吉井裕鷹が語る日本代表の「本当の課題」…決勝トーナメントでリーダーシップ発揮へ
2時間前
日本代表としてアジアカップを戦う吉井裕鷹[写真]=fiba.basketball
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Toggleアジアカップはグループ最終戦を迎え、日本はグアムに102-63と快勝。グループ2位で決勝トーナメント進出が決定し、ベスト8をかけてレバノンと対戦することになった。
グアムとの試合、第1クォーターは8-0のランでスタートするが、ディフェンス面ではややソフトな入りを見せていた。これにはトム・ホーバスHCも選手たちの気持ちを引き締め直したほどだったが、ゲームが進むうちに改善して強度を高め、富永啓生の4本の3ポイントを含む20得点を筆頭に、西田優大、馬場雄大、富樫勇樹も続いて3ポイントを決め、危なげない展開で勝利を収めた。今大会、グアムは登録が10選手しかおらず、そのうち日本戦では一人が負傷していたため9人で戦っていた。ゆえにスタミナ面で日本が圧倒し、タイムシェアをしながら全員得点で終えたことも好材料だ。
グアム戦の目的は勝利以外にもあった。これまで不調だった選手やプレータイムの少ない選手たちが、決勝トーナメントに備えて実戦の中で調子を上げておくことが求められた。その課題に取り組んでいた一人が吉井裕鷹だ。
■イラン戦出場たったの8分…吉井は自身とチームの反省点を分析
イラン戦はファウルトラブルもあり出場時間が限られた[写真]=fiba.basketball
イラン戦で吉井の出場機会が少なかった理由をホーバスHCは「吉井のファウルが込んでしまい、代わって出た晶(ジェイコブス)が良かったから長い時間起用した」と語る。確かにジェイコブスはイラン戦でステップアップし、イランの将来を背負う同世代のモハンマド・アミニをブロックするシーンもあった。ただ、吉井本人としては「イラン戦で僕を使う場面は全然あったと思うんですけど…。でもそれはコーチが決めること」という納得できない思いを抱えていた。ここで誤解のなきように伝えたいのが、起用法に納得できなかったのではなく、自分のパフォーマンスに波があったことを認めて自問自答し、気持ちを奮い立たせていたということだ。
グアム戦も前半はいいところがなかった。3ポイントを4本打って決めることができずに前半無得点。ファウルも2つ重ねてしまった。リズムを取り戻したのは後半だ。第3クォーターに3ポイントを1本沈めたあと、リバウンドを奪ってそのままボールをプッシュして速攻に持ち込んだ。後半、こうしたペイントアタックが増えたことも相手を突き放せた要因だろう。
試合後、吉井はグループフェーズ3試合を厳しめに振り返った。
「チームとしては良かったり、良くなかったり、もっといいバスケができると思います。自分たちで首を締めているというか、もっと遂行できるところがあります。選手同士でも、ホットになった選手(シュートが当たっている選手)を使い過ぎていて、もっと幅を効かせたバスケをすればいいものの、そこに固執してしまっていた。結局そういうバスケって、勝ち上がっていくにつれて苦しい展開になってしまう。もっと上手いやり方があると思うので模索しているところです」
確かに吉井の言う通りである。イランなどの強豪と対戦した場合、日本の戦い方に再現性があるかといえば見られず、ホーキンソンは攻守の軸になっているものの、富永に当たりが来ないときは、誰でどう攻めるかが明確になっていない。吉井は自身のパフォーマンスに関しても反省しきりだった。
「この大会では3番(SF)をしたり、4番(PF)をしたりの起用なので、僕自身がポジションにとらわれているところがあるので、もっと柔軟にやれればと思います」
また、3番でも4番でも、どちらで出場しても、自身のディフェンスでの役割が多くなっていることにも言及した。
「このチームはディフェンスで助けてあげないといけない選手が多いので、そこが難しいところではあります。助けてあげなきゃいけない選手に関してはもっとできると思いますし、僕自身ももっとうまく助けたり、お互いが向上していかなければならないです」
■ここから先は吉井のリーダーシップが必要となる
代表経験豊富なメンバーの一人としてチームをけん引できるか[写真]=fiba.basketball
準々決勝進出決定戦の相手はA組3位のレバノンになった。日本戦のあとが韓国対レバノン戦だったため、対戦相手が決まる前は「韓国と対戦したい」と言っていた吉井。その理由を聞くと「韓国との強化試合で2戦ともかなりの点差で負けたのでやり返したい」とのことだったが、インタビューの最後には「でも、どっちが来てもいいです。自分たちのやるべきことをやるだけです」と決意を新たにした。
決勝トーナメントでは、間違いなく吉井の攻守に渡る活躍が必要だ。自身のパフォーマンスを見つめ直し、チームの改善点を的確に洗い出せる吉井の経験値は、現チームにおいて欠かすことができない存在である。チームはイラン戦の敗戦を払拭して前進している。ここから先のビッグゲームでは、吉井がこれまでの反省や改善点をチームメートに伝えていくリーダーシップが求められる。そうした自身を高めていくチャレンジこそが、チームを勝たせるカギとなるはずだ。
取材・文=小永吉陽子