車内に焼酎の瓶2本…3人の命奪った“飲酒運転”ドライバーのウソを暴いた裁判所が危険運転致死傷の上限・懲役20年を言い渡した理由(FNNプライムオンライン(フジテレビ系))

中央分離帯を越え突然飛び込んできた巨大なトラックが、2歳の男の子とその父親、祖父という3世代の家族の命を一瞬にして奪った。 【画像】危険運転致死傷罪の上限、懲役20年を裁判所は言い渡した トラックの運転席のそばには、焼酎の瓶が転がっていた… 飲酒運転で3人を死なせたとして危険運転致死傷の罪に問われた運転手の男は、法廷であらゆる証拠を前にしても、飲酒を否定し続けた。 重大な事故を引き起こし、飲酒の事実をかたくなに認めない男に対し、裁判所は危険運転致死傷罪の上限である懲役20年を言い渡した。法廷で明らかになったのは、事故に至る過程での、「常軌を逸した」運転だった。 ◆2歳の男の子、父、祖父の3人が死亡 2024年5月、猛スピードのトラックが群馬県伊勢崎市の国道の中央分離帯を越えて2台の車に衝突した。この事故で、衝突された車に乗っていた2歳の塚越湊斗ちゃん、父の塚越寛人さん(当時26)、祖父の塚越正宏さん(当時53)が死亡し、別の車に乗っていた女性もケガをした。 トラックを運転していたのは、元トラック運転手鈴木吾郎被告(71)。 検察は、飲酒のため正常な運転が困難な状態でトラックを運転したとして、鈴木被告を危険運転致死傷の罪で起訴したが、鈴木被告は酒を飲んでいないと、飲酒を否定し続けた。 ◆アルコール検出されず 判決によると、事故が起きる1時間半程前に、鈴木被告は運送会社でアルコール検査を受けたが、呼気からアルコールは検出されなかった。また会社敷地内でエンジンを始動して出発準備を行ったが、その間、運転席に設置されたドライブレコーダーには、飲酒している様子は記録されていなかった。 ◆事故12分前:急ブレーキ 事故発生の28分前にトラックを運転して会社を出発。その後16分間は、時折時速90キロ程度まで加速する場面があったが、おおむね車線や信号表示に従い、前方車両との車間距離も保たれていた。 しかし事故発生の12分前、隣の車線を走っていた軽自動車が車線変更をすると、時速約70キロで運転していた鈴木被告は急ブレーキを踏んだ。車内では急ブレーキ時に作動する警報が鳴り響いていた。 ◆事故2分前:「ばっかやろう」 事故発生の2分前、鈴木被告のトラックの前方に、黒い乗用車Aが割り込むように進入した。その際鈴木被告は「ばっかやろう」と声を出している。 黒い車Aは黄色信号の交差点を抜けて走り去ったが、鈴木被告のトラックは赤信号で停止した。 トラックが停止中には、別の黒い車Bが交差点に進入して、車Aの後を追うように走って行った。 ◆事故直前:猛スピードで追跡 鈴木被告は信号が赤であるにも関わらずトラックを発進させ、28秒間で時速90キロまで加速した。 その先の交差点には、車Bが右折レーンで停車していた。 鈴木被告は時速90キロを維持したまま右にハンドルを切って右折レーンに進入。その直後に左にハンドルを切りながら車Bに向かって声を発した。鈴木被告の顔は車Bに向けられていた。 その約1秒後、右側タイヤが中央分離帯に接触してトラックは制御不能となり、中央分離帯を越えた。そして、3人の命が失われた。 ◆車内からは焼酎の空き瓶が… 鈴木被告も事故で負傷したため病院に搬送されたが、その際に3回に渡り採血された。 1回目は1デシリットルあたり102ミリグラムのエタノールが検出。2回目は96ミリグラム、3回目は27ミリグラムのエタノールが検出された。 さらに、鈴木被告のトラックの運転席後方にある寝台スペースに置かれたビニール袋には、まぐろのたたきのラベル、柏餅の空き容器とともに、アルコール度数20%、220ミリリットルの焼酎の空き容器1本と、それと同様の外観の空き容器1本が発見された。 ◆飲酒運転と認定 鈴木容疑者は法廷で、飲酒については一貫して否定してきた。 しかし判決では、車内から発見された焼酎の空き瓶について「仕事で運転するトラックの車内に焼酎のラベルが付いたままの空き容器を持ち込む合理的な理由は考え難く、当該焼酎を飲んだ後に、その他のごみと一緒にまとめて置いておいたと考えるのが最も自然」と判断。血中アルコール濃度から「事故前に焼酎2本を飲んだと認められる」と認定した。 飲酒の瞬間は会社の防犯カメラやドライブレコーダーには映っていなかったが、鈴木容疑者は事故前から200ミリリットルの焼酎を10秒程度で飲み終えていたとして、カメラの死角などで焼酎を飲む機会は十分あったと判じた。 そして事故当時の様子については、「高濃度のアルコール」を体内に入れていたとして、「車の運転に重要な分割注意能力や判断能力を司る前頭葉の機能が強く抑制・障害された状態だった」と認定した。 ◆車AとBを誤認 判決は時速90キロで中央分離帯に衝突して事故を起こした状況も詳細に検討した。 事故前に時速70キロで運転中に急ブレーキで停止した点について、「注意力や反応速度が低下していた」と認定。 さらに、割り込んできた車Aに怒りの感情を持ちながら、その後に現れた車BをAと誤認したとも認定した。 色が同系である以外、車高や形は異なっているにも関わらず、AとBを誤認した事などから、判決は「被告人の認知、判断能力が大きく低下していたことを強く疑わせる」と判断している。 ◆常軌を逸した行動 そして事故直前に時速90キロで減速もせずに中央分離帯に向かった走行について、「自らの生命への危機意識すら欠落したともいうべき常軌を逸した行動に出ている」と指摘。 「このような常軌を逸した行動に出た要因について、アルコールの影響があったとしなければ説明が極めて困難」と判断した。 以上の事から、アルコールの影響により、正常な運転が困難な状態であった、つまり危険運転致死傷の罪に該当する認定したのだ。 ◆なぜ上限の20年となったのか 裁判所は量刑を判断するに際し、2歳の幼児を含む3人の尊い命を失わせた被害について「極めて甚大」と断じた。何の落ち度もなく亡くなった方の無念や、残された遺族の悲嘆にも寄り添い、「厳しい処罰を望むのは当然」とした。 その上で、「飲酒をしたいという身勝手な欲望のままに」飲酒運転を繰り返し、事故を起こしたことについて、「起こるべくして起きた事故」と認定。「あおり運転・威嚇行為をしたことで本件事故を起こした経緯にはより一層の非難が向けられるべき」と厳しく断じた。 さらに、血中から高濃度アルコールが検出されているにも関わらず飲酒を否定し続けた事を「自らの犯した罪に真摯に向き合って反省しているとは言いがたい」と断じ、「法定刑の上限から刑期を減じる程度の事情があるとは評価できない」として、危険運転致死傷の罪の上限である懲役20年を言い渡した。

プライムオンライン編集部

FNNプライムオンライン(フジテレビ系)
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************

関連記事: