佐々木朗希は「気付かなきゃ駄目」 完全復活へ…MVP捕手が見た"球速低下の理由"

“令和の怪物”と呼ばれた輝きを取り戻すきっかけとなるか―。ドジャースの佐々木朗希投手が約4カ月ぶりにメジャーの舞台に帰ってきた。24日、26日(日本時間25日、27日)に登板。中継ぎで2戦ともに無失点に抑えた。

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 中日でMVPに輝くなど巨人、西武の3球団で名捕手として活躍した野球評論家・中尾孝義氏は、専大北上高校(岩手)の監督時代に大船渡高の佐々木と公式戦で相まみえた。以降、気に掛けてきた右腕の投球に「久々のメジャー。ドジャースは、ポストシーズンに向けたテストの意味合いがあった。内心メチャクチャ緊張したでしょうが、その中で結果が出たのは良かった」と安堵する。

 メジャー復帰初戦のダイヤモンドバックス戦は2点リードの7回から登場し、1イニングを13球で3者凡退。三振も2つ奪った。最速は約161キロとスピードが戻り、スプリットも数度高めに抜けたぐらい。中尾氏は内容を高く評価した。

「コントロールが良かったですね。ストライクとボールがほぼ際どい所に行っていた。いい傾向。スプリットはベースの近くで変化します。変化する地点が遅い。打者からすると、落ちる球とあれだけ速い真っ直ぐを混ぜられると対応が難しい。スライダーはある程度ボールの軌道を描けるので、狙っていて甘く入ってくれば打てるんです」

 中1日のマリナーズ戦は5番手。1イニングで許した安打は1本だけ。160キロ台をマークし、今季60本塁打のカル・ローリー捕手をスプリットで空振り三振仕留めるなど、2奪三振と存在感をより強く示した。

 佐々木は、不慣れな救援でひとまず好投を続けた。「現時点ではショートイニングの方がいいかもしれません。適性はある。朗希は左足を高く上げるフォームですが、走者を置いても日本の時みたいなクイックはしなくてもいいのでは。米国は日本よりは走ってくる印象はないし、投球に集中して欲しい。連投も大丈夫でしょう……というか投げなきゃ」。2年連続ワールドシリーズ制覇を狙う王者のブルペン陣に貢献できると推す。

山本由伸は最高の教科書「朗希は運を持っている」

 配置転換を経て、レギュラーシーズン最終盤でメジャーに復帰。ここまでをどう見るのか。中尾氏は佐々木の米挑戦が決まった昨秋、期待と同時に「彼ぐらいの速さの投手は、向こうにはたくさんいる。今のままで通用するのかなぁ……」と不安も吐露していた。迎えた渡米1年目。東京ドーム開催の開幕2戦目にデビューし、先発8試合では1勝1敗、防御率4.72。故障で離脱し、マイナーでのマウンドも踏んだ。

「シーズン当初に先発ローテで回っていたのは、アメリカのバッターからしてみれば、初めて見るピッチャーだから。朗希の特徴が掴めなかった。僕はそれだけで何とか持っていたと考えます。だけど結局は制球力がなかった。故障もフォームが悪いから。悪いと肩、肘にくるんです」

 佐々木のすぐそばには、「最高の教科書」がいる。山本由伸投手だ。「好投手はコントロールが凄く良くて、打ち取れるボールを持っている。朗希は調子がいい時は素晴らしいが、悪い時はどうにもならない。由伸は球種が豊富なので、その日の状態によって『きょうはこのボールは使える』と組み立て、悪いなりに抑えられる。全てが良い時なんて、もう全然打たれませんよね」。日本球界で無双し、メジャーでも安定感を誇る山本と、佐々木のキャリアの差を説明する。

 球速が低下するなど、日本時代のパフォーマンスが影を潜めた1年目。復調へ、山本のフォームもヒントになると提言する。「復帰した朗希ですが、気になる点もあった。軸足の右膝がちょっと折れ過ぎ。体重を乗せる事を膝を曲げる事と勘違いしているのかも。折れ過ぎると右肘が上手く回って来ない。高校の時の彼はスリークォーター気味で、ロッテ2年目ぐらいから肘が上がって叩けるようになった。完全試合の頃が一番いい形で、耳の前で叩けるような感覚が大切。由伸は突っ立ったように投げますよね」。

 ドジャースは地区優勝こそ決めたものの、9月の救援陣のドタバタ感は否めなかった。「リリーフ陣に疲れが出た。でも、しっかりしていれば朗希に昇格のチャンスはなかったんだから。アイツは運を持っています。ちゃんと投げられれば、元々のポテンシャルはやっぱり高い。1年間、こうやってアメリカで実際に様々な体験をし、多くの気付きがあったはず。気付かないと駄目だし、本人もわかってますよ」。“令和の怪物”はまだ23歳。酸いも甘いも成長の糧になる。

(西村大輔 / Taisuke Nishimura)

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