フィリピンで台風の大被害、死者少なくとも114人に 大統領が「国家災害」宣言
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フィリピン中部に4日、今年最大級の台風25号(カルマエギ)が上陸し、大きな被害を引き起こした。当局は6日、少なくとも114人が死亡、数十万人が避難を余儀なくされていると発表。フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、国家災害事態を宣言した。
マルコス大統領は、「10~12の州が影響を受ける見込みだ。これほど多くの州が、これほどの規模で巻き込まれたなら、国家災害と言える」と現地メディアに話した。
国会災害事態を宣言することで、政府機関は緊急資金を使いやすくなり、人々に不可欠な物資やサービスを迅速に調達・提供することが可能になる。
台風25号は、フィリピンで最も人口の多いセブ島の中部の町全体など、広い地域で洪水を引き起こした。当局によると、死者のうち71人が同島で確認されている。行方不明は127人、けが人は82人に上っている。
AFP通信によると、セブ州当局は、政府機関の市民防衛局の発表には含まれていない死者28人が出ているとしている。
救援活動では、派遣された軍用ヘリが、セブ島の南にあるミンダナオ島で墜落した。公式の死者数には、このヘリに搭乗していた乗組員6人が含まれているという。
市民防衛局のラファエリート・アレハンドロ副局長は、現地ラジオ局の取材で、「課題は道路上のがれきと車両だ。我々が片付けるべきものが山ほどある」と話した。
また、40万人近くが台風の進路から避難したと述べた。
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現地で「ティノ」と名付けられたこの台風は4日にフィリピンに上陸。勢力は弱まったものの、風速約36メートル以上の強い風をもたらし続けた。
6日午前0時半ごろ、フィリピンを抜け、ヴェトナム中部へと進んでいる。ヴェトナムは最近、記録的な大雨に見舞われ、多数の死者が出たばかり。
台風はその後、勢いを強めており、最大風速は秒速約41~43メートルとなっている。ヴェトナム中部には7日朝に上陸すると予想されている。
タイもまた、台風の影響に備えている。現地当局は、鉄砲水、土砂崩れ、河川の氾濫の恐れについて警告を発している。
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セブ島では住宅地で甚大な被害が出ている。小さな建物が多数流され、洪水が引いた後は厚い泥が残されている。救助隊はボートを使い、家の中に閉じ込められた人を救出している。
被災地の映像には、屋根の上で避難する人々や、通りを流される車やコンテナが映っている。
セブ州のパメラ・バリクアトロ知事は、「セブの状況はこれまでにまったくなかったものだ」とフェイスブックに投稿。「風が危険だと予想はしていたが(中略)本当に人々を危険な状況に置いているのは水だ」、「洪水は壊滅的だ」とした。
セブ市に住むドン・デル・ロサリオさん(28)は、暴風雨が吹き荒れるなか、上階に避難したとAFP通信に説明。「28年間ここにいるが、今回のはこれまで経験した中で圧倒的に最悪だ」と話した。
フィリピンは毎年、平均20回ほど、暴風雨や台風に見舞われている。
その前の数カ月にも、異常なほど雨の多いモンスーンシーズンによって広い範囲で洪水が発生していた。こうしてなかで、治水システムが汚職のために完成せず、標準以下になっているとして、人々が怒りの声を上げ、抗議行動を起こした。
セブ島は9月30日に沖合で発生したマグニチュード6.9の地震でも、多数の死傷者が出るなど大きな被害を受けた。