米国株市場の上値めどは?CPI、決算控え「勝負の来週」(土信田雅之)

 今週の米国株市場ですが、主要株価3指数(ダウ工業株30種平均、S&P500種指数、ナスダック総合指数)の動きを見ると、22日(水)の取引終了時点で、いずれも最高値圏で推移しているものの、伸び悩んでいる印象です。

 半導体関連銘柄で構成されるSOX指数や、中小型銘柄で構成されるラッセル2000についても株価の上げ下げがやや激しくなっており、不安定さをのぞかせています。

<図1>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年10月22日時点)

出所:MARKETSPEED IIおよびBloombergデータを基に作成

 また、株式市場以外に視点を移すと、今週は金価格が急落する場面がありました。

<図2>金価格(COMEX金先物)(日足)とMACD(2025年10月22日時点)

出所:MARKETSPEED II

 上の図2にもあるように、今週の金価格は週初の20日(月)に最高値を更新した直後の翌21日(火)に急落していたことが確認できます。価格の水準は25日移動平均線に近づいたほか、下段のMACDもシグナルを下抜けるクロスが出現するなど、これまでの上昇基調に変化が見られます。

 10月に入ってからの金融市場では、米国株市場も金価格も最高値を更新するという展開が目立っていましたが、今週に入ってからは、こうした動きが一服しつつあるような印象になっています。

株と金が同時に上昇:楽観と悲観の「微妙な均衡」

 そもそも、「リスク資産」の株式と「安全資産」の金が同時に上昇するというのは、教科書的に見れば珍しい状況なのですが、この同時高は、市場が二つの相反する力に支えられていました。

 一つ目の力は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ継続に対する期待です。来週の28日(火)から29日(水)にかけて、米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されますが、足元の市場は利下げが決定されることを前提に動いています。

 利下げ効果による「流動性相場」と、「景気の下支え」によって株高が継続するという見方です。さらに、株式市場にはAIという大きなテーマがあり、割高感が意識されながらも株価を押し上げています。

 そして、もう一つの力は、根強い米国の景気減速不安やインフレの再燃懸念、米中対立や米政府機関の閉鎖といった地政学的リスクなどに対する警戒感です。こうした不安による分散投資先として金が選好されている要因となりました。

 つまり、最近までの状況は楽観と悲観が入り混じりながらバランスをとっている「微妙な均衡」を保っていたとも言えます。

 今週に見せた金価格の急落は、米中対立の激化や米地方銀行の信用リスク不安といった、足元の金価格を押し上げた懸念が後退したことが引き金となりました。

 これにより、微妙な均衡のバランスがやや楽観側に傾き、株式市場が上昇しやすくなるわけですが、実際の米国株市場は最高値圏で推移しているものの、これまでのところ、積極的に上値をトライしている様子はありません。

 その背景には、米中対立を巡る報道が二転三転していることや、米地方銀行に対する不安も、今後の景気動向次第では貸出先が焦げ付いてしまう可能性があることなど、安心感をもたらすレベルまで払拭しきれていないこと、そもそも、こうした不安材料の後退は「上値をトライする」材料ではなく、「買い戻し」の材料であることなどが考えられます。

 さらに、今週末24日(金)に公表される米9月消費者物価指数(CPI)をはじめ、来週には先ほども述べた米FOMCや注目のAI関連企業の決算が予定されているなど、来週にかけての「勝負の週」に備えた様子見姿勢も、株価の上値追いが手控えさせていると思われます。

米国株市場が「大相場」となった際の目標値

 そのため、米国株市場が一段高していくためには、すでに株価が期待を先取りして上昇しているだけに、市場の期待を上回る決算内容と見通しを示すことや、CPIの結果が利下げ期待を妨げない内容になることが必要になります。

 とりわけ、これまでの相場をけん引してきた、米AI関連銘柄の決算がカギを握ります。来週はマイクロソフトやアルファベット、メタ・プラットフォームズ、アップル、アマゾンが決算を発表する予定です。

<図3>主な米AI関連銘柄の決算発表予定日(2025年10月23日時点)

出所:Bloombergデータを基に作成

 また、前回および前々回のレポートでは、米国市場が抱える懸念点について考察し、株価が調整もしくは下落してしまう可能性や注意点について見てきましたが、今回については、ポジティブな視点で、仮に米国株市場が来週にかけてのイベントを乗り越えて、再び最高値をトライする展開となった場合の上値の目標値について考えていきたいと思います。

 すでに米主要株価3指数は最高値圏にあるため、ここから先の上値トライは「未知の領域」になります。そこで、テクニカル分析における「値幅観測論」を用いて目安を探っていきます。

<図4>米NYダウ(週足)と上値目標値

出所:MARKETSPEED II

 今回の値幅観測論で用いる基準は、直近過去において、「株価が200日移動平均線を上抜ける前の安値」「そこから株価が天井とつけたところ」、そして、「再び株価が200日移動平均線を下抜けて底打ちしたところ」の3点になります。

 上の図4のNYダウの場合、2023年10月の安値(3万2,327ドル)、2024年11月の高値(4万5,071ドル)、2025年4月安値(3万6,661ドル)が該当し、それぞれの値幅を計算すると、最初の安値から高値までの上昇幅(1万2,744ドル)、高値から底打ちするまでの下落幅(8,410ドル)、そして、下値の切り上げ幅(4,334ドル)となります。

 これらをベースに、VT計算値、V計算値、N計算値、E計算値を求めていきますが、具体的な株価水準は図4にある通りです。

 すでに、VT計算値(4万0,995ドル)はクリアしていますので、次の目標値はN計算値の4万9,405ドルとなります。さらにN計算値を上回ると、V計算値(5万3,481ドル)、E計算値(5万7,815ドル)と目標値が切り上がっていきます。

 なお、S&P500とナスダック総合についても同様に値幅観測論で見ていくと、下の図5と図6のようになります。

<図5>米S&P500(週足)と上値目標値

出所:MARKETSPEED II

<図6>米ナスダック総合(週足)と上値目標値

出所:MARKETSPEEDⅡ

 あくまでも、「想定以上に相場が強い」展開となった場合の皮算用ですが、目安の参考として意識しておくと良いかもしれません。

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