INNOCN GA32V1Mレビュー:4Kゲーミングモニターのコスパ最強候補を買って検証

リフレッシュレート:160 Hz(320 Hz) |

(公開:2025/11/3 | 更新:2025/11/3

「INNOCN GA32V1M」の微妙なとこ

  • 平凡なコントラスト比
  • ライバルモデルより HDRコントラスト比が低い
  • 貧弱な内蔵スピーカー
  • 初期設定の色温度がズレてる (かんたんに修正できます)
  • sRGBモードが不正確
  • メーカー保証1年 (でも無輝点保証に対応)

「INNOCN GA32V1M」の良いところ

  • 32インチで4K(ちょうどいい)
  • 最大160 ~ 320 Hzに対応
  • PS5で120 Hz(VRR)対応
  • デュアルモードの切り替えが速い
  • 応答速度が速い(IPSパネルとして)
  • 入力遅延が非常に少ない
  • パネルの均一性が高い
  • 量子ドットで色域が広い(DCI P3:99%)
  • 強力なゲーマー向け機能
  • 残像軽減「MPCS TECH」モード
  • Display HDR 1000相当(確認済み)
  • 扱いやすいOSD設定画面
  • USB Type-C(90 W)ポート
  • 必要十分なエルゴノミクス機能
  • コストパフォーマンスが高い

「INNOCN GA32V1M」は、約8万円台で買える4Kゲーミングモニターでコスパ最強格の1台です。

BenQ MOBIUZシリーズと同様に、フル装備のゲーム機能を備えます。「暗所補正」「鮮やかさ補正」「残像軽減」「クロスヘア」まで全部入り。

量子ドット + Fast IPS + Mini LED(画像:2304個の組み合わせで、ふだん使いからHDRゲームまで、幅広い用途に適した画質を発揮します。

Mini LEDバックライトの副作用により、輝度ムラ(色ムラ)が非常に少なく抑えられ、オフィスワークとの相性も良し。

Display HDR認証はコストカットの関係で取得していないですが、筆者が測定したところHDR 1000相当の性能を確認しています。

明暗差の大きいパワフルなHDR映像を表示できます。Final Fantasy 16やGhost of Yōteiなど、明るいシーンが多いゲームがよく輝きます。

おおむね欠点の少ない、非常によくできたゲーミングモニターです。しいて言えば、デュアルモードはたぶん使わない・・・くらいでしょうか。

別にデュアルモードが付いているからといって、ライバルや従来モデルより価格が高いわけでもないし、どちらにせよ凄まじいコスパです。

やかもち

「INNOCN GA32V1M」の用途別【評価】

※用途別評価は「価格」を考慮しません。用途に対する性能や適性だけを評価します。

「INNOCN GA32V1M」レビューは以上です。

もっと詳しく測定データや比較データを見れば、他の代替案にするか、このままINNOCN GA32V1Mで即決するかヒントになるかもしれません。

やかもち

INNOCN GA32V1M:画質レビュー

初期設定の画質とおすすめ設定

左側が箱から出してばかりの初期設定です。

省エネ規制の影響か・・・ 初期設定がすごく暗い状態、かつガンマが高すぎ(= コントラスト感が強すぎ)て少し目が疲れます。

色温度もかなり青み掛かっています。いつもどおり、キャリブレーター(測定機材)を使って数値を見ながら、モニターのOSD設定を手動で調整した画質が右側です。

  • モード:標準
  • 明るさ:80
  • 輝度モード:ハイライト
  • ガンマ:2.2
  • 色温度:ユーザー
  • 赤:46
  • 緑:48
  • 青:48
  • 彩度:38 / 40 / 50
  • ローカルディミング:低
  • シャドウバランス:51

※画面の明るさは好みに合わせて調整してください。明るさ80%だと約350 cd/m2前後に達し、人によっては眩しく感じるレベルです。

手動調整後のガンマカーブとグレースケール(色温度)グラフです。

どうやってもガンマが少し明るいですが実際にゲームで使う分には問題なし。グレースケールはいい感じに調整できました。

量子ドットパネルは測定機の数値が大きくズレるため、sRGBリファレンスモニターを見ながら目視補正済みです。目視補正をしないと、寒色(青色)にズレてしまいます。

基本的な「画質」を測定して比較

【測定機材を詳しく】どうやって「測定」するの?

ちもろぐでは、2種類の測定機材を使って今回レビューする「INNOCN GA32V1M」の画質を深堀りします。

  1. 分光測色計:X-rite i1 Pro2 (Spectrophotometer)
  2. 比色計:Calibrite Display Plus HL (Colorimeter)

分光測色計は、数値が書いてある正確な定規だとイメージしてください。単品でモニターの色や明るさを正確に測定できます。しかし、黒色の測定が不正確だったり、暗い色の測定がすごく遅いです。

だから比色計もセットで使います。比色計は単品だと誤差が大きく使いづらいですが、分光測色計を使って誤差を修正可能です。

Matrix補正と呼ばれる誤差修正を掛けたあとの比色計なら、分光測色計と大差ない精度を得つつ、もっと深い黒色の測定と暗い色の高速測光が可能です。

【測定レポート】「色域」の測定結果
色域カバー率(CIE1976) 規格 CIE1931 CIE1976 sRGBもっとも一般的な色域 100.0% 99.8% DCI P3シネマ向けの色域 98.0% 98.6% Adobe RGBクリエイター向けの色域 96.2% 97.0% Rec.20204K HDR向けの色域 79.1% 81.6%

INNOCN GA32V1Mで表示できる色の広さ(色域カバー率)を測定したxy色度図です。

もっとも一般的な規格「sRGB」で約100%をカバー。HDRコンテンツで重要なシネマ向けの規格「DCI P3」では98.6%カバーします。

印刷前提の写真編集で重視される「AdobeRGB」規格のカバー率は97.0%です。

過去の傾向からして、色の広さは量子ドット液晶 > 量子ドットVA = QD-OLED > 広色域な液晶 = OLED > 普通の高色域パネル > 平凡な液晶パネル > TNパネルの順に並びます。

「色域」は色の鮮やかさに深く関係する性能で、多くの一般人が「画質」だと感じ取っている重要なスペックです。

INNOCN GA32V1MはDCI P3色域をほぼ完璧にカバーします。

広い緑色を持つAdobe RGB色域もほとんど全部カバーしていて、さすが「量子ドット」のパワーを見せつけています。安価なIPSパネルを一回り超える鮮やかさです。

数年ぶりの買い替えはもちろん、2~3年ぶりの更新でも、鮮烈なビビットカラーから色の違いを体感できる可能性が高いです。特にHDR映像なら分かりやすいはず。

コントラスト比(実測)は3005:1(ローカルディミング有効時)です。ネイティブ状態は894:1まで下がります。

2304個ものMini LEDバックライトを駆使する「部分駆動」のおかげで、IPSパネルの平均値(約1100:1)を約3倍も超えるコントラスト比を叩き出します。

それでも真っ暗な部屋で眺めていると、わずかに白浮きしているのが見えます。OLEDパネル並と行かず、VAパネル相当の黒さです。

色が均一の静止画コンテンツを見ている時間が長いオフィスワークで、気にする人が多い「色ムラ」をチェック。

色ムラ(輝度ムラ)の測定結果は平均値でわずか2.8%です。以前レビューした「TCL 32R84」に迫る、液晶パネルとして第2位の記録です。

過去レビューのデータから、色ムラや輝度ムラは基本的にMini LEDパネルが有利です。

よくあるエッジライト方式が画面の端っこから液晶を照らすのに対し、Mini LEDは直下から照らします。原理的に色ムラに有利な構造をしています。

パネルの四隅に近いほど輝度が下がる「グロー」現象もそこそこ抑えられ、実際のコンテンツでほとんど気にならない程度。

画面全体に同じような色を表示するシーンを凝視してようやく色ムラの存在に気づきます。

画面の明るさは100%設定で約424~453 cd/m2に達し、SDRコンテンツを見るのに十分すぎる明るさです。

最低輝度(0%設定)は約12 cd/m2まで、恐ろしく真っ暗に下げられます。平均的なモニターが約40 cd/m²だから、10 cd/m²台は非常に暗いです。

眼精疲労などが理由で、夜間に暗い画面を好む人にとって嬉しい仕様です。目にやさしいらしい120 cd/m2前後は設定値27%でほぼ一致します。

HDRモード時の画質を詳しく測定

モニターの色と明るさを超高速かつ正確に測定できる機材「CR-100」を使って、「INNOCN GA32V1M」のHDR性能をテストします。

やかもち

INNOCN GA32V1MはDisplay HDR 1000相当のすさまじい明るさを出しつつ、Mini LED(2304個)を使った部分駆動でHDRコントラスト比も稼ぎます。

HDRコントラスト比Colorimetry Research CR-100で測定した結果 全画面 Inf : 1 10%枠 3506.9 : 1 3×3パッチ 2715.1 : 1 5×5パッチ 2136.4 : 1 7×7パッチ 1459.9 : 1 9×9パッチ 1306.8 : 1

テストパターン別にHDRコントラスト比を測定した結果、ワーストケースで1307 : 1でした。

約1300~3500:1のコントラスト比は、2000個超のMini LEDを装備するモニターとしては意外と低い数値です。

姉妹モデルの「P32A6V-PRO」が約6000:1程度、従来世代モデル「32M2V」が約4800:1程度なので、GA32V1Mが出した2700:1は期待を下回ります。

アグレッシブな制御をやめて、保守的な制御に切り替えた様子です。おそらく「LDフリッカー」の抑制を優先した結果かもしれません。

個人的に、LDフリッカーは専用のテストパターンでなければ再現が難しく、実際のゲームやコンテンツで困った経験がないです。

アグレッシブなMini LED制御がINNOCN製品の魅力のひとつだったから、保守的な制御を選んだ点は少し残念です。

HDRモード時の明るさが正しいか、PQ EOTF追跡グラフで測定します。

INNOCN GA32V1Mは初期設定でも非常に精度が高いですが、黒色をあまり攻めてくれないです。

設定から「ローカルディミング:高」を有効化すると、黒色もガンガン攻めてくれます。ただし、表示面積が狭いほど、PQ EOTFをやや下回る傾向は相変わらず健在です。

明るいHDRコンテンツなら特に問題なく、画面の一部だけが暗いHDRシーンで実際より暗く見えてしまいます。

たとえば、ホラー映画の真っ暗なシーンでライトを手に持っていたり、SF映画の宇宙空間で細いビーム光線が散るシーンが不得意です。

逆に、FINAL FANTASY 16やゴーストオブヨウテイなど、非常に明るいシーンを多数含まれるHDRゲーミングならいかんなくパワーを発揮できます。

やかもち

競合他社のHDR 1000相当ゲーミングモニターより少し輝度が負けているものの、明るいHDRを楽しむのに十分な明るさを持続できます。

経過時間の影響は面積49%以上から目立ちます。フラッシュ輝度を数秒しか持続できないですが、実用上、数秒も持つなら十分です。

HDR規格(Rec.2020色域)に対する色精度はそこそこ優秀。最大ΔE = 8.4、平均Δ = 4.18でした。

なお、表示面積が狭いほど色精度がやや悪化する傾向があります。PQ EOTF追跡グラフで見たように、面積が狭いと実際より暗くなるから、色精度も悪化する構造です。

グレースケール(D65)の精度は・・・それなりです。全体的にやや寒色気味に偏っているから、ほとんどの人は気にならないでしょう。

INNOCN GA32V1Mは「明るさを体で感じられる」、パワフルなHDR映像を表示できます。

他社のHDR 1000相当クラスと比較しても互角レベルの明るさに見えます。しかし、TCL 32R84と比較すると、ピーク輝度の階調表現で勝てないです。

眩しい中にさらにディティール表現が詰め込まれたフェニックスを再現し切れなかったです。

やかもち

HDRゲーム時の明るさを測定しました。

恐ろしく明るいフェニックス戦(FF16)は、ピーク時に1400 cd/m²前後に達します。実際は1500 cd/m²を超えるシーンだから少し届いていないですが、実用上は問題ありません。

優れたHDR効果で知られるGhost of Yōteiだと、ピーク時に1300 cd/m²台に迫ります。実際は1600 cd/m²近いシーンですが、十分な明るさです。

INNOCN GA32V1Mは、2304分割(64個 x 32個)したMini LEDバックライトを搭載します。

パネルの部分駆動(ローカルディミング)を効果的に機能させるうえで十分な分割数です。しかし、GA32V1Mは従来のINNOCN製品ほどアグレッシブな制御をしません。

明るい面積が少しあればバックライトをうっすら点灯させてしまい、OLEDパネルのような黒さを得られないです。

まるでVAパネルを見ているようなコントラスト感にとどまり、OLED級の黒さはVA + Mini LED(TCL製品)に持っていかれます。

やかもち

最後に、VESA Display HDR認証を満たしているか測定チェック。

INNOCN GA32V1Mは、HDR 1000認証を取得していないけど、「Display HDR 1000」規格におおむね合格です。

ローカル調光(部分駆動)の挙動チェック

(部分駆動:64 x 32 = 2304個所)

INNOCN GA32V1Mのローカル調光(部分駆動)は、強度を3段階で調整できます。

強度を高くすると、黒エリアの消灯を強くしてコントラスト比を向上させますが、白いウィンドウの四隅や小さいオブジェクトが少し暗く沈みます。

従来モデル(M2Vシリーズ)より控えめな制御をするから、だいぶ沈み込みがマシになったものの、代わりにコントラスト比の向上幅も抑えられます。

ローカル調光を「中」「低」に下げると、黒エリアの完全消灯が止まり、ほとんどのシーンでうっすらとバックライトを点灯します。

ウィンドウ四隅の暗さ、マウスカーソルの見づらさがほとんど改善され、ウィンドウを不規則に動かしたときに発生する「ちらつき(LDフリッカー)」も見えないです。

LDフリッカーは「ローカル調光:高」モード時のみ、テストパターンでやや目立ちます。

オフィスワークでもローカル調光を有効にするなら、「中」または「低」モードがおすすめです。

パネルの反射加工と文字の見やすさ

INNOCN GA32V1Mに施されたパネル表面加工は、PC用モニターで定番の「ノングレア加工(アンチグレア)」です。

ぼんやりと背景がしっかり拡散され、周囲が明るくても映り込みをかなり防いでいます。部屋を暗くすると、映り込みがさらに軽減されます。

文字のドット感(見やすさ)はとても鮮明です。

テキスト表示に有利な縦に一直線の直列RGB配列パネルに、140 ppi前後に達する詰め込んだ画素密度を備えます。

普通の距離感(50~60 cm)で見てもドット感が分かりづらいし、30 cmくらいから見ても滑らかなテキスト表示です。

マクロ撮影と波長分析をチェック

マクロレンズでパネルの表面を拡大した写真です。

PCモニター用途(Windows)に相性がいい、RGBストライプ配列の画素レイアウトです。ドットがボヤけて見えるのは、パネル表面のノングレア加工が原因です。

パネル技術をスペクトラム波長分析※で調べます。

三原色のうち、緑色と青色がピンと突き立つ分離のいい波長パターンから、「量子ドット(Quantum Dots)だと分かります。

現時点でもっとも色域を効率よく拡張できる先端技術です。

ついでにブルーライト含有量を調べたところ、なんと約40%を叩き出します。「色温度:ウォーム」や「リーディング」「アイケアー」モードなどを選べば、TUV Rheinlandブルーライト認証に必要な25%未満を達成できます。

※ 分光測色計「X-rite i1 Pro 2」を使って、3.3 nm単位で波長を分析します。

パネルの視野角(見える範囲)チェック

QD Fast IPSパネルの視野角はそこそこ広いです。

隣の席から見たり、リクライニングで傾ける程度なら、気にならない色褪せ具合です。

INNOCN GA32V1M:ゲーミング性能

ゲーム性能(応答速度)の測定と比較

↑こちらの記事で紹介している方法で、INNOCN GA32V1Mの「応答速度」を測定します。

60 Hz時の応答速度は平均5.63ミリ秒を記録します。

60 Hzに必要十分な応答速度を満たしますが、ホールドボケ現象(= 60 Hzそのもの)が原因で、残像感がそれほど減らないです。

60 Hzが重要な用途:Nintendo Switch、Play Station 4(PS4)など、最大60 Hz対応のゲーム機

120 Hz時の応答速度も平均5.63ミリ秒を記録します。120 Hzに必要十分な応答速度(< 8.33 ms)を満たし、残像感もかなり少ないです。

120 Hzが重要な用途:Nintendo Switch 2、Play Station 5(PS5)など、最大120 Hz対応のゲーム機

INNOCN GA32V1Mの4K解像度で設定できる、最大リフレッシュレート160 Hz時の応答速度は平均5.59ミリ秒です。

160 Hzに必要な応答速度を余裕で満たし(< 6.25 ms)、残像感もそこそこ改善されます。オーバードライブを「Lv2」まで引き上げると、平均3.6ミリ秒まで性能アップ可能です。

デュアルモード有効時に設定できる、最大リフレッシュレート320 Hz時の応答速度は平均5.24ミリ秒です。

320 Hzに必要な応答速度(> 3.13 ms)をまったく満たせず、残像感を効率よく除去できません。

・・・オーバードライブ機能「ダイナミックOD」を調整して、必要な応答速度をきっちりパスして、残像感を改善できないかチェックします。

INNOCN GA32V1Mのオーバードライブ機能は、4段階(Lv1 ~ Lv TopSpeed)から調整できます。

初期設定「Lv0」はオーバードライブ無効状態です。「Lv1」からOD処理が入り、「Lv3」でピーク効率に達します。

「TopSpeed」は処理が強すぎて逆残像やにじみを生じさせてしまい、かえって見た目が悪化します。

INNOCN GA32V1Mにとって、「Lv3(初期設定)」がおすすめOD設定です。

累積遷移:オーバードライブ時のエラー(オーバーシュート等)も含んだ、次世代の応答速度指標。

OLEDパネルのモーション性能に当然勝てないですが、同じ価格帯でライバルになりうる「DELL AW2725QF」と同程度の性能です。

競技eSportsに十分耐えうるモーション性能を出せています。

ちもろぐに記録した過去100件を超えるレビューから、INNOCN GA32V1Mの応答速度(120~160 Hz)は平均をやや上回る良好な性能です。

320 Hz時の応答速度もかなり速いクラスに入り、AW2725QFにつづく2番手です。

ゲーム性能(入力遅延)の測定と比較

INNOCN GA32V1Mで、左クリック100回分の入力遅延を測定しました。

リフレッシュレート60 ~ 320 Hzまで、安定して目標の16ミリ秒を下回る良好な入力遅延です。ほとんどの人が入力遅延を体感できません

VRR(G-SYNC互換モード)の影響もなかったです。

【解説】「入力遅延」の測定について

2024年7月より「入力遅延(Input Lag)」の新しい測定機材を導入しました。

クリック遅延がわずか0.1ミリ秒しかないゲーミングマウス「Razer Deathadder V3」から左クリックの信号を送り、画面上に左クリックが実際に反映されるまでにかかった時間を測定します。

  1. マウスから左クリック
  2. CPUが信号を受信
  3. CPUからグラフィックボードへ命令
  4. グラフィックボードがフレームを描画
  5. ゲーミングモニターがフレーム描画の命令を受ける
  6. 実際にフレームを表示する(ここは応答速度の領域)

新しい機材は1~6の区間をそれぞれ別々に記録して、1~4区間を「システム処理遅延」、4~5区間を「モニターの表示遅延(入力遅延)」として出力可能です。

なお、5~6区間は「応答速度」に該当するから入力遅延に含めません。応答速度と入力遅延は似ているようでまったく別の概念です。

フリッカーフリー(画面のちらつき)を測定

PS5でフルHD~4K(最大120 Hz)に対応します。

HDMI 2.1端子にHDMI VRR機能が搭載されているため、「PS5 VRR」もすべて対応可能です。

OSD設定 > Adaptive-Sync:オン でPS5 VRRが有効化されます。初期設定はオフになっているから注意。

Nintendo Switch 2(ドックモード)で、フルHD~WQHD(最大120 Hz)または4K(最大60 Hz)に対応します。HDR(10 bit)出力も問題なし

さすがフル帯域(48 Gbps)のHDMI 2.1ポートです。Switch 2の互換性を難なくクリアできます。

PS5 / PS5 Pro / Nintendo Switch 2など。120 Hz対応ゲーム機で、実際にゲーム側が120 Hz(120 fps)で動くかどうかは、もっぱらゲーム次第です。

ゲーム側が120 Hzをサポートしていなかったら意味がありません。プレイする予定のゲームが120 Hzに対応しているか、事前によく調べてください。

ゲーミングPCで使えるリフレッシュレート

ゲーミングPCの映像端子(HDMIやDisplay Port)にINNOCN GA32V1Mを接続して、ディスプレイの詳細設定から使えるリフレッシュレート一覧をチェックします。

INNOCN GA32V1Mがパソコンで対応しているリフレッシュレートは以上のとおりです。

HDMI 2.1で最大160 Hzまで、Display Port 1.4も最大160 Hzに対応します。

レトロなゲーム機で役に立ちそうな23.98 ~ 24 Hz範囲は非対応です。

INNOCN GA32V1Mは、圧縮転送モード「DSC(Display Stream Compression」を明示的に切り替え可能です。

DSC無効時 対応リフレッシュレート 端子 SDR (8 bit @ RGB) HDR (10 bit @ RGB) HDMI 2.1 4K @ 160 Hz 4K @ 144 Hz DP 1.4 4K @ 120 Hz 4K @ 60 Hz

CRU(Custom Resolution Utility)によるカスタム解像度や、NVIDIA DSR(DLDSR)を使いたいマニア志向のユーザーにとって便利な仕様です。

VRR機能(可変リフレッシュレート) ※クリックすると画像拡大
  • AMD FreeSync Premium
  • G-SYNC互換モード (HDMIとDisplay Portで使用可能)

フレームレートとリフレッシュレートを一致させて「ティアリング」を防ぐ効果がある、VRR機能はHDMIとDisplay Portどちらも使用可能です。動作範囲は48~320 Hzです。

LFC(低フレームレート補正)対応ハードウェアの場合は、48 Hzを下回ってもVRRが機能します。

競技ゲーマー向け機能をチェック

  • 暗所補正 暗い部分を明るく補正する機能
  • 鮮やかさ補正 色の付いた部分を強調する機能
  • 残像軽減 残像をクリアに除去する機能

INNOCN GA32V1Mは、3つある主要な競技ゲーマー向け機能のうちすべて対応します。そのほか、クロスヘア(十字線)やフレームレートを表示する機能もあります。

「ナイトビジョン」モードは、暗い部分を見やすく視認性を向上するモードです。Lv0~Lv2(3段階)から調整できます。

そこそこ効果が強いですが、少しやりすぎで画面全体がかえって白っぽく見えるシーンも出てきます。それなりに使えますが、eSports専業メーカー(Zowie)には負けます。

色のついた部分を見やすく強調できる「色彩強調」機能です。Lv0~Lv10(11段階)の範囲で細かく調整して、彩度ポイントを拡張します。

鮮やかさ補正の先駆者「Color Vibrance(BenQ)」と比較して、彩度ポイントの広げ方が大味です。一応効果はあるものの、Color Vibranceほどピンポイントな見え方にならないです。

Sony Inzoneが導入した、個別RGB拡張モードもありません。

残像軽減(黒挿入)モードをチェック

制限事項:1. VRR(G-SYNC互換モードなど)と併用不可 / 2. リフレッシュレート120 Hz以上(60 Hz以下は不可) / 3. フリッカーフリー無効(= 他社含め全モデルで共通仕様)/ 4. ハイライト輝度モード無効

INNOCN(本家)や、そのOEM製品であるGRAPHTが強くアピールしている、残像軽減「MPCS TECH」モードです。

Mini LEDバックライトの部分駆動を活用した新しい技術・・・といった触れ込みで宣伝していますが、ほとんど優良誤認に近い謳い文句です。

残念ながら表示しているシーン内容に関係なく、全画面に黒フレーム挿入が入っています。「部分駆動で特定の箇所だけ黒フレーム挿入」なんて不可能です。

といっても、性能自体はかなり優秀です。

  • MPCS(強):約353 cd/m²(黒比率70.9%)
  • MPCS(中):約309 cd/m²(黒比率74.7%)
  • MPCS(弱):約266 cd/m²(黒比率80.3%)

BenQ MOBIUZ(ブレ削減モード)や、旧世代のZowie XL(DyAc)に匹敵する残像軽減を得ながら、画面の明るさを300 cd/m²以上にキープできます。

MPCS TECHを有効化した状態でも、画面の明るさを調整(6 ~ 353 cd/m²)可能です。

【測定レポート】「MPCS TECH」の性能

リフレッシュレート320 Hzで検証。黒フレーム挿入時間は設定モードにより、約71~80%の範囲で変動します。

「DyAc+」より性能がやや低くて、同じくINNOCNが開発した「DyDs」システムにわずかに負けています。

BenQ MOBIUZシリーズの「ブレ削減」や、ASUSが搭載する「ELMB」や「ELMB Sync」より高性能です。

1台2役な「AIデュアルモード」機能を検証

OSDボタン → AIデュアルモード:ON、でAIデュアルモードを切り替えられます。たった2回OSDボタンを押すだけです。

  • ネイティブ → デュアルモード:約8.1秒
  • デュアルモード → ネイティブ:約7.3秒

設定を確定すると、画面が約7~8秒ほど暗転したあとAIデュアルモードに切り替わります

・・・切り替えがだいぶスピーディーに改善されています。格安中華系のデュアルモードは約10~25秒くらいかかっていましたが、今回のINNOCNは格段に速いです。

しかし、DELL AlienwareやLG UltraGearが持つ3~4秒台の切り替えにはまだ倍近く離れています。

肝心の使い勝手はやや中途半端な印象を拭えません。

31.5インチ画角にフルHDを表示すると、実質的な画素密度はわずか約70 ppiまで下がります。70 ppiだからディティールの粗さが気になります。

問題の解決に役立つ機能が、画角エミュレーションモードですが、INNOCNの画角モードはどれも役に立ちません。

25インチや27インチ、ウルトラワイドやフルHDなど、自由に画角を選べてもリフレッシュレートが90~120 Hzに制限されてしまいます。

320 Hzを使える31.5インチフルHDモード一択です。

INNOCN GA32V1Mのスケーリング処理はシンプルです。ただ単に4ドット(2×2ピクセル)使って、擬似的にドットバイドット表示に見せる一般的な実装です。

ネイティブ表示と比較してテキストが少しボヤけて見える気もしますが、31.5インチにフルHD表示なら当たり前。・・・画素密度が半減し、ドットが粗く見えます。

INNOCN GA32V1M:クリエイター適性

INNOCN GA32V1Mは初期設定のままだと、グレーの精度も色の精度もまったく合っていない(ΔE > 2.0)です。

INNOCNは色の精度を必要とするクリエイター用に、「sRGB」「DCI P3」「AdobeRGB」モードを用意しています。

出荷時に校正済み(ΔE < 2.0)を示すキャリブレーションレポートも付属していました。本当に色精度が高いのか、実際に測定します。

「sRGB」モードと色精度(dE2000)

「DCI P3」と「AdobeRGB」は・・・?

クリックして「DCI P3」精度を確認する

INNOCN GA32V1Mの「DCI P3モード」はマトモに機能しないです。

DCI P3色域制限のみ正常に機能して、グレースケールとガンマカーブの不一致、結果的に起こる彩度ポイントの不一致ですべて破綻しています。

グレースケールは青色だし、ガンマカーブは明るすぎる(基準値:2.6からほど遠い)し、付属のキャリブレーションレポートはいったい何だったのか・・・?

INNOCN GA32V1M:本体デザインと機能

パッケージ開封と組み立て工程

真っ白でツルツル塗装に、本体イメージ画像と「Mini LED」の英文字フォントを印刷した、シンプルなパッケージで到着。サイズは98 x 51 x 20 cm(180サイズ)です。

箱に書いてある「FRONT」のロゴを床に向けてから開封して、梱包材まるごと全部引っ張り出します。

厚みのある高密度発泡スチロールでできた梱包材で、がっちり梱包されています。上の段に付属品、下の段にゲーミングモニター本体が収まってます。

ゲーミングモニターで定番のドッキング方式です。プラスドライバーが不要なツールレス設計でかんたんに組み立てられます。

付属品をざっくり紹介

付属のケーブル類が白色に塗装されていますが、若干ベージュに近い色合いです。富士通が平成初期に売っていそうなOA用品を思わせる、あの白色です。

付属のキャリブレーションは3枚あり、「sRGB」「DCI P3」「AdobeRGB」規格に対してΔE < 2.0に校正済みと記載あり。

ただし、目視補正(メタメリズム障害の回避)を考慮しない、お飾りの校正レポートです。

外観デザインを写真でチェック

シンプルすぎる真っ白なデザインです。でも、姉妹モデル「TITAN ARMY」よりロゴの主張がだいぶ控えめでデスクに置きやすいです。

パネル外枠も白色に塗装されているからベゼルレスがさらに際立ち、映像が空間に溶け込むイメージが強まって(個人的に)好印象でした。

なお、背面にあるリング状のLEDが明るく光り輝きますが、OSD設定から消灯できます。

やかもち

エルゴノミクス機能とVESAマウント

INNOCN GA32V1Mはほぼ全装備のエルゴノミクス機能を備えます。ピボット(横回転)だけ非対応で、高さ調整や首振りに対応。

エルゴノミクスの動きは・・・正直かなり安っぽいです。高さ調整も首振りも硬いし、細かい調整がしづらいし、画面の水平(0°)取りもたまに沼ります。

あと、何かの拍子にモニターアームの接続部から「パキッ」「パキパキ」と、そこそこ大きな音が鳴ります。

別売りモニターアームを取り付けるのに便利なVESAマウントは「100 x 100 mm」に対応します。

パネル本体の重量は約6.43 kgで普通のモニターアームで持ち上げられます。

モニター本体に付属するネジで、エルゴトロンLXを正常に取り付けられます

対応インターフェイスをチェック

各種インターフェイス ※クリックすると画像拡大
  1. USB 5 Gbps
  2. USB 5 Gbps
  3. USB Type-B
  4. HDMI 2.1 (3840×2160 / 最大160 Hz)
  5. HDMI 2.1 (3840×2160 / 最大160 Hz)
  6. USB Type-C (3840×2160 / 最大160 Hz)
  7. Display Port 1.4 (3840×2160 / 最大160 Hz)
  8. ヘッドホン端子(3.5 mm)
  9. 電源ポート

映像端子は全部で4つあり、どれを使っても最大160 Hz(3840×2160)または最大320 Hz(1920 x 1080)に対応します。

USB 5 Gbps(Type-A)ポートが2個、USB 5 Gbps(Type-C)ポートが1個あります。USB Type-Bポートはパソコン本体のUSBに接続して、USBハブとして機能します。

INNOCN GA32V1MのHDMI 2.1端子はFRL方式(最大48 Gbps)でHDMI VRR機能も対応します。いわゆる「真のHDMI 2.1」端子です。

USB Type-Cの仕様チェック

本体裏面にあるUSB Type-Cポートは、USB PD(USB Power Delivery)対応です。15 W(5.0 V x 3.0 A)~ 90 W(20.0 V x 4.5 A)まで対応。

映像出力モード(DP Alt Mode)も備え、対応するノートパソコンやタブレットを接続すれば、Type-Cケーブル1本で急速充電とマルチディスプレイ化が可能です。

ASUS Vivobook OLED 15で試した感じ、充電しながら最大4K 160 Hz(10 bit)まで確認できました。

負荷シミュレーターを挿し込み、電圧を20.0 Vに、電流を4.50 Aまで盛り付けるとメーカー公称値の90 Wを実際に出せます

適切な電圧レギュレーターを搭載しているようで、4.5 Aもの負荷がかかっていても電圧20 Vをきっちり維持します。

やかもち

「明るさセンサー」と自動調光

明るさセンサー ※クリックすると画像拡大

画面上部の右側に、周囲の明るさを検知する「照度センサー」を内蔵します。

OSD設定 > 明るさセンサー:オンで、周囲の明るさに合わせて画面の明るさを変動させる「自動調光」モードが機能します。

明るさの変化に対して、割と忙しなく変動します。

モニターの設定画面(OSD)

・・・モニター本体の右側裏面にある「5方向ボタン」を使って、OSD設定を操作できます。ちょっと位置が高くて面倒なので、もう少し低い位置が良かったです。

項目ごとに分かりやすく整理されたフォルダ階層型のOSDレイアウトを採用。レスポンスも良好でかなり快適。

しかし、設定できる項目があまりにも多すぎて、フォルダ階層型でも相当に入り組んだ構造です。UIデザイン担当者の苦悩が垣間見えます。

  • ショートカットボタン(最大4個まで)
  • プリセットごとに調整(設定値の保存も可能)

最短2回の操作で任意の項目を開けるショートカットボタンを最大4個まで登録できます。「輝度」や「入力切り替え」、「シャドウバランス」や「色彩強調」など、8割くらいの項目を登録可能です。

プリセットごとに好みの設定値を保存して、用途に使い分ける運用も一応できます。

DDC/CI機能に対応しているため、フリーソフト「ControlMyMonitor」などでOSDにアクセス可能です。明るさ調整だけなら「Twinkle Tray」もおすすめ。

固有値 番号 内容 E0 0 標準 1 MPCS / ULL FPS 2 MPCS / LD 3 RTS / RPG 4 FPS 5 MOBA 6 ムービー 7 リーディング 8 ナイト 9 アイケアー 10 Mac View 11 E-Book 12 sRGB 13 AdobeRGB 14 DCI-P3 E1 0 ローブルーモード:オフ 1 ローブルーモード:25 2 ローブルーモード:50 3 ローブルーモード:75 4 ローブルーモード:100

メーカー固有値「E0」がプリセットモード、「E1」がローブルーモードに割り当てられています。

そのほかのモードはうまく特定できませんでした。

やかもち

USB Type-CポートでUSB PD(USB給電)を使った場合、さらに最大94 Wくらい増えます。

表面温度(サーモグラフィー)は、FF16(HDRモード)を約1時間ほど掛け続けてから撮影しました。

INNOCN GA32V1M:価格設定と代替案

2025年11月時点、INNOCN GA32V1M実売価格は約8.6万円です。定番の大手外資系が青ざめる格安な価格設定です。

32インチ4Kとして文句ない応答性に

明暗差の激しいHDRが映える映像美

やかもち

おすすめ代替案(他の選択肢)を紹介

デュアルモードはないけれど、HDRコントラスト比がもっと高い4Kモニターが「P32A6V-PROです。

量子ドット技術をFast IPSパネルに組み込み、色域を飛躍的に向上(DCI P3:99%)。とんでもなく色が鮮やかな高画質です。

HDRモード時のコントラスト比をなんとかする技術「Mini LED(2304分割)」バックライトも搭載し、実効5000:1超までコントラスト比が上がります。

もちろん、HDRモードの精度も高いです。調整せずとも、そのまますぐにHDRゲーミングを楽しめます。

価格がかなり上がってしまいますが、HDR最強格4Kモニターが「TCL 32R84です。

TCL CSOT自社製Fast HVAパネルに量子ドットとMini LED(1400分割)を組み合わせ、3ミリ秒台の応答速度と、既存のIPSパネルを凌駕するコントラスト比を両立します。

筆者がリファレンスHDRモニターとして運用中の1台です。

もっと予算を抑えたい方は、27インチになる代わりに「KTC M27P6」を選べます。

7万円台で一番コスパが高い4Kゲーミングモニターです。

OLEDパネルから代替案を探しているなら、「LG 32GS95UE」が有力な候補です。

デュアルモード対応(最大480 Hz)、専用の切り替えボタンでシームレスに移行できます。内蔵スピーカーが恐ろしく高音質だから、ミニマムなデスクセットアップと相性良し。

RWBG OLEDパネル採用で、テキストフリンジ(文字ぼやけ)も抑えられています。

4Kでおすすめなゲーミングモニター

最新のおすすめ4Kゲーミングモニター解説は↑こちらのガイドを参考に。

4KでおすすめなゲーミングPC【解説】

最新AAAゲームを4K画質でプレイするなら、RTX 5070 Ti」以上を搭載したゲーミングPCがおすすめです。

おすすめなゲーミングモニター【まとめ解説】

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