トランプ氏、カナダとの貿易交渉の「即時終了」を表明 デジタル税に反発

画像提供, AFP/Getty

画像説明, 米ホワイトハウスの大統領執務室で会談するカナダのマーク・カーニー首相(左)とドナルド・トランプ米大統領(5月26日、ワシントン)

アメリカのドナルド・トランプ大統領は27日、カナダとの貿易交渉を「即時」終了すると表明した。カナダが、大手ハイテク企業を対象としたデジタルサービス税を導入することを受けてのもの。

アメリカとカナダが、7月中旬までに関税措置をめぐる合意を実現しようとする中、トランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、交渉終了を表明した。

トランプ氏は、ハイテク企業に対する「とんでもない関税」を理由に、カナダとの貿易交渉を終了すると表明。さらに1週間以内に、カナダからの輸入品に対する新たな関税措置を発表するとした。

「カナダとの貿易に関するすべての協議を終了する」と、トランプ氏は投稿した。

「アメリカと取引するためにカナダが支払うことになる関税については、7日以内にカナダに通知する」

一方、カナダのマーク・カーニー首相は記者団に対し、アメリカとの交渉継続の意向を示し、「カナダ国民の利益のために、複雑な交渉を引き続き進めていく」と述べた。

トランプ氏は今年1月に大統領に就任すると、カナダなどからの輸入品に高い税率の関税を課した。カナダも報復関税を課すなど、貿易戦争へと発展した。トランプ氏は「経済力」をもってカナダを51番目の州にするとも発言している。

カナダは昨年、ハイテク企業を対象としたデジタルサービス税(税率3%)を導入した。その最初の支払期限は6月30日に迫っている。

経済団体は、アマゾン、アップル、グーグルなどのアメリカ企業の負担は年間20億米ドルを超えると算出している。

カナダ政府関係者によると、アメリカとの貿易交渉の中で、デジタル税をめぐる問題を話し合う予定だった。

3月にカナダ首相に就任したカーニー氏は、トランプ氏と比較的良好な関係を築いてきたことから、アメリカ側との交渉に良好な影響をもたらすのではとの期待感があった。

しかし、今回のトランプ氏の発言を受け、両国の合意への見通しは不透明となった。ただ、交渉を有利に進めたい時や、交渉が停滞していると感じて加速させたい時に、ソーシャルメディアを通じて脅しをかけるのは、トランプ氏の常套(じょうとう)手段でもある。

例えば先月には、欧州連合(EU)加盟国からの輸入品に対して関税を上げると警告したものの、数日後には態度を軟化させている。

デジタル税に批判的な立場を取る、カナダ商工会議所のキャンディス・レイン会長は、交渉期限が近づく中での「土壇場のサプライズは想定内」だと述べた。

そのうえで、「ここ数カ月間、交渉の雰囲気は改善されてきた。進展が続くことを我々は期待している」と付け加えた。

第1次トランプ政権では、多くの国がデジタルサービス税の導入を検討し始めたことに、ホワイトハウスは強く抵抗した。

米外交問題評議会(CFR)のイヌ・マナク貿易政策担当研究員は、今年初めにアメリカとイギリスが締結した貿易協定では、この問題が未解決のままになっていたと指摘。アメリカ側に一定の柔軟性がある様子がうかがえると話した。

マナク氏は、トランプ氏の今回の脅しは、圧力を強めるための典型的な「交渉術」のように見えるとしつつ、トランプ氏が再びカナダに焦点を当てたことを示しているとも指摘。合意への道が開かれる可能性はあるとした。

「これはある種の突破口になり得る。カーニー首相が望んだかたちではないかもしれないが(中略)交渉を加速させる余地は生まれている」

アメリカはカナダにとって最大の貿易相手国。長年続いてきた自由貿易協定の下で行われた、昨年の対米輸出額は4000億ドルを超える。

さらに、自動車鉄鋼、アルミニウムに対する25%の関税が発動されると、混乱が生じた。例えば自動車産業では、部品の加工から組み立てを終えるまでの間にアメリカ、メキシコ、カナダの国境を越えることになり、関税が複数回かかる。トランプ氏のこうした関税措置は、サプライチェーンを脅かしている。

トランプ氏はその後、アメリカとカナダの企業が多大な懸念を示したことを受け、一部の品目を関税措置の対象から除外すると発表した。

アメリカの株式市場は27日、トランプ氏がカナダとの貿易交渉の終了を発表したことで、株価が一時下落した。その後は回復し、主要500社のS&P500種は史上最高値で取引を終えた。

関連記事: