EUが新たな対ロシア制裁、27年からLNG禁輸-中国・香港企業も標的

欧州連合(EU)は、ロシアのエネルギーインフラを標的とする新たな制裁パッケージを採択した。ウクライナへの侵攻を続けるロシアの戦争遂行能力を弱体化させるため、米国による追加制裁措置と歩調を合わせた。

  EUの輪番議長国を現在務めるデンマークによると、今回の措置で2027年からロシア産液化天然ガス(LNG)の輸入を禁止する。

  また、ロシアの大手石油会社2社との取引禁止措置を一段と厳格化するほか、現行制裁の抜け道となってきたロシアの「シャドーフリート(影の船団)」と呼ばれる船舶117隻を制裁対象に追加した。 

  ロシアに対するEUの制裁パッケージは、今回で19回目となるが、オーストリアやハンガリー、スロバキアが異議を唱えたことで数週間にわたり承認が滞っていた。

  採択は、米国がロシアの石油大手ロスネフチルクオイルに対する制裁を発表した翌日に行われた。

ウクライナのゼレンスキー大統領(左)とコスタ欧州理事会常任議長(23日、ブリュッセル)

  ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、ブリュッセルで欧州連合(EU)首脳会議に加わる直前に記者団に対し、EUの「第19次対ロシア制裁は極めて重要だ」と評価。「一方で、米国の制裁も極めて重要だ。世界の他国に対し、制裁への参加を促す適切なシグナルになる」と語った。

  ゼレンスキー氏はまた、「停戦は当然可能で、われわれ全員が停戦を必要としていると思う」と述べ、「だが、停戦に向けロシアに圧力を強める必要がある」と続けた。

  EU加盟国首脳も、トランプ政権が打ち出した制裁は圧力強化の助けになるとの見方を示した。

  リトアニアのナウセダ大統領は記者団に対し、「米国の言い回しは最近ずっと強力になっていたが、この決定はゲームチェンジャーだ。ロシア経済に極めて強力な打撃を及ぼすだろう」と述べた。

  EUが採択した今回の制裁パッケージは、ロシアのエネルギー業界だけでなく、中国と香港の12社を含むロシアの制裁逃れを助けていた45の法人も標的にする。これに対し、中国は反発した。

  中国外務省の郭嘉昆報道官は北京での記者会見で、「EUはロシア関連の問題を口実に、中国企業に対して違法で一方的な制裁を繰り返している」と非難した。

  EUの制裁では、ロシアの国民や居住者、法人に対する暗号資産サービスの提供を禁止していることも目を引く。暗号資産を使ったロシアの資金調達を取り締まる狙いだ。

  さらに、ロシアの中古航空機や船舶に対する再保険を禁止し、ロシアの銀行5行とは全面的に取引を禁じる。また、ロシアの電子決済システムや、ベラルーシやカザフスタンなど第三国の銀行に対しても、取引禁止を拡大する。

  EU議長国であるデンマークのラスムセン外相は23日の声明で、「今回の制裁は実際の影響を持ち、ロシア経済に打撃を与える」と述べた上で、「ロシアは、ウクライナに対する違法な侵略戦争の資金調達がますます困難になる」と強調した。

原題:EU Adopts New Sanctions Package That Targets Russian Energy (3) (抜粋)

(第3段落の制裁対象に追加されたシャドーフリート隻数を訂正します)

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