【米国市況】S&P500上昇、終盤失速も終値で6300超え-147円台前半
21日の米国株市場ではS&P500種株価指数が小幅高。複数の決算発表が週内に予定される中、市場は関税リスクを意識しつつ、企業業績の底堅さの兆候を探っている。円はニューヨーク時間、対ドルでの上げを拡大した。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6305.60 8.81 0.14% ダウ工業株30種平均 44323.07 -19.12 -0.04% ナスダック総合指数 20974.17 78.51 0.38%S&P500種は終盤に上げを縮めて0.1%高で引けたが、終値として初めて6300を上回った。原油需要に対する懸念がくすぶる中、エネルギー株は原油価格の下落につられる形で値下がりした。大型ハイテク7銘柄で構成される「マグニフィセント・セブン指数」はアウトパフォーム。テスラとアルファベットは今週決算を発表する。人工知能(AI)関連の投資状況に注目が集まる中、市場の期待は今回も大きい。エヌビディアは下落した。
市場は関税関連の報道にも引き続き注目している。ホワイトハウスのレビット報道官は、トランプ大統領が8月1日までに関税に関するさらなる書簡を出す可能性があると発言。一方、この期限前にさらなる通商合意が成立する可能性もあるとも述べた。
ミラー・タバクのマット・メイリー氏は、トランプ政権が今後、関税問題にこれまで以上に強硬姿勢を取ることが一段と明確になりつつあると指摘。よって株式市場がこの要素を現在織り込んでいるのかどうかを見極めることが重要だとの見方を示した。
「今週から本格化する決算シーズンでは、ガイダンスがいつも以上に重要になる」とメイリー氏。「現在ウォール街の一部で示されている株価目標に相場が達するには、そのガイダンスが利益見通しの極めて大幅な上方修正につながる必要がある」と述べた。
ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズのクリストファー・ハーベイ氏は、米大手テクノロジー企業の強さが今後も続き、S&P500種は年後半に2桁の上昇率が見込めると分析。
ブルームバーグ・サーベイランスのインタビューでハーベイ氏は、「いま目にしているのは、勝者がさらに勝ち続けるという構図だ」とし、「超大型企業はより高い利益率を維持し、市場シェアを拡大させている。人工知能(AI)には真の意味での長期トレンドが存在し、それは今後も続いていく」と述べた。
4-6月(第2四半期)の決算シーズンは順調な滑り出しとなり、消費の強さが企業利益の底堅さを支えている。ただS&P500種は過去最高値を相次いで更新しており、今後12カ月の予想に基づく株価収益率(PER)は22倍と、失望を許す余地はほとんど残されていない。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブハーディ氏は「株式相場は一時的に下げ局面となる可能性はあるものの、強気相場は依然継続しているとみている」と指摘。「S&P500種の2026年6月の目標水準は6500で維持しており、市場に参入する機会としてボラティリティーを利用することを推奨する」と語った。
国債
米国債相場は上昇(利回りは低下)。欧州債の上昇に連れ高となった。米政権による上乗せ関税発動の期限が迫る中、安全資産としての国債の需要が高まった。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.94% -4.5 -0.89% 米10年債利回り 4.38% -4.0 -0.90% 米2年債利回り 3.86% -1.3 -0.33% 米東部時間 16時47分10年債利回りは一時約6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の4.35%と、11日以降で初めて200日移動平均を割り込んだ。
ミシュラー・フィナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディガロマ氏は、米国では目立った材料が乏しい中、米国債市場はユーロ圏の国債の上昇にほぼ追随していると分析。10年債利回りは4.25%に近づく可能性もあると述べた。
米国と欧州連合(EU)の当局者は今週も通商協議を続けているが、これまでのところ目立った進展がなく、8月に30%の関税が発動されるリスクが高まっている。
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XTBの調査ディレクター、キャスリーン・ブルックス氏は「関税リスクや8月1日の期限に対する懸念が、市場におけるリスクオフの地合いを強めている」と指摘。「これにより、株式から米国債のような安全資産へと資金が一部シフトしている」と述べた。
為替
外国為替市場ではドルが下落。先週の上昇分の一部が巻き戻されたほか、米国債利回りの低下にも連動した。参院選を受けて東京時間に上昇していた円はニューヨーク時間に上げを拡大し、一時1%余り上昇した。
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為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1200.52 -5.81 -0.48% ドル/円 ¥147.36 -¥1.45 -0.97% ユーロ/ドル $1.1694 $0.0068 0.58% 米東部時間 16時47分米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がトランプ政権から圧力を受け続ける中、市場は政策金利の見通しに引き続き注目している。
JPモルガン・アセット・マネジメントのボブ・マイケル氏はブルームバーグテレビジョンで、「政策金利を当面据え置き、関税の動きがどう落ち着くのかを見極め、その後にインフレへの影響、そして労働市場の状況を確認するというFRBの姿勢は正しい」と語った。
円は1ドル=147円台前半で推移。一時1.2%高の1ドル=147円08銭を付けた。20日に行われた参院選では自民・公明の連立与党が大きく議席数を減らし、非改選を含む参院全体で過半数を割り込んだ。石破茂首相は21日午後に行われた記者会見で、改めて続投の意思を示した。
原油
ニューヨーク原油相場は小幅続落。米国と貿易相手国・地域との交渉が膠着(こうちゃく)状態にあるほか、欧州連合(EU)による新たな制裁がまだロシアのエネルギー輸出を落ち込ませるに至っていないため、原油需給への懸念がくすぶっている。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は先週1.6%下落していた。この日は1バレル=67ドルをわずかに上回る水準で取引を終えた。
欧州連合(EU)加盟国の大使らは、トランプ米政権と貿易協議で合意に至らなかった場合に備え、対応策の計画策定に向けて今週にも会合を開く見通しだ。
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EU加盟国は先週18日、ロシア産原油の上限価格引き下げや、ロシア国営石油会社ロスネフチが出資するインドの大規模製油所を対象に含めた新たな制裁パッケージを承認した。しかし、ロシア産ディーゼル油への規制は、来年1月まで全面的には発効しない見通しだ。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「材料が乏しい中、相場は下げやすい展開となる可能性がある」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は、前週末比14セント(0.2%)安い1バレル=67.20ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は0.1%下げて69.21ドルで引けた。
金
金スポット相場は続伸し、約1カ月ぶりの高値を付けた。重要な経済指標の発表がない中、ドル安や国債利回りの低下が金相場を押し上げた。
スポット価格は一時1.5%上昇。利息の付かない金は通常、ドル下落時や金利低下の局面で投資妙味が増す。
TDセキュリティーズによると、マクロファンドはこれまでに構築していた金に対するショートポジションを巻き戻し始めている。
同社の商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は金にはさらなる上昇余地があると指摘。貿易戦争や利下げ再開、スタグフレーション的な環境、中央銀行の信認に対する挑戦などが材料だとリポートで述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時54分現在、前週末比1.3%高の1オンス=3394.64ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は48.10ドル(1.4%)上げて3406.40ドルで引けた。
原題:Stock Rally Wanes, But S&P 500 Closes Above 6,300: Markets Wrap(抜粋)
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