「たたえ合いませんか」と宣誓した慶応の主将が大敗直後に紡いだ言葉

2025年7月18日18時56分

 (18日、第107回全国高校野球選手権神奈川大会4回戦、日大7―0慶応=七回コールド)

 2年前に全国制覇を経験した慶応の夏は、七回コールドの完敗で終わった。

 主将の山田望意(のい)は七回に併殺に打ち取られ、最後の打者になる。目を真っ赤にしたまま取材に応じ、悔しさをにじませた。

 「大好きな高校野球がもうできなくてつらい」

 しかし、その次に出てきた言葉は、相手へのエールだった。

 「日大は良いチームだった。自分たちの分までがんばってほしい」

 7日にあった開会式で、選手宣誓を務めた。横浜スタジアムに集った約170チームの前で、こんな提案をしていた。

 「今大会中、お互いの好プレーに対して拍手や歓声を送り、たたえ合うことにしませんか」

 高校野球ではしばしば、相手をけなすようなヤジがベンチから聞こえてくる。スタンドの客が、心ない言葉を飛ばすこともある。

 山田は宣誓に込めた思いを明かす。

 「高校野球はほかの競技よりも規模が大きくて、日本全国に色んなチームがある。色んな選手がいる。その中でみんなが頂点をめざす高校野球は楽しい」

 真剣勝負をする相手であっても、決して「敵」ではない。同じ野球をがんばった仲間としてリスペクトし合う。教育の一環である高校野球の理想の姿だと思う。

 慶応は今大会、4試合を戦った。大差で敗れた相手チームが、慶応のプレーに拍手をしてくれたことがあった。山田は試合終了後のあいさつで「がんばってくれよ」と言葉をもらうたびに、力になったという。

 敗れたこの日、今度は自分たちが日大に拍手を送った。

 2年前の夏、慶応の丸刈りを強制しない方針が注目された。当時のメンバーだった丸田湊斗(現・慶大)も、山田と通ずる言葉を語っていた。

 「坊主も一つの形だし、僕らの髪形も一つの形。別に僕らが主流になる必要はなくて、もう『なんでもいいじゃん』っていう状態にしたい」

 日本一を本気で狙う強豪、文武両道をめざす進学校、連合チームで出場する高校。1勝、ヒット1本の意味はそれぞれ異なる。この全国選手権大会は、多様な背景、目的を持った高校生全員が主役なんだ。コールド負けの直後に主将が紡いだ言葉から、そんなメッセージを受け取った。=平塚(大宮慎次朗)

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