「絶対ここに戻ってくるから」 小平智が松山英樹らと交わした約束

◇国内男子◇ISPS HANDA 夏の決戦・誰が一番強いんだトーナメント 最終日(24日)◇北海道ブルックスCC(北海道)◇7286yd(パー72)◇晴れ(観衆1888人)

小平智が1イーグル7バーディの「63」と猛チャージし、通算24アンダーとして3打差逆転で7年ぶりのツアー8勝目を飾った。優勝後には「アメリカを捨てきれない」と、2023年まで6年間戦ったPGAツアー(米国ツアー)に再挑戦する意思を明かした。

23年1月に亡くなったコーチであり父の健一さん。その喪失感から立ち直るべく渡米し、6月末から1カ月半、かつての拠点であるフロリダ州オーランドで過ごした。心とゴルフを立て直すため「日本にいたら誘惑もある。知人も多いし」と、嫌でも練習などに打ち込める環境に身を置くための決断だった。

現地では松山英樹久常涼平田憲聖らと“再会”した。自分の現状を理解して、気を使ってくれる後輩たち。松山と久常は米ツアーで、平田は来季の同ツアー昇格を目指して下部コーンフェリーツアーで戦っている。食事などを共にし、小平は一人ひとりに約束した。「絶対、ここに戻ってくるから」。そんな決意が自然と口をついた。

18年「RBCヘリテージ」で日本男子5人目の米ツアー優勝を果たして手にした同ツアーシード。それを失った際、下部ツアーに残って再昇格を目指す道もあったが、当時すでに33歳。年齢的に下部から這い上がるルートは現実的でないと考え、一時撤退を決めた。だが、情熱を失ったわけではなかった。

「捨てきれない思いはずっとありました。僕はタイガー・ウッズを見て育った。今もあんなハイレベルな場所であんなに勝つ(スコッティ)シェフラーを“ハンパじゃないな”と思って見ています」。何より刺激を受けるのは、松山の存在。「ヒデキはそんなPGAツアーで日本人としてずっとトップでやっている。すごいです」

「RBCヘリテージ」で勝った18年の12月、国内ツアー「日本シリーズ JTカップ」を制した時は29歳。9月11日には36歳になる。「衰えはあまり感じないけど、疲れは抜けづらくなった。ゴルフに関して技術は上がっているでしょうけど、アメリカとか難しいコースを経験してきたことで、自信をなくしたり、それが怖さにつながるところもある」とキャリアを重ねたことの “変化”を認めつつ「でも、僕のやりたいゴルフは昔に僕がやっていた、思い切りの良さがある“怖いものなしにピンを攻めるゴルフ”です」と言い切る。

30代半ばでも、気持ちは20代。いつまでも若いからこそ、約束を必ず果たすつもりだ。(北海道苫小牧市/加藤裕一)

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