ホンダのロケットが飛んだ! 人工衛星打ち上げを目指し、再使用型ロケットの離着陸実験実施→見事成功

二輪/四輪をはじめとして、陸・海・空のあらゆる領域にまつわるモビリティを手掛けるホンダが、今度はロケットを開発! しかも、打ち上げ後に垂直のまま着陸するという「再使用型」というから驚きだ。6月17日、ホンダは北海道で再使用型ロケットの実験機を用いた離着陸実験を実施して見事に成功。将来は、小型人工衛星の打ち上げを目指している。 ホンダの再使用型ロケットは打ち上げ後、垂直を保ったまま無事に着陸。着地位置誤差はわずか37cm! 【写真を見る】これがホンダの開発したロケットだ! ホンダと言えば、二輪/四輪メーカーの印象が強いが、手掛けるプロダクトの範囲は実に幅広く、その領域は陸・海・空のすべてに及んでいる。最近ならホンダジェットで小型ビジネスジェット業界に進出を果たしたことが記憶に新しいし、かつては2ストロークが主流だった船外機市場において、環境にやさしい4ストロークエンジンの船外機をいち早く発売したのもホンダだ。 そんなホンダが今度は地球を飛び出し、宇宙に行こうとしている。次なるホンダのターゲットは、ロケットだ。 ホンダ(正確には子会社の本田技術研究所)は6月17日、自社開発の再使用型ロケットの実験機を用いた初の離着陸実験に挑み、無事に成功した。実験機のサイズは全長6.3m、直径85cm、重量は900kg(乾燥状態)/1312kg(燃料などを積んだ状態)。 この実験は北海道広尾郡大樹町にあるホンダ専用実験設備で実施されたもの。再使用型ロケットに必要な上昇・下降時の機体安定性や着陸機能などの要素技術の実証が目的だったのだが、実験機は垂直姿勢で打ち上げられた後、高度271.4mに到達し、垂直姿勢を保ったまま無事に着地。その着地位置誤差はわずか37cm、飛行時間は56.6秒で、実験は見事に成功を収めた。 https://youtu.be/p0jjxqpC0aY?si=8JmClhqcy1_WBfIQ ホンダは2021年9月30日、2030年ビジョンの実現に向けた「コア技術を生かした新領域へのチャレンジ」を発表し、その中で宇宙領域への挑戦を宣言。その中で、月面での循環型再生エネルギーシステムや遠隔操作ロボットをJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と共同研究しているほか、2019年から小型ロケットの開発に取り組んでいることを明らかにしていた。開発のきっかけとなったのは、「さまざまな製品開発を通じて培った燃焼技術や制御技術などのコア技術を生かしてロケットをつくりたい」という若手技術者の発案だったという。 ホンダが目指しているのは、小型ロケットによる低軌道向け小型人工衛星の打ち上げだ。近年、人工衛星は地球環境の観測やモビリティのコネクテッド化に有効な広域通信など、さまざまな分野・用途で欠かせないものとなっている。クルマにとっても、人工衛星は米GPSや日本の準天頂衛星「みちびき」などGNSS(全地球測位システム)による車両の現在位置把握のために欠かせない存在だ。そういうわけで、近年は人工衛星の打ち上げ需要が高まっているのだが、それを担うロケットの供給が追いついておらず、慢性的な不足が課題となっている現状がある。 次の目標は2029年、準軌道への到達能力の実現 しかし、ホンダがつくるならば、フツーの小型ロケットで終わるはずがない。ホンダは自動運転技術の開発などを通じて培った制御・誘導技術を生かし、より実現の難易度が高い「再使用型」を選択。再使用型ロケットは使い捨てが主流である従来のロケットとは異なり、同一の機体を用いて短時間での繰り返し運用ができるのが特徴で、よりサステナブルな輸送の実現に貢献できるという想いもある。 今回、離着陸実験に無事に成功したものの、まだまだ要素研究の段階。事業化は未定であり、ホンダは引き続き研究開発に取り組みながら、2029年の準軌道への到達能力実現を目指すという。 ちなみに準軌道(サブオービタル)は、高度100km程度で宇宙空間には到達するが、地球の周回軌道には乗らないため、人工衛星を残すことはできない。人工衛星の打ち上げにはロケットが低軌道(200〜2000km)に達する必要がある。そんなわけで、まだまだ再使用型ロケットを用いての人工衛星打ち上げが実現するまでの道のりは長そうだが、人々の暮らしを豊かにし、新たな価値を創造するというホンダの企業理念を宇宙空間へと広げる取り組みを、楽しみに見守りたい。 ホンダ 三部敏宏社長のコメント 「今回の離着陸実験の成功により、再使用型ロケットの研究段階を一歩進めることができたことをうれしく思います。ロケット研究は、ホンダの技術力を生かした意義のある取り組みだと考えています。ホンダはこれからも、商品を通じたお客様へのさまざまなサービス・価値の提供や、環境や安全への取り組みに加え、人びとの時間や空間に新たな価値を提供し続けることができるよう、チャレンジを続けていきます」

MotorFan編集部

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