米国防省にハブられたAnthropic。同情の後押しでClaudeがChatGPT抜く
3月第一週、Apple(アップル)Appストア無料アプリ売上首位の座をChatGPTから奪い取ったClaude(クロード)。
名もないAIアプリから一変し、一躍注目を浴びています。
どうして急に人気なの?
これだけ騒がれた背景にあるのは、米国防総省との2兆ドルの契約更新をめぐるいざこざです。
国防総省がClaude開発元Anthropicに対し 「合法的な軍事用途」すべてでAIを使えるよう安全ガードレール撤廃を求めたのに対し、Anthropicは「国民総監視システム、およびAIの自立判断で人が殺せる遠隔兵器」の2つについては「法整備が追いついてない。使う前に合法かどうかを国会で審議すべき」だと突っぱねて話し合いが硬直化。
2月27日金曜に交渉が決裂し、ピート・ヘグセス国防長官が「シリコンバレーの企業倫理をアメリカ国民の命より重んじる軽率な行為だ」「国防上のサプライチェーンリスクに指定して米軍と取引関係のある企業がどこもAnthropicと取り引きできないようにしてやる」とX上で最後通牒を突きつけ、「敵国ならともかく一民間企業をリスク指定するなんて聞いたことない」「やりすぎではないか」と騒がれている件です。
トランプ大統領も「国防省に楯突いて憲法より利用規約を優先するとはAnthropicの左翼のお花畑(The Leftwing nut jobs)の致命的ミスだ」とカンカン。
でもAnthropicは一歩も譲らず、同じ金曜の声明で「今の最先端のAIモデルは完全自律制御の兵器使用も現実味を帯びているほど安定してきている」「国民大量監視システムは基本的人権に違反する」と理解を求めました。
もちろん「はいそうですか」と国防省が頭を縦に振るわけもなく、長官は「国防省ではこれから6か月かけてAnthropicのサービスの利用をやめる」と発表。今月1日のイラン攻撃でも大っぴらにClaudeを使ってたりします。
崩れる1社体制
米軍の機密を扱うシステムで利用を認められたAI企業は、これまでAnthropicただ1社でした。
今年1月に、米軍がベネズエラ大統領を拘束したとき使われたのもClaude。最新型AIが実戦で使われた初の事例として世界に衝撃を与えましたが、あれについてはAnthropicもあとで知ったようです。
武器や監視での使用を禁じる同社のガイドラインが全然守られていないじゃないかってだいぶ言われていたので、その延長で白黒はっきりさせようって流れになったのは想像に難くありません。
間隙に乗じてライバル参入
それだけだったら話し合えば済むことかなとも思うんですが、不思議なのは、Anthropicがブラックリストに入れられた途端、競合のOpenAIから、軍機密システムへの技術供与で米国防省と契約を締結した旨が発表されたことです。
「ああ、OpenAIは合法ならなんに使ってもOK、企業は口出ししません!って譲歩したのね…」と普通は思いますよね。
そうじゃないんです。OpenAI曰く、Anthropicが最後までこだわり抜いた「大量監視と完全自律型兵器」への利用禁止を含めたレッドライン、その線引きはそのままそっくり契約に盛り込んだらしいのです。
なぜOpenAIだと利用制限OKで、なぜAnthropicだと利用制限アウトなのか、基準は明言されていません。
Anthropicに同情する人たちがOpenAIボイコット
それじゃあんまりだってことで、巷ではChatCPTからClaudeに乗り換える動きも出ています。
まあ、イーロン・マスクのxAIも軍機密システムへの技術供与で契約締結に至ったと報じられているし、軍の非機密システムにはOpenAIだけじゃなくxAIのGrokやGoogle(グーグル)のAIも使われているので、OpenAIだけ槍玉にあがるのは気の毒な気もするんですが、週末のうちに「QuitGPT」というサイトが立ち上がり、みるみるうちに利用が150万人を突破しちゃってるのです。
ボイコットする理由はさまざまです。OpenAIプレジデントのGreg Brockman氏が、去年トランプの選挙資金に2500万ドル献金したって報道が動機の人もいます。でもやっぱり「Anthropicが干されて数時間も経ってないのにもう契約とったんかい!」と驚き呆れたのは、1人や2人じゃなかったってことなんでしょね。
歌手のケイティ・ペリーも、Anthropic支持を表明してClaude Pro登録ページのスクショを♡入りで拡散中。それやこれやで月曜にはトラフィックの大量流入でClaudeがダウン(Bloomberg)。急きょAnthropicも、インポート用ツールを見直して競合チャットボットから好みやデータを一発で取り込めるようにするなど対応に追われていますよ。
これまではエンタープライズとAI開発関連における業界のリーダーだったAnthropic。コンシューマ向けでは競合に大幅に出遅れていたのに、いきなりChatGPTを抜いちゃうんだからビックリです。それだけトランプ&へグセス相手に一歩も怯まないダリオ・アモディCEOの姿勢が共感を呼んでるってことなのかも(CBSによる独占インタビュー[下]はすでに150万回以上再生されている)。
Video: CBS News / YouTube軍の契約は干されたけど長い目で見てどちらが得かは、神のみぞ知る、ですね。