ホホジロザメが消えた海、いったい何が起こったのか? 最新研究
南アフリカのフォールス湾に浮かぶシール島周辺で2014年に撮影されたホホジロザメ。かつてはたくさん生息していたが、今はまったく見られなくなってしまった。(PHOTOGRAPH BY NATURE PICTURE LIBRARY, ALAMY STOCK PHOTO)
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魚雷のような体、6センチほどもある歯。世界最大の捕食サメは、とてつもなく恐ろしい姿をしている。あまりに恐ろしいので、ホホジロザメ(Carcharodon carcharias)のいない海を望む人もいるだろう。だが、3月25日付けで学術誌「Frontiers in Marine Science」で発表された論文で、このサメが消えた海に起こったことが明かになった。
南アフリカのフォールス湾に浮かぶシール島の周辺は、かつてホホジロザメのホットスポットだった。サメが水面まで出てきて獲物をつかまえる様子を見られるという、地球上でも数少ない場所のひとつだった。
「まるで『ジョーズ』です」。論文の筆頭著者で、シャーク・リサーチ・ファンデーション社の重役を務める海洋生態学者のニール・ハマーシュラーク氏はそう話す。「900キロのホホジロザメが、オットセイをくわえて水面から飛び上がるのです。こんな姿はほかでは見たことがありません」
ところが、そのサメがまったく姿を現さなくなった。研究者や保護活動家はシャチの侵入や人間が原因ではないかと考えた。だが、ハマーシュラーク氏らが2000年から島の周辺の生態系を調査していたおかげで、いくつかの驚くべき変化に気づくことができた。
ホホジロザメを見るならここしかない
ハマーシュラーク氏によると、20年前のシール島は「ホホジロザメを見るならここしかない」という場所だった。しかし、フォールス湾のホホジロザメは2010年ごろから減り始め、2015年以降に激減したのち、2018年に姿を消した。
ホホジロザメがいなくなった厳密な理由は謎のままだ。「この点については、まだ議論が続いています」と話すのは、サメを専門とする生物学者で、米マサチューセッツ州の海洋漁業部門に所属するグレッグ・スコマル氏だ。同氏は前述の研究には関与していない。
シャチが侵入してきたので逃げていったという説もある。シャチは数分でホホジロザメを狩り、栄養が豊富な肝臓を切り出すことができる。(参考記事:「【動画】サメの胸を正確無比に切り裂き、肝臓だけを食べるシャチ」、「【動画】ホホジロザメをソロで狩るシャチ、初の報告、2分の早業」)