルなのかもしれない。
もはや米国と中国は空対空ミサイルの長射程化競争に突入しているといっても過言ではなく、防衛省も31日に公表した概算要求の中で「空対艦/対空ミサイル(ASM-3改)の取得整備」に言及し、ASM-3改の空対空ミサイル化には海外のディフェンスメディアも注目している。
出典:防衛省 令和9年度概算要求の概要
日本は国産対艦ミサイル=ASM-3の射程を400km以上に拡張したASM-3改を開発中で、この開発過程の成果を取り入れたASM-3Aの調達が2021年度から始まっている。ASM-3はアクティブレーダー方式とパッシブレーダー方式の両方を搭載した複合シーカーを採用しており、ASM-3改でも同様の複合シーカーが採用されている可能性が高く、特にパッシブレーダー方式のシーカーは早期警戒管制機に対して有効なのでASM-3改の空対空ミサイル化はAIM-424やAIM-174Bと同じ効果(中国空軍の空中給油機や空中早期警戒機を後方空域に引き下げさせる効果)をもたらしてくれるかもしれない。
ちなみに概算要求の中では対レーダーミサイルのAARGM-ER取得整備にも言及しているが、F-35 Block3Fには静止目標に対する長距離攻撃能力、対レーダーミサイルを使用した敵防空網制圧・破壊能力、海上目標を攻撃する長距離対艦攻撃能力が欠けており、F-35 Block4ではAIM-260 JATM、ミーティア、AGM-88G AARGM-ER、SiAW、GBU-53/B SDB-II、JSM、SPEAR 3、JASSM-ER、LRASMの統合が予定されているものの、これが完成するのは2030年代の話なのでAARGM-ERの取得整備を急ぐ必要性はない。
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※アイキャッチ画像の出典:Hunini/CC BY-SA 4.0