AIカスタマーサービスを積極導入して採用を停止していたフィンテック企業が「サービス品質低下」のため人間の採用を再開

メモ

「AIアシスタントは人間のエージェントと同じ顧客満足度を維持しつつ、問題解決までの時間を平均11分から2分にまで短縮してくれる」と豪語して、カスタマーサービスにAIを積極導入していたスウェーデンのフィンテック(金融技術)企業・Klarnaが、「サービスの品質が低下している」として、AIではなく人間のエージェントの採用を再開していることがわかりました。

Klarna Turns From AI to Real Person Customer Service - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-05-08/klarna-turns-from-ai-to-real-person-customer-service

Klarna changes its AI tune and again recruits humans for customer service | CX Dive

https://www.customerexperiencedive.com/news/klarna-reinvests-human-talent-customer-service-AI-chatbot/747586/ Klarnaはフィンテックブームに乗って伸びたスウェーデンの企業で、ブームが落ち着いたあとコスト削減が必要となり、2023年にOpenAIと提携。2024年2月にAIアシスタントを発表しました。

AIアシスタント発表の声明でKlarnaは、「AIアシスタントは1カ月の運用で、Klarnaのカスタマーサービスのチャット量の3分の2にあたる230万件の会話を処理し、フルタイムで働く人間のエージェントでいえば700人の働きをしてくれる」と説明。顧客満足度も人間のエージェントと同等で、説明がわかりやすいことから再度の問い合わせは25%減少。解決までにかかる時間は従来の11分から2分へと短縮され、Klarnaにとっては4000万ドル(約58億円)の収益につながると説明していました。

Klarna AI assistant handles two-thirds of customer service chats in its first month | Klarna International

https://www.klarna.com/international/press/klarna-ai-assistant-handles-two-thirds-of-customer-service-chats-in-its-first-month/

Klarnaの共同創業者兼CEOのセバスチャン・シェミアトコウスキー氏は、さらにAIへの置き換えを進めていく予定だったとみられますが、「戦略が適切ではなかった」と方針転換。停止していたカスタマーサービスの新規採用が再開されることになりました。 シェミアトコウスキーCEO

シェミアトコウスキー氏がストックホルムにあるKlarnaの本社で話した内容によると、「Uberのような形」で働くリモートスタッフを試していて、最終的には、外部委託している数千人のスタッフの置き換えを目指しているそうです。 シェミアトコウスキー氏は「残念なことに(AI利用は)評価要素としてコスト面を優先しすぎていて、最終的に品質の低下を招いています。人的サポートの質に投資することこそ、我々が目指す道です」と語ったとのこと。 情報研究企業・Info-Tech Research Groupのジュリー・ゲラー氏は、ニュースサイト・CX Diveの取材に対して「重要なのは、AIによって人間のエージェントを置き換えるべきなのではなく、補完するべきなのだということです。ルーチン作業の自動化によって効率は向上しますが、特に感情や複雑な事情が関わる場合、顧客に対しては、人間のエージェントとすぐ連絡が取れるようにしておくべきです」と指摘しています。 ゲラー氏の指摘を裏付けるように、シェミアトコウスキー氏は「ブランドとしての観点から、そして会社としての観点から考えると、必要に応じて、常に人間のエージェントがいるということを顧客に明確にすることがとても重要だと思います」とニュースサイト・Bloombergに語っています。

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