ロシア軍のドローンがトルコに侵入する事件が3連続で相次ぐ(JSF)
12月15日のトルコ空軍F-16戦闘機による侵入ドローン撃墜から、最近一週間でトルコに対するロシア軍のドローン侵入事件が相次いでいます。このうちトルコ内務省は12月19日にコジャエリ県イズミット市チュブクルバラ村で発見された「赤い星のマークが付いた無人機」の残骸について、ロシア軍の無人偵察機オルラン10(Орлан-10)の可能性が高いとしています。また12月20日にバルケスィル県マンヤス郡サルール村で発見された無人機は形状からロシア軍の無人偵察機メルリンVR(Мерлин-ВР)である可能性が濃厚です。
トルコへのロシア軍ドローン侵入事件
- 12月15日(月)、不明ドローンが黒海からトルコに侵入、F-16戦闘機が撃墜
- 12月19日(金)、ロシア軍のオルラン10無人偵察機の残骸を発見
- 12月20日(土)、ロシア軍のメルリンVR無人偵察機の残骸を発見
- 露ドローン撃墜:チャンクル県チャンクル(Çankırı)とアンカラ県エルマダグ(Elmadağ)の間でF-16戦闘機が撃墜
- オルラン10発見:コジャエリ県イズミット市チュブクルバラ村(Kocaeli İzmit Çubuklubala)
- メルリンVR発見:バルケスィル県マンヤス郡サルール村(Balıkesir Manyas Salur)
①首都アンカラの北東60km付近。
②最大都市イスタンブールの東南東90km付近。
③最大都市イスタンブールの南西130km付近。
※メルリンVR(Мерлин-ВР)は英語読みではマーリンVR(Merlin-VR)
トルコ国防省:無人機を撃墜した声明
※2025年12月16日のこの時点でトルコ国防省は「制御不能になった無人機」による偶発的な事件としており、ロシア軍のシャヘド自爆無人機ないしガーベラ囮無人機の迷走と分析していた。撃墜による破壊が激しく機種は判別できず。
トルコで発見されたロシア軍のオルラン10無人偵察機
※トルコ当局はロシア軍のオルラン10無人偵察機と分析。ロシア軍による意図的な偵察行動だった可能性が浮上するも、ロシア占領下のヘルソン南西部からウクライナのオデーサに偵察に向かった機体の迷走の可能性がまだ残っていた。
トルコで発見されたロシア軍のメルリンVR無人偵察機
※約一週間で3機目のロシア軍無人機トルコ侵入事件の発覚。機体形状からメルリンVRでほぼ間違いない。短期間で3連続となると迷走による偶発的事件とは考え難くなる。
ロシア軍の無人偵察機オルラン10(Орлан-10)とメルリンVR(Мерлин-ВР)は非武装の偵察用の小型固定翼無人機で、高価な衛星通信システムは搭載しておらず、見通し線通信(LOS : Line-of-Sight)を行います。過給機の付いていないガソリン燃料のレシプロエンジン機体の限界飛行高度は2000~3000メートルですが、この条件での見通し線通信での最大通信距離150~200キロメートル前後がこのタイプの無人機の作戦行動半径です(それ以上の遠距離は地平線の陰に隠れて通信できなくなる)。しかしクリミア半島から今回のトルコ無人機侵入事件の場所まで500キロメートル以上あるので通信圏外です。ただし滞空時間は10時間以上飛べる性能があり、飛ぶだけなら1000~2000キロメートルの飛行が可能です。
するとトルコへの侵入機は迷走したのか、あるいは通信を行わずプログラム飛行で固定地上目標を撮影して帰還する偵察飛行だった可能性があります。しかし一週間で3機が連続で侵入した以上は、迷走とは考え難いようにも思われます。
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