「今日の猛暑は温暖化の影響?」→データが真実を教えてくれる。「真っ赤」な日本列島が意味すること

連日続く猛暑。「この暑さは温暖化の影響…?」と思う人もいるのではないでしょうか。

7月29日は大阪や京都府、群馬県などで最高気温が39℃まで上がることが予想されました。

実は、その日の暑さが、化石燃料の燃焼による温暖化の影響でどれくらい起こりやすくなったかを数値で見られる公開データがあります。

アメリカの気候研究機関が公表する分析データを見てみると、今日の本州の気温は、温暖化の影響を非常に強く受けていることが分かります。

Climate CentralによるClimate Shift Index。日本列島が真っ赤に表示されている様子が見受けられる。「+5」の濃い赤が最高レベル。

アメリカの気候研究機関「Climate Central(クライメート・セントラル)」による「Climate Shift Index(クライメート・シフト・インデックス)」のサイトでは、世界地図で各地域の気温が、温暖化の影響を受けているかを知ることができます。

これはイベント・アトリビューションを利用したデータ。イベント・アトリビューションとは、温暖化が起きなかったと仮定した状況と、温暖化が起きている現在の状況を比べ、特定の気象現象に対する温暖化の影響を定量的に分析するものです。

Climate Shift Indexは誰もがアクセスすることができ、世界各地のメディアや科学者が利用しています。日本ではこのデータを元に、関西の情報ワイド番組「おはよう朝日です」(ABCテレビ)の天気予報コーナーで、その日の最高気温への温暖化の影響を表す「温暖化指数」が伝えられています。

Climate Shift Indexの評価軸。この表は、最高レベルに強く影響を強く受けている「5」から、影響を受けていないの「0」まで。評価軸は「−5」まで存在する。

Climate Shift Indexの評価軸は、化石燃料の燃焼による温暖化の影響でその日の暑さが5倍以上起こりやすくなったという評価である「5」から、影響を受けていない「0」、そして「−5」までの11段階。

上記の評価軸の表は、「0」から「5」を説明しています。

今日、7月29日のデータを見てみると、本州の大半の地域が、温暖化の影響を非常に強く受け、危険な温度が温暖化の影響で5倍以上起こりやすくなったという濃い赤色(評価5)になっています。

地図を日本列島にズームして詳しく見てみると、東北地方から中国地方まで、日本海側を中心に濃い赤色が広がり、温暖化の影響を強く受けていることが分かります。

Climate CentralによるClimate Shift Index

もちろん高気温の原因には高気圧など様々な背景がありますが、Climate Shift Indexではその中でも、化石燃料の燃焼による温暖化の影響について数値で示しています。

イベント・アトリビューションをめぐっては日本でも、極端気象と気候変動の影響を関連づける分析の動きが加速化しています。

日本での異常気象について人為起源の温暖化の影響を迅速に分析し、従来にない圧倒的な早さで社会に発信することを目的として、「極端気象アトリビューションセンター(WAC: Weather Attribution Center)」が5月に発足しました。

極端気象アトリビューションセンター

センターには東京大学大気海洋研究所や京都大学防災研究所の研究者など、日本におけるイベントアトリビューション研究の第一人者らが参画。

極端気象の発生後、社会の関心が最も高い時に科学的分析結果を発信することで「気候変動の影響への理解を促進し、社会のあらゆるレベルの行動につなげていくこと」を目指しています。

早速活動をスタートした同センターは、6月中旬の記録的な高温を分析。「地球温暖化がなければ起こり得なかった」暑さだったと6月27日に発表しました。

このような分析や発表は、各報道機関が、ただ単に猛暑や熱中症のニュースを伝えるだけではなく、加えて背景にある温暖化の影響まで報じるためにも役立っています。

この猛暑には、温暖化の影響が大きく関わっていることが分かった今、状況を悪化させないようには、どのような行動を取ったら良いのでしょうか?

そのような疑問について、国連広報センターは、気候変動研究の第一人者で東京大学未来ビジョン研究センター副センター長の江守正多教授にインタビュー。Instagramなどで短尺動画シリーズを発信しています。

その中で江守さんは、気候変動に関して「もう止められないと思っている人が多い。でも気候変動は人間が起こしていることなので、人間が止められます」とし、世界各国が連携して行動する必要性を指摘。「今から行えば止められるので、皆で協力することが大事」だと話しました。

気候変動対策では、構造の根本から変えていくシステムチェンジが非常に大切です。しかし、そのためには、一人ひとりが声をあげ、行動することも欠かせません。

江守さんは、家や車などの大きな買い物の際には省エネに配慮した選択をするなどの購買行動に加え、「社会のルールや目標値がこう変わってほしいと、署名や投票、SNSで声を上げること」もとても大切だと話しています。

「1.5℃の約束 いますぐ動こう、気温上昇を止めるために」

猛暑や豪雨などが発生する背景には様々な要因がありますが、近年頻発化・激甚化している異常気象の背景の一つには、気候変動の影響があります。

気候変動の主な原因が、大量の温室効果ガス排出などの人間活動であるということは、科学的に「疑う余地がない」と言われています。熱中症や災害への警戒や対策を行うと同時に、気候変動を止める行動が必要不可欠です。

そのためには、国や企業の脱炭素化を急速に進めることが重要です。政策や企業行動に注目し、声を上げることも大切なアクションの一つです。個人でできることもあります。

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