目標額達したのに未入金 ローカル鉄道を襲った二つの「まさか」
鉄道ファン1000人超の厚意が宙に浮いたままとなっているクラウドファンディング(CF)運営会社「うぶごえ」による支援金の未払い。トラブルの経緯をたどるとローカル鉄道は、二つの「まさか」に見舞われていた。
ローカル鉄道が命運を託したCFは、目標額に達したものの支援金が届きませんでした。なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。経緯を探りました。 <主な内容> ・対面せずに契約 ・チャレンジャーと思われたが…… ・もう一つの「まさか」
・自社の費用負担でリターン
「うちでやってみませんか」
昨年6月。長良川鉄道(岐阜県)に、うぶごえの営業担当者からこんな電話が突然、かかってきた。
CFでは、目標額に達した場合、プロジェクトの実行者は支援金の総額から14~20%程度の手数料をCF運営会社に支払う形が一般的だ。
だが、うぶごえでは支援者が手数料を負担し、実行者は支援金の全額を受け取れる仕組みになっているという。
関連資料や実績をメールで受け取った長良川鉄道は2カ月後、うぶごえと契約。担当者は「メールのやり取りで、契約書もネット上で完結した」と振り返る。
山形鉄道(山形県)、北越急行(新潟県)も営業を受け、オンラインのみのやり取りでうぶごえと合意。弘南鉄道(青森県)も「同様だった」という。
昨年7月から今年2月に実施された4鉄道のプロジェクトは、いずれも目標額を上回る支援金が集まった。しかし、山形鉄道は9割、ほか3鉄道は全額が未入金となっている。
北越急行は東京のオフィスを訪問し、支払いについて確認書を取り交わしたが、期日を5回以上延期されたという。
うぶごえは4鉄道に対し、「担当者が風邪をひいた」「資金の焦げ付きがあった」などと釈明しているが、動きはないまま。弘南鉄道は弁護士が交渉に入り、警察にも相談しているという。
チャレンジャーと思われたが……
国内のCFは、2011年の東日本大震災以降に広がり、20年の新型コロナウイルス禍で急速に普及した。
十六フィナンシャルグループで地域特化型CFを運営する「カンダまちおこし」(岐阜市)の田代達生社長は、今回のトラブルについて、こう驚く。
「これまでリターンとなる返礼品を巡って問題になることはあったが、支援金をCF運営会社が払わないというのは、初めてのケースで『まさか』という思いです」
プロジェクトの実行者が寄付や支援金を募り、リターンとなる返礼品を贈る「寄付型・購入型CF」では、「キャンプファイヤー」「マクアケ」「レディーフォー」を運営する3社の実績が大きく、20年設立の「うぶごえ」は新興企業にあたる。
田代社長は「うぶごえは新たなビジネスモデルを掲げ、市場を成長させるチャレンジャーになると思っていたが、あってはならないトラブルを起こした」と話す。
鉄道関連のCFでは「50年以上運行する国鉄急行形電車の延命」などのプロジェクトが相次いで成功。支援金が2000万円以上集まることは珍しくない。
鉄道ライターの杉山淳一さんは「CFは鉄道会社にとっても、ファンにとってもいい仕掛け。今回のトラブルは支援者の善意を踏みにじる行為だ」と怒りをあらわにする。
もう一つの「まさか」
対面せず、オンラインで契約を締結した4鉄道…