全米150校に拡大の教育スタートアップが破産し突然の学校閉鎖、創業者は新たな道へ?(Forbes JAPAN)

今からわずか3年前、Higher Ground Education(HGE。ハイヤーグラウンド・エディケーション)は自らを「教育の未来」と称していた。プロモーション動画では、「教育をゼロから再設計する」という使命を掲げ、「厳格さと個別化」の融合を全150校のネットワーク全体に適用していると紹介していた。しかし現在、それらの学校の大半は差し押さえを経て閉鎖され、同社は事前調整済型のチャプター11(連邦破産法第11条)を申請した。 ■「教育の未来」を掲げた教育スタートアップとして誕生 レイ・ガーンは、2004年にトロント大学で心理学の学士号を取得して卒業し、カリフォルニア州南部にあるモンテッソーリ学校チェーン「LePorte Schools」に就職した。2010年には同チェーンのCEOとなり、彼自身の言葉によれば「創成期の家族経営事業」を「北米最大のモンテッソーリ・ネットワーク」に育て上げた。彼は、この時期に妻のレベッカとも出会っている。 モンテッソーリ教育とは、イタリアの医師で教育者であるマリア・モンテッソーリによって、20世紀初頭に提唱された教育法だ。子ども自身の「自発性」「独立性」「内発的な成長欲求」を尊重し、教師は指導者ではなく「環境を整える案内人」として関わる。年齢をまたいだ混合クラスや、自己選択型の学習活動、専用教材などを特徴とし、特に幼児教育分野で導入されている。 2016年、ガーン夫妻はテキサス州オースティンでHGEを設立した。ガーンは、同社の使命を「モンテッソーリ教育を現代化し、乳児期から高校までその原則を広げること」と語っていた。レベッカは最高プログラム責任者兼法務責任者を務めた。 ■ベンチャーキャピタルを魅了した急成長 HGEは新たな学校の開設と買収によって成長した。同社は、米国内および海外のモンテッソーリ学校ネットワーク「Guidepost Montessori」の親会社であり、後に「Guidepost Academy」に改称した「Academy for Thought and Industry」も傘下に持っていた。この学校は、歴史や古典文学に重点を置くリベラルアーツ教育と、自主性や主体性を重んじるモンテッソーリ教育の統合を謳っていた。 HGEは、ベンチャーキャピタル(VC)の投資家の注目を集めた。同社は、モンテッソーリ教育の教師認定プログラム「MACTE認定」を作り、Tinycare、Neighborschools、FreshGrade、さらにテック系マイクロスクールの新興企業AltSchoolの残存事業を買収した。サンフランシスコ拠点のAltSchoolは2015年当時には絶賛されたが事業に失敗し、2019年にはフォーチュン誌に「教育系スタートアップはどうやって2億ドル(約294億円)を無駄にしたか」と報じられていた。 ■モンテッソーリ教育のシンクタンクを立ち上げ 2022年、ガーンは「モンテッソリウム(Montessorium)」と名付けたモンテッソーリ教育のシンクタンクを立ち上げると発表した。その後このシンクタンクは、「成熟したモンテッソーリ」と称する教育事業としての側面を持つようになった。これらの事業は、オースティンのほかの2人の起業家が率いている。 その1人がマット・ベイトマンで、彼もLePorte Schoolsの出身(ガーンは以前の学校から複数の仲間を連れてきたようだ)であり、かつてHGEの教育担当副社長を務めていた。現在、彼のLinkedInのプロフィールには「哲学者(自営)」と記載されている。 もう1人は教育系起業家マッケンジー・プライスで、自分のオンラインスクールのネットワークを他州へ拡大しようとしてきた。彼女の代表的な事業「2アワーラーニング」は、コンピューター化された家庭教師によって、生徒が1日わずか2時間で全教科を修了できると謳っている。 モンテッソリウムは、その事業を「モンテッソーリ教育のあらゆる実践と教材一式を、最先端の個別学習ソフトウェア・プラットフォームと融合させること」と謳っている。 HGEの学校ネットワークは、2018年に12校だったが2022年に101校、2024年には150校へと拡大を続けていた。しかし、同社は苦境に陥っていた。

Forbes JAPAN
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