顧客名義の口座を無断で偽造、架空融資 不良債権隠しか いわき信組
福島県いわき市のいわき信用組合(本多洋八理事長)が、預金者の名義を使って無断で別の口座を作り、その口座へ融資を行う形で資金を流出させていた疑いがあることがわかった。関係者によると、こうした資金は信組内で「B資金」と呼ばれ、大口取引先への融資が不良債権化したことを隠そうと、返済の肩代わりに使っていたという。
金融機関が組織的に口座を偽造し、架空融資で経営状態を装う不正は極めて異例で、金融庁は調査するとみられる。
裁判所がリスト保全 約90口座、計17億円超
関係者によると、いわき信組では昨秋、不正の疑いが浮上し、一部の組合員が架空融資の証拠の保全を福島地裁いわき支部に申し立てた。同支部は今年2月、申し立てを認め、同信組本店に入って検証を実施。偽造口座の名義や融資残高が記されたリストなどの関係書類を確認し、証拠として保全する手続きを取った。リストには融資額として、2024年秋時点で約90口座、計17億円超が記されていたという。
印鑑は約90本 店舗名の袋で保管
同支部は架空融資に使われた印鑑約90本も証拠として保全した。印鑑は12の店舗ごとに、店舗名が記されたポリエステルの袋で保管されていたという。
複数の信組関係者らによると、いわき信組は、預金者の中から名義とする人を選び、預金者名の印鑑を無断で用意し、口座開設書類を偽造。住所などは預金者の情報を流用していた。口座偽造は本店で行われていたという。
本店が偽造した書類を使い、融資の手続きは支店の担当者が行っていた。融資書類には融資を受けるために必要な印鑑証明書などは添付されていなかった。融資は1口座あたり数百万~数千万円ずつだったという。こうした不正は少なくとも10年以上続いていたとされる。
いわき信組「回答致しかねる」
いわき信組の話 第三者委員会の調査結果公表を前に個別の質問に対する回答は致しかねる。
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この記事を書いた人
- 沢伸也
- 編集委員|調査報道担当
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