明治安田生命、超長期国債に積極投資せず-金融正常化や財政リスクで

生命保険大手4社一角の明治安田生命保険は日本の超長期国債への積極的な投資を今後1、2年は控える方針だ。超長期金利の上昇余地を押し上げる要因になる。

  北村乾一郎執行役員・運用企画部長が4日のインタビューで明らかにした。日本銀行の利上げは今後も続き、参院選結果を受けた財政拡張リスクも踏まえて超長期金利の上昇を予想、30年国債利回りでは2026年度にかけて3.2ー3.3%まで上がる可能性があるとの見方を示した。金利のピーク感が見えれば買い場だとしながら「今はそのタイミングではない」と述べた。

  不安定な値動きが続いた日本の超長期金利は4ー6月期に世界市場にまで波及した。これに対応した財務省と日銀の需給対策でいったんピークを打ったが、足元で再び上昇してきている。日銀に代わる買い手として期待される生保だが、明治安田は金利上昇余地があるとみて本格的な買い出動は見送る方針で、金利上昇圧力は消えそうにない。

  超長期国債への投資を控える代替として北村氏は外債購入に言及。米国の金利は高水準にあることで、利下げに伴い低下余地があるとして「日米金利差縮小による円高リスクも加味すると、ヘッジ付き外債が1つの有力な選択肢となる」と述べた。

財政と減損

  債券市場では参院選で与党が過半数割れし、消費税減税の可能性が高まることへの警戒感が強い。消費減税が実現すれば、財政悪化懸念から超長期金利の上昇圧力が一段と高まる可能性がある。北村氏はその場合、日銀の国債買い入れ減額は頓挫して目指す金融政策の正常化が「だいぶ後ろ倒しになるリスクがある」とみている。

  北村氏は、日銀による巨額の国債保有が金利を押し下げるストック効果が続くとその分、円債の期待リターンが外債に比べて低くなると指摘。「外債を1つの選択肢と言わざるを得ないのはストック効果が存在するためだ」とした上で、金融正常化が遅れれば「長期的な投資先として円債にネガティブにならえざるを得ない」と語った。

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  北村氏は一方で、「金利が時間をかけて緩やかに上昇する限り、特段大きなリスクとしては認識していない」とも述べた。保有債券の時価が取得価格の50%を下回って回復の見込みがない場合、評価差額を有価証券評価損として計上する減損処理が会計基準で定められている。北村氏は「現在2%台後半の30年金利が1%上昇しても影響はない」とした。

  明治安田生命は4月に予定利率を引き上げた団体年金の新商品を投入。貯蓄性の個人保険の予定利率も引き上げ、新規の保険契約の獲得に力を入れている。北村氏は「保険負債が増えてくれば超長期債に投資していく」と話した。

新規制

  生保各社は25年度から適用される経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)を用いた新規制をにらみ、負債と資産のデュレーション(保有国債の平均残存期間)を一致(マッチング)させるため積極的に超長期債を購入した。それが一巡して購入ペースは大きく鈍化。金融政策正常化へ日銀も国債買い入れを減額しており、超長期債の主要な買い手不在が鮮明になり、金利上昇の一因になっている。

  北村氏は、生保業界が「マッチングした後で今苦しんでいるであろうことは、負債が思うように増えていかないことも原因の一つだ」と語った。今までは負債側のデュレーションが資産側より長かったため金利上昇はプラスだったが、今は「金利が上昇し過ぎると大量解約リスクを含めESRが悪化するため、一定程度の金利上昇はネガティブに働く」としている。

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