JPモルガン、今年の米リセッションを予想-トランプ関税が雇用抑制
米銀JPモルガン・チェースは、米トランプ政権が今週発表した関税の影響を考慮した結果、米経済が今年リセッション(景気後退)に陥ると予測している。
「われわれは現在、関税の重みで実質国内総生産(GDP)が縮小するとみており、通年(第4四半期対第4四半期)の実質GDP成長率予想を従来のプラス1.3%からマイナス0.3%に下方修正した」と同行のチーフ米国エコノミスト、マイケル・フェローリ氏が4日の顧客向けリポートで説明した。
フェローリ氏はさらに、「予想される経済活動の縮小は雇用の抑制につながり、時間の経過とともに失業率は5.3%まで上昇する見通しだ」と述べた。
トランプ大統領は2日、世界の貿易相手国に対する大規模な関税を発表。S&P500種株価指数は11カ月ぶりの安値を記録し、週末までの2営業日で5兆4000億ドル(約793兆円)の時価総額が消失した。
関税発表以降、他の銀行も今年の米経済成長予想を引き下げている。3日にはバークレイズが、2025年は「リセッションと合致する」形でGDPが縮小するとの予測を示した。
4日にはシティグループのエコノミストが今年の成長率予測を0.1%に引き下げ、UBSのエコノミストも0.4%に下方修正した。
UBSのチーフ米国エコノミスト、ジョナサン・ピングル氏はリポートで、「われわれの予測期間において、米国への輸入は20%余り減少するとみており、その大部分は今後数四半期のうちに起きる。これにより、GDPに占める輸入の比率は1986年以前の水準に戻るだろう」と分析。「今回の貿易政策措置の強硬さを踏まえると、30兆ドル規模の経済に大きなマクロ経済的調整が行われることを意味する」と指摘した。
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「スタグフレーション的予測」
フェローリ氏は連邦準備制度が6月に政策金利の引き下げを開始し、その後は来年1月までの各会合で利下げを継続すると予想。現在4.25-4.5%のフェデラルファンド(FF)金利が2.75-3%まで引き下げられるとみている。
そうした利下げは、現在の2.8%の基調的インフレ率が年末までに4.4%に上昇するとの予測にもかかわらず行われる見通しだという。
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「もしわれわれのスタグフレーション的予測が実現すれ、米金融当局者にとってはジレンマとなるだろう」とフェローリ氏は指摘。「われわれは労働市場の弱さが最終的に左右すると考えており、特にそれが賃金の伸び鈍化を招く場合、価格と賃金のスパイラルは発生しないと、金融当局は自信を強めるだろう」と続けた。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は4日、政策金利の調整については「急ぐ必要はないと感じている」と述べた。この発言前に米労働統計局が発表した3月の雇用統計では、雇用者数の堅調な伸びが示される一方、失業率は4.2%とやや上昇した。
先物市場の動きは、投資家が年末までに1ポイントの米利下げを織り込んでいることを示している。
原題:JPMorgan Says Trump’s Tariffs to Send US Into Recession (3)(抜粋)