謎多き“天王星の月”の明るさを観測した結果、これまでの仮説とは真逆の結果に
天王星の周りにある月には、衛星にあまり見られない特徴があることで知られています。
クレーターがたくさんあるものや、地殻変動の痕跡が残されたもの、尾根や断璧が入り組んだモザイク状の地形のものなどさまざまありますが、今回ハッブル宇宙望遠鏡での観測により、天王星周辺にある最も大きな4つの月の表面の様子が新たに明らかになりました。
そこでは意外な発見もあったのだとか。
天王星の月の謎が一部明らかに
研究に向けて、天文学者のグループは天王星の磁場と、4つの衛星(アリエル、ウンブリエル、タイタニア、オベロン)との間に、何らかの相互作用の兆候がないか調査したところ、各衛星の自転周期と公転周期が同じになる「潮汐ロック」の状態にあることが判明しています。
これは、進行方面の側が天王星に常に向いている状態にあり、もう片方の側は天王星に向いていないことを意味します。長年研究者の間では、進行方面の側の方が明るく、もう片方の側、つまり後退方面の側が暗く見えると考えられてきました。
ですが、実際にはその真逆で、天王星から遠い外側の衛星においては、進行方面の側が明確に暗くなっている証拠が見つかったのです。
Image: NASA, ESA, STScI, Christian Soto (STScI)天王星とその衛星のリスト先週開催された第246回アメリカ天文学会の会合にて発表されたこの研究結果では、これまでのデータとは異なり、天王星の磁気圏が周辺の大型衛星とあまり相互作用していない可能性が示されたことになります。
この研究の中心人物であるジョン・ホプキンス大学の応用物理学研究所に所属するRichard Cartwright氏は、声明のなかで
「天王星は奇妙で、磁場が衛星とどの程度相互作用しているのか、これまでずっと謎のままでした」
と語っています。
ミステリアスな天王星、月も謎だった
その異質さは磁場だけにとどまりません。自転軸が98度も傾いており、そのため太陽系のなかで唯一公転面に対して赤道がほぼ直角になっている惑星でもあります。1日の長さは約17時間。一方、公転周期は84年にもおよびます。
Cartwright氏は
「1986年のボイジャー2号のフライバイ当時、天王星の磁気圏は衛星の公転面に対して約59度傾いていたとされています。つまり、磁場にはさらに傾きが生じているということになります」
と説明しています。
天王星とその磁力線は衛星よりも速く自転しているので、磁力線が各衛星の周囲を常に通過していることになります。その結果、天王星の磁場から発せられた帯電粒子が、衛星の後退する側の表面に衝突しているだろう、と研究者の間では考えられてきました。
こうした帯電粒子が衛星の後退する側の表面に蓄積され、放射線を散乱させることで、天王星の反対側を向いている面が暗く見えるようになっているという見解です。
ですが、ハッブル宇宙望遠鏡の紫外線観測機能により、天王星の衛星であるアリエルとウンブリエルの進行方面の側と後退方面の側の明るさが実はほとんど同じであることが発見されました。一方、タイタニアとオベロンの場合は、これと真逆の結果であることも明らかになっています。この2つの衛星では、進行方面の側の半球の方が後退方面の側よりも暗く、しかも赤みを帯びているということも判明しています。
この不思議な現象について、研究者の間ではある仮説が立てられています。それは、これら2つの衛星に微小の隕石が何度も衝突しており、その際に放出された物質の一部が天王星の周囲に軌道を描いて漂っているというもの。こうした物質が数百万年という時間をかけて、次第に内側に移動していき、タイタニアとオベロンの軌道にまで達しているといいます。
宇宙望遠鏡科学研究所の発表によると、タイタニアとオベロンは天王星を周回するなかで、まるで「運転する車の窓に虫が当たるように」その塵を集めているのだとか。それが蓄積し、タイタニアとオベロンが暗く赤みを帯びた状態になっているそう。
Cartwright氏はこの結果を受け、「まさか塵の堆積という仮説に結びつくとは思いもよりませんでした。いつだってデータはこちらの予想を裏切ってくるんですよね」と語っています。
一方のアリエルとウンブリエルについては、天王星の磁気圏と何らかの相互作用をしている可能性が残されているものの、それが明暗のコントラストに関係しているのかどうかは定かではありません。
天王星の謎は深まるばかり。その謎が解明される日は来るんでしょうか?