米国の2027度国防予算、中間選挙の結果次第で地獄絵図になる可能性
国防総省は2027会計年度国防予算として計1兆5,000億ドルを要求したが、これは「裁量予算=1兆1,500億ドル」と「義務的支出=3,500億ドル」に分かれており、後者の成立が危ぶまれているため、国防総省は「そうなれば裁量予算に含まれる高額な従来型兵器を削減して無人機分野の資金を守る」と言い出した。
参考:Where Things Stand with the Pentagon’s $350 Billion Reconciliation Request 参考:Pentagon may ‘sacrifice’ traditional weapons to buy more drones if reconciliation fails: CTO
国防総省は2027会計年度(FY2027)の国防予算として計1兆5,000億ドルを要求したが、これは「通常の歳出プロセスで審議される裁量予算=1兆1,500億ドル」と「財政調整手続きで審議される義務的支出=3,500億ドル」に分かれており、米国の歳出法案は上院でフィリバスター(議事妨害)が可能なため、仮に共和党が多数を握っていても民主党が強く反対すれば法案を止めるのは比較的容易(これを阻止するには事実上60票の賛成が必要)だが、財政調整手続きという手続きをもちいれば51票で予算関連法案を上院可決することができ、共和党が結束さえすれば民主党の抵抗をほぼ無視して予算を通せてしまう。
出典:The White House
ただし、国防予算の一部を通常の歳出プロセスで審議しないことは「議会を軽視している」という反発も招き、この手法について民主党だけでなく共和党議員の一部も懐疑的な立場を表明しているため、上院で2名の造反者を出せば義務的支出は成立せず、民主党が2026年11月の中間選挙で上院か下院のどちらかで過半数をとれば義務的支出はほぼ確実に阻止されるため、トランプ大統領とヘグセス国防長官は共和党に「(共和党を取り巻く状況が思わしくないため)中間選挙までに義務的支出を成立させろ」と圧力をかけている。
米シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所で上級研究員を務めるトッド・ハリソン氏は「国防総省が義務的支出を通すのは日を追うごとに難しくなっているように見える」「まだ可能性はゼロではないものの11月選挙後のレームダック会期まで持ち越される可能性が高いだろう」と述べ、国防総省の予算編成において無人機分野、宇宙分野、ゴールデンドーム、F-35関連資金、弾薬調達の大部分が3,500億ドルが成立に依存しているため本当にリスキーだ。
出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Nicholas Rupiper
無人機分野のCCA開発及び調達、各種無人機プラットフォームの大量調達、対無人機システム調達、自律型システム全体の産業基盤強化といった全資金=1,025億ドル、宇宙分野の空中移動目標指示装置(SB-AMTI)や宇宙データネットワーク基幹に投資する資金の大部分=約118億ドル、ゴールデンドームに投資する資金の大部分=約175億ドル、F-35関連資金ではF-35調達資金の大部分=85機中53機分、F-35 Block4開発資金、エンジンアップグレード資金、F-35のスペアパーツ購入、整備・修理支援、整備員の訓練、大規模修理工場の整備、即応性の向上に投資する資金を失う。
弾薬調達でもPAC-3 MSE×3,203発の内2,936発分、THAAD×857発の内830発分、トマホーク TLAM/MST×785発の内727発分、AMRAAM×1,811発の内1,006発分、JATM調達資金のほぼ全額、JASSM-ER×821発の内330発分、SM-3 Block IIA×136発の内78発分、PrSM×1,134発の内454発分の資金を失うため、各種弾薬の大幅増産にも大きな影響を及ぼす可能性が高く、エミル・マイケル国防次官はハドソン研究所のイベントで「もし議会が義務的支出=3,500億ドルを可決しない場合、裁量予算=1兆1,500億ドルに含まれる高額な従来型兵器を削減して無人機分野の資金を守るだろう」と警告している。
出典:Anduril
つまり義務的支出の資金が手に入らない場合、裁量予算の支出を組み直してCCA開発及び調達、各種無人機プラットフォームの大量調達、対無人機システム調達、自律型システム全体の産業基盤強化への資金を最大確保し、そのトレードオフとして高額な従来型兵器の開発資金や調達資金が犠牲になり、義務的支出に依存する無人機分野以外は壊滅的になるという意味だ。
トランプ大統領とヘグセス国防長官が迅速に行動するよう圧力をかけても、一部の主要な共和党議員しか反応を示さず、他の主要な共和党議員は財政調整手続き自体に無関心だったり、過去の財政調整手続きを成立させるため何ヶ月間も時間を要しため「中間選挙までに財政調整手続きを成立させることができるのか」と懐疑的な見方を示すことが多く、トランプ政権や共和党に対する支持率も低迷しているため中間選挙後まで財政調整手続きに手が付けられないと見るのが妥当なのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Matthew Arachik