霧の中には何かがいる

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高橋真紀 ( GIZMODOライター )
Image: Shutterstock

霧に紛れて何かがやってくる。

そんなフレーズを聞くと、ジョン・カーペンター監督のホラー映画 『ザ・フォッグ』(1980)を思い出す人もいるかもしれません。

もっとも、今回の研究で明らかになったのは怪異の存在ではありません。

科学者たちが見つけたのは、霧の中で暮らし、増え続ける無数の細菌でした。

Futurismが伝えました。

霧は空に浮かぶ小さな湖

私たちは霧を、空気中に漂う細かな水滴の集まりとして認識しています。

ところが微生物にとっては話が違うようです。

研究チームは2年間にわたり32回の放射霧を観測しました。放射霧とは、風の弱い夜に地面が冷え、その上の空気も冷やされることで発生する霧です。

この調査の結果、霧の水滴1ミリリットルあたりには約100万個の細菌が存在していました。その濃度は、富栄養化した湖や海水で見られるレベルに匹敵します。

私たちには薄い白いモヤに見える霧も、微生物から見れば水に満ちた巨大な世界だったのです。

研究者らは、霧の水滴を「大気中に存在する水生マイクロハビタット(微小生息環境)」と表現しています。

言い換えれば、空に浮かぶ一時的な湖です。

細菌は霧の中で本当に増えていた

さらに驚かされたのは、細菌たちが単に風で運ばれてきたわけではなかったことです。

研究チームは顕微鏡観察によって、霧の中の細菌が大きくなり、分裂していることを確認しました。

分裂中の細胞の割合は、乾燥したエアロゾル粒子の中にいる細菌よりも明らかに高かったそうです。

また、霧が発生した後の空気中では細菌数が平均45%増加していました。

もし細菌が眠ったまま運ばれているだけなら、この増加を説明するのは簡単ではありません。

つまり霧は、微生物にとって単なる移動手段ではなく、食べて成長し、さらに分裂するための生活空間でもあったのです。

研究論文では、大気を「微生物の運搬経路」ではなく、「微生物の生息地」として捉えるべきかもしれないと述べています。

空気中の有害物質を食べている可能性も

霧に含まれる微生物の中で、特に多かったのはメチロバクテリウムという細菌です。

この細菌はホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物を利用できます。

研究では、霧の中の細菌がホルムアルデヒドを極めて速い速度で分解していることも確認されました。

その速度は、これまで雲の中で測定された値の約200倍に達していたといいます。

研究者たちは、この活動の大部分は成長のためというより、有害物質から身を守るための「解毒」ではないかと考えています。

もしそうなら、霧は単なる気象現象ではありません。霧の中の微生物は、大気中の汚染物質を分解し、空気の化学的なバランスに影響を与えている可能性があるのです。

ちなみに近年、世界各地では霧を集めて飲料水に変える「フォグハーベスティング」が注目されています。霧が頻繁に発生する場所に大きなメッシュ状のあみを設置して、霧の水滴を付着させて集める仕組みで、電力をほとんど使わないため、乾燥地域で注目されているんです。

ただ、研究者たちは、こうした技術そのものに警鐘を鳴らしているわけではありません。霧が単なる水滴ではなく、空気中の汚染物質を分解する微生物たちの住処だとすれば、その役割についても理解する必要がある、と指摘しています。

それにしても、霧の向こうに何かが潜んでいると想像したジョン・カーペンターは、案外的外れではなかったのかもしれませんね。

Source: Futurism, mBio

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