アメリカ、ウクライナに「強力な」安全の保証を提供する意向示す 領土問題は解決せず

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画像説明, アメリカのスティーヴ・ウィトコフ特使(右、後ろ姿)と言葉を交わすウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(15日、ベルリン)

アメリカや欧州諸国、ウクライナの代表団は15日、ドイツ・ベルリンで、ウクライナでの戦争終結に向けた協議を行った。アメリカは協議後、北大西洋条約機構(NATO)の条約に相当する安全の保証をウクライナに提供する用意があると表明した。

米当局者は、この「非常に強力な」保証は、NATO条約の第5条をモデルにしたものだと説明。ロシア側がこれに同意することを期待していると述べた。第5条では、加盟国に対する武力攻撃は全加盟国への攻撃と見なし、防衛に協力すると定めている。

米当局は戦争終結に向けて進展があったと強調したが、和平案でウクライナの主権をめぐる難題をどのように解決するかについては、詳細はほとんど示されなかった。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、協議は「生産的」だったが容易なものではなかったと述べた。

また、ウクライナ政府がほかの争点について決定を下す前に、「安全の保証について明確な理解する」必要があると付け加えた。

ウクライナは、ロシアがいかなる停戦も尊重し、再び攻撃しないことを確実にするためには、隙のない保証が必要だと長らく主張してきた。

米当局者は、アメリカ側が提示した安全の保証は「プラチナ水準」のものだと説明。この和平案は「永遠に(交渉の)テーブルの上にあるわけではない」と警告した。

ゼレンスキー氏は14日、「妥協案」として、強力な保証と引き換えにNATO加盟という野望を捨てる用意があることを初めて示唆していた。

安全保障問題では大きな進展があったとみられる一方で、ウクライナ東部ドンバス地方をめぐる問題が依然として、交渉の主な障壁となっている。

アメリカは現在、係争中のドンバス地方に「自由経済区」を設ける案を提示しているが、これはウクライナが今も保持している地域から撤退することを意味する。ロシアは同様の対応は求められない見通し。

「率直に言って、(アメリカとウクライナは)これまでのところ、立場が異なるようだ」と、ゼレンスキー氏は述べた。

米当局は、「自由経済区」の定義が定まれば、「主権に関する最終的問題は当事者間で解決されることになる」としている。

しかし、ドンバス地方をめぐるロシアとウクライナの隔たりは依然として大きい。ロシアはドンバス地方の大部分を占領しており、ウクライナに同地域の全面的な引き渡しを求めているが、ウクライナは断固拒否している。

米当局によると、米政府は安全保障パッケージを上院に提出し、承認を得る方針だという。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、ゼレンスキー氏や欧州各国の指導者らと「非常に良い協議」を行ったと、ホワイトハウスで述べた。さらに、和平合意に「これまで以上に近づいていると思う」とした。

今回の協議を主催したドイツのフリードリヒ・メルツ首相も15日、「停戦を想定できるようになったのは初めて」だとの見解を示していた。

「非常に大きな進展を、私は大いに歓迎する」とメルツ氏は述べ、米政府が提示した安全の保証を「注目に値する」と評した。

複数の欧州首脳や欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長も、15日夜にウクライナやアメリカの代表団と協議した。

ベルリンでの協議の焦点は、ウクライナが先週アメリカに提示した20項目からなる和平計画だった。これは、アメリカが先に提示した初期の案に対抗するもの。アメリカ案は非常にロシア寄りな内容だと受け止められていた。

ウクライナ案の詳細は明らかにされていないが、ゼレンスキー氏は先週、同案はウクライナの復興と安全の保証を構築するための「基盤」とみなされるべきだと述べていた。

ゼレンスキー氏は、アメリカ代表団が「いわばロシア側の見解を提示している。(アメリカは)ロシアが発信するシグナルや要求、措置、(合意に応じる)用意の有無の示唆を伝達しているからだ」と主張している。それでも、ウクライナ、アメリカ、欧州諸国が協議したいかなる提案も、ロシア側に提示する必要がある。

クレムリン(ロシア大統領府)は15日に議論された「構想」の内容を、アメリカが提示することを期待しているとした。

ベルリンでの協議は、ウクライナがロシアによるエネルギー施設攻撃で長期的な停電に見舞われる中、開戦以来4度目の冬を耐え忍んでいるタイミングで行われた。

先週末にはロシアの一連の攻撃で、ウクライナの100万世帯以上が停電に見舞われた。ゼレンスキー氏は15日、ロシアの攻撃を受けていない「稼働中の発電所」はひとつもないと述べた。

今週後半には、欧州連合(EU)加盟国が、ベルギーにある国際決済機関「ユーロクリア」に保管されているロシアの凍結資産900億ユーロ(約16兆3000億円)相当をウクライナへの経済支援に活用する計画について採決する。

EUのカヤ・カラス外務・安全保障政策上級代表は、議論は「ますます難しくなっている」と認めた。

それでも、「我々は作業を進めているし、まだ数日の猶予がある」と、カラス氏は付け加えた。

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