辺野古転覆事故、死亡した船長を刑事告発 4年間で6回無登録運航か

増山祐史

 沖縄県名護市辺野古沖で3月、小型船舶が転覆して高校生と船長の2人が死亡した事故で、国土交通省は22日、死亡した金井創船長(71)を海上運送法違反容疑(無登録営業)で中城海上保安部刑事告発した。国の出先機関である内閣府の沖縄総合事務局が任意で調べた結果、事業性があるのに国に無登録のまま人を乗せて船を運航したと判断した。

 金子恭之・国土交通相が同日の会見で「知床遊覧船事故を受け、安全規制の強化や再発防止を図ってきたなかでの事故は大変遺憾だ」と話した。午後2時に沖縄総合事務局が中城海上保安部に告発状を出した。

 観光船などのように第三者の求めに応じて人を船で運ぶ場合、有償・無償にかかわらず、海上運送法上の「事業者」として、同法に基づく事業登録などを受ける必要がある。登録されれば事業者は、天候状態を踏まえた出航判断の基準など、安全に関するルールをまとめた「安全管理規程」を作る義務がある。金井船長は事業登録をしていなかった。

船長個人に「事業性あり」と判断

 国交省によると、金井船長は2023年からの4年間で6回、同志社国際高校(京都府)側からの求めに応じて、船に高校生を乗せて辺野古沖まで運航していたという。学校側から金井船長に対して運航を依頼する文書があり、いずれも謝礼が支払われていたという。

 こうした運航状況から、金井船長個人が、事業者として船を運航していることを裏付ける「事業性」があると判断した。

 事故では、生徒ら計21人が乗った平和丸と不屈の2隻が転覆。金井船長は不屈に乗っていて、平和丸の男性船長についても、事業性があるかを国が調べていた。

 国交省によると、男性は任意の聞き取りには応じておらず、学校側から運航を依頼された形跡が確認できていないため、今回の告発の対象には入っていない。今後、男性個人にも事業性があると判断されれば告発するとみられる。

 事故が起きた船を使っていた市民団体「海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会」は、書面での調査には応じているという。協議会のメンバーについても、運航に関与していると確認できた場合は告発する方針。

 協議会は金井船長の告発について、「当協議会に対する捜査も継続中なので、現時点でコメントはできない」としている。

 事故は3月16日午前10時10分ごろ発生。辺野古沿岸の海上で、同志社国際高校2年の生徒18人を含む計21人が乗った小型船の平和丸(5トン未満)と不屈(1.9トン)が転覆した。第11管区海上保安本部が、業務上過失致死傷などの疑いで捜査している。

 無登録営業をしていた場合、海上運送法に違反したとして1年以下の拘禁刑か、150万円以下の罰金、またはこれらを併せて科される可能性がある。

船長は「海上行動チーム」の中心メンバー

 告発された不屈の金井創船長(71)は、約30年前に発足したヘリ基地反対協議会の中にある「海上行動チーム」の中心メンバーだった。海上抗議活動だけでなく、今回のような視察目的の人を乗せる「海案内」と呼ばれる活動の窓口も担っていた。

 ヘリ基地反対協の抗議活動は主に、陸上での座り込み抗議と、海上での抗議の二つがある。関係者によると、船の定期検査や保険などの支払いは団体が担っていたが、活動は船舶免許を持つ船長たちが仕切っており、「海上行動チームは、ほとんど別組織というぐらい独立している」という。

 海案内の希望があると、金井船長が、割り振りや、乗船希望者とのやりとりを担当することが多かったという。幹部は「運航の日程は共有されることもあったが、金井さんが誰とどんなやりとりをしていたのかは我々も分からない」と振り返る。

 海上保安庁の捜査でも、当初はヘリ基地反対協の活動拠点を家宅捜索していたが、数日後に金井船長の自宅や牧師を務めていた教会も捜索した。別の幹部は、今回問題となっている事業登録の必要性について金井船長らと議論したことはなかったとし、「法律関係も含めて任せきりにしてしまった。登録が必要ないと思い込んでいた」と悔やんだ。

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この記事を書いた人

増山祐史
東京社会部|国土交通省担当
専門・関心分野
運輸行政、事件事故、独占禁止法、スポーツ

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