「iPhoneが市場席巻などありえない」マイクロソフト元CEOはなぜ「背を向けた」のか(ビジネス+IT)

「みんな音楽を愛している。だから我々はこの仕事を続ける」  運命の分かれ道となるこの言葉を口にしたのは、世界最大のCDショップチェーンの元CEO。2階のバルコニーから混雑した店内を見つめていたときだった。  数年後、世界中に展開していたこの会社は倒産した。  元CEOの言葉は間違っていない。みんな音楽を愛している。とはいえ雨の中、1時間もかけて店まで行き、混雑した店内をかき分けるようにプラスチックの丸い板を手にして、代金を支払うために列に並びたいとは思わない。  元CEOは客が求めていることを読み違えた。欲しいのは音楽で、CDではなかった。  2003年春、アップルが開発したデジタル音楽プラットフォームiTunesが登場し、CDの購入層は何の不自由もなく欲しいもの(音楽)を手に入れられるようになった。  信頼できる情報筋によると、元CEOは端(はな)からデジタル音楽をばかにして、その導入や将来的な脅威について、経営陣と話し合おうともしなかったという。  ある同業者は指摘する。彼はデジタル音楽を理解できず、あんなものは著作権侵害だ、人々のCDに対する愛情が揺らぐはずはない、そう思いこんで「背を向けた」のだ。  天文学者のクリフォード・ストールも、インターネットの未来について軽蔑的な予測を立て、ある意味では「背を向けた」と言える。その予測とは、1995年2月に『ニューズウィーク』に発表された次の記事だ。 この最先端の過大評価されたコミュニティに対して、私は不安を否めない。夢想家は在宅勤務、双方向型の図書館、マルチメディア教室が実現する未来を思い描く。電子タウンミーティング、バーチャルコミュニティを語る。買い物やビジネスがショッピングモールやオフィスからネットワークやモデムへ移行する……(中略)なんとばかげたことだ……(中略)……オンラインのデータベースが新聞に取って代わることなど、ありえない。  だが、やがて『ニューズウィーク』は印刷版の雑誌を廃止し、すべてデジタル版に移行することになる。  1903年、大手銀行の頭取は明らかに流行に背を向け、フォード・モーターの創業者、ヘンリー・フォードに対して言い放った。 「馬は生活に浸透しているが、自動車は物珍しいだけだ──単なるブームにすぎない」  1992年には、インテルの元CEO、アンドルー・グローヴも流行に背を向け、「携帯電話が全員のポケットに入っているなど、金の亡者の絵空事だ」と発言している。  そしてマイクロソフトの元CEO、スティーブン・バルマーも、「iPhoneが市場を席巻することなどありえない」と、アップルをあざ笑った。

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