【米国市況】株は反発、市場に「極端な強欲」-ドル小動き146円台前半
9日の米株式市場で、S&P500種株価指数は反発。大型ハイテク株に買いが戻った。エヌビディアの時価総額は一時、史上初の4兆ドル(約585兆円)に達した。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6263.26 37.74 0.61% ダウ工業株30種平均 44458.30 217.54 0.49% ナスダック総合指数 20611.34 192.88 0.94%貿易摩擦への懸念は、S&P500種の過去最高値接近を押しとどめるには至らなかった。株式市場の強気モメンタムを示すCNNの「恐怖と強欲指数」は「極端な強欲」を示唆している。大型ハイテク株の指数は1.1%上昇。エヌビディアは年初からの値上がり率が20%を上回った。
トランプ米大統領はイラクやフィリピンなどに賦課する関税率を新たに発表した。ブラジルには50%を賦課すると明らかにした。
パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「貿易戦争を巡る神経質なムードが戻ってきたが、それでも株式市場の環境は強気に見える」と指摘。「短期的に株式が圧迫される可能性はあるものの、関税ニュースへの市場の反応はますます鈍くなっており、それよりもトレンドラインが注目されている」と分析した。
6月17-18日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、当局者の間で金利見通しに開きがあり、その主な要因は関税がインフレに与える影響についての見解の違いだった。
議事要旨には「数人の参加者は関税が一時的な物価上昇を引き起こすものの、より長期のインフレ期待には影響しないと指摘した。しかし大部分の参加者は、関税がより持続的な影響をインフレに与えるリスクがあると主張した」と記された。
LPLファイナンシャルのジェフ・ローチ氏は、FOMCは現在の様子見姿勢を続けそうだと話す。
「向かい風が吹き付ける中でも経済はなんとか拡大を続けており、政策当局には予想される関税の影響を見極める時間的余裕がある」とローチ氏。「先週に雇用統計が発表されて以来、市場では7月利下げ観測が消えた。来週発表されるインフレ統計は物価上昇ペースの加速を示す可能性が高く、FOMCには高金利を据え置く理由が増えるだろう。インフレ数値の改善は、今年のもっと後になると予想される」と述べた。
今年に入り中国のDeepSeek(ディープシーク)登場に伴う懸念やトランプ大統領による貿易戦争がリスクセンチメントへの重しとなり、エヌビディアの株価は軟調なスタートを切ったが、その後は目覚ましい回復を見せている。23年初めからでは1000%超の値上がり。株価上昇の原動力は、エヌビディアの主要顧客による人工知能(AI)投資継続の姿勢にある。
ゴールドマン・サックスのストラテジストは今週、米株相場予想を引き上げた。主要企業の堅調な業績を株価押し上げの一因と分析している。
アメリプライズのアンソニー・サグリンビーン氏は「筋書き通りに事が運び、経済活動と企業利益が(特にハイテク分野で)堅調を維持し、さらにはいずれ来るであろう不測の悪材料が市場を大きく軌道からそらさないのであれば、相場は年末にかけてじりじりと上がっていくチャンスはある」と述べた。
ただし失望するリスクはこれで高まったと、同氏は指摘する。「ホワイトハウスから絶え間なく出てくる決定事項に基づき、全体的な投資シナリオがあっという間に変化し得ることを考慮すると」そのリスクはなおさら高いと述べた。
個別企業のニュースとしては、アップルが一時下落。関税には「大き過ぎると同社はどうやら考えている」と、ホワイトハウスのナバロ上級顧問がFOXビジネスで述べた。
ソーシャルメディア、X(旧ツイッター)のリンダ・ヤッカリーノ最高経営責任者(CEO)は退任する意向を明らかにした。
メルクは英バイオ医薬品企業ベローナ・ファーマを約100億ドル(約1兆4700億円)で買収することで合意した。
サムスン電子は折りたたみ式スマートフォンの新モデル3機種を発表した。
米国債
米国債相場は反発。10年債入札(発行額390億ドル)で強い需要が見られ、米財政見通しへの不安が緩和された。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.87% -5.7 -1.16% 米10年債利回り 4.33% -6.7 -1.53% 米2年債利回り 3.84% -4.8 -1.22% 米東部時間 16時58分利回りは軒並み低下し、10年債では一時約6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り下げて4.33%となった。
オックスフォード・エコノミクスのアナリスト、ジョン・キャナバン氏は「堅調な入札結果は、この日の市場ムードをさらに明るくした」と指摘。「安心感を与えるには十分良好な結果だった」と続けた。
10年債入札では最高落札利回りが4.362%と、応札締め切り前に示唆された水準を小幅に下回った。これは需要が予想を上回ったことを意味する。
先週明らかになった強い雇用データを受けて米利下げ期待が後退したほか、米減税・歳出法が成立したことから、利回りはこの1週間ほど上昇傾向にあった。
6月のFOMC議事要旨によると、当局者の間で金利見通しに開きがあり、その主な要因は関税がインフレに与える影響についての見解の違いだった。
関連記事:FOMC議事要旨、金利見通しに開き-関税の影響巡って見解相違 (1)
短期債利回りもこの日は低下。2年債利回りはこの日の高水準からの下げが5bpを超えた。フェデラルファンド(FF)金利先物8月限への強い需要も背景にあった。
6月の雇用統計が強い数字だったにもかかわらず、トランプ大統領からの圧力が続く中で、利下げ期待は高まりつつある。トランプ氏はパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の任期満了に伴い、利下げ要求に応じる人物を後任に指名すると公言しており、この日は米政策金利が少なくとも3ポイント高過ぎると述べた。
外為
ドル指数は小幅もみ合い。オプション市場ではドル・ロングの需要が見られる。主要10通貨の中では、円とスイス・フランが対ドルで上昇。カナダ・ドルは軟調だった。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1196.63 -0.01 0.00% ドル/円 ¥146.31 -¥0.27 -0.18% ユーロ/ドル $1.1722 -$0.0003 -0.03% 米東部時間 16時58分ドルは対円で一時0.2%下げ、146円25銭を付けた。
UBSインベストメント・バンクは堅調を増すドル相場と日本銀行のハト派的姿勢を理由に、7-9月のドル・円相場見通しを従来の135円から、140円に引き上げた。
「超ハト派的な日銀のスタンスと、幅広いポジション調整でドル全般が持ち直す可能性を考慮し、ドル・円が短期的に150円に近い水準である200日移動平均に向かう可能性は排除しがたい」とリポートで指摘。「日本が米国との交渉で上乗せ関税の回避で合意できなければ、日銀はさらにハト派的姿勢を強めることを促されるだろう」と分析した。
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、一時約0.2%上昇。トランプ米大統領は新たな関税通告の書簡を発表した。発効は8月1日。
主要通貨の中ではブラジル・レアルの下げが目立った。米国に対するブラジルの姿勢を批判していたトランプ大統領は、ブラジルへの関税率を50%と発表した。
原油
ニューヨーク原油先物相場はほぼ変わらず。原油在庫が大幅に増加した一方、米国がイランの原油輸出を制限する新たな措置を講じたため、もみ合う場面が目立った。
米エネルギー情報局によると、先週の米原油在庫は710万バレル増加し、1月以来の大幅増を記録した。一方、米財務省はイラン産原油の輸出を支援したとして22の外国組織を制裁対象に追加した。
ケプラーの米州担当リード原油アナリスト、マット・スミス氏は「週次ベースで輸入が大幅に減少したにもかかわらず、精製活動の小幅な低下と輸出の鈍化が、原油在庫の大幅な増加につながった」と指摘した。
ラボバンクのグローバル・エネルギー・ストラテジスト、ジョー・デローラ氏は、市場で実際に原油の供給量が大幅に減少するまで、制裁措置に関するニュースは限定的な上昇要因にとどまるとの見方を示した。
「全ては見せかけだ」と指摘。「週末までに、制裁を受けた企業は全て新しい名前で新しい場所で営業を再開し、石油は流通し続けるだろう」と語った。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は、前日比5セント(0.1%)上昇し、1バレル=68.38ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は4セント高の70.19ドル。
金
金相場は反発。スポット価格は午前中にプラス圏に浮上したものの、FOMC議事要旨を待つムードが強かった。議事要旨公表後の動きはおおむね限定的だった。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時14分現在、前日比14.25ドル(0.4%)高の1オンス=3316.17ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は4.10ドル(0.1%)高の3321ドルで終了した。
原題:Stock Bulls Flash ‘Extreme Greed’ as S&P 500 Gains: Markets Wrap(抜粋)
原題:Treasuries Extend Gains After ‘Solid’ Auction of 10-Year Notes(抜粋)
原題:Dollar Steadies While Yen, Swiss Franc Outperform: Inside G-10(抜粋)
原題:Oil Steadies as Traders Weigh Bearish US Data Against Sanctions(抜粋)
原題:Gold Swings as Traders Wait for Fed Minutes, Trump’s Trade Deals(抜粋)
原題:Gold Holds Steady With Fed Officials Split on Inflation Outlook(抜粋)