広島土砂災害で2人の息子を亡くした母のいま(広島テレビ ニュース)
2014年の広島土砂災害により2人の息子を亡くした母親がいます。悲しみと向き合いながら歩んだ12年、当時の記憶といま伝えたい思いを聞きました。 ■平野 朋美さん 「とにかく名前を呼ぶ、もうそれしかできなくて。なんか今地獄の中にいるなっていう気分で…」 突然奪われた、家族の日常。2014年8月20日広島市安佐南区山本、大雨で自宅の裏山が崩れ2人の尊い命が失われました。あの日から12年。悲しみを抱えながら家族は今もこの場所で暮らしています。 出迎えてくれたのは平野朋美さんです。写真の中でほほえむのは、長男の遥大くん(当時11)と三男の都翔くん(当時2)。平野さんはあの夜をこう振り返ります。 ■平野 朋美さん 「とにかく雨が全然やまないね、みたいな。こんな大雨そんな長時間続くはずないのに。 長男と次男はいつも2階で寝てたんだけど、その日は屋根に雨が当たる音がすごくて、じゃあもう今日はみんなで1階で寝ようって言ってその日に限って1階で寝てました」 深夜になり、雨が激しさを増します。当時はまだあまり知られていなかった、「線状降水帯」の発生でした。 ■平野 朋美さん 「雷が光り続けて落ち続けてるみたいな感覚、ずっとドーンドーンって言って、2階の方が安全とかもわからなかったし、とにかく怖いからこの雨が早く止めばいいっていう、そんな感じだったですね」 午前3時ごろ、近所の人から近くの山が崩れたと連絡がありました。急いで家族を起こし、妹の家に避難しようと電話をかけていたその時でした。 ■平野 朋美さん 「すごい音がしてドーンって言って一瞬で電気も消えたし、窓もバリーンと割れたりして足元まで土が来ていたから、何が起こったかは真っ暗だったけど一瞬でわかって」 家の1階部分に、大量の土砂が流れ込みました。 ■平野 朋美さん 「でもほんと、これくらいの(キッチンを超える)高さ。これくらいの高さだよ。斜めになって、その辺まで。ここに都翔は座ってたんで。遥大はもっと、この辺かな。今キッチンになってる辺で座ってて。2人の姿が消えた瞬間っていうのは、覚えてますね、今も」 平野さんは必死に息子たちを助け出そうとしました。近所の人たちも道具を持って駆けつけましたが、流れ込んだ木や土は重く全く動きませんでした。 ■平野 朋美さん 「もしかしたら生きているかもしれない、そしたら声は聞こえるはずだと思って。とにかく名前を呼ぶ。もうそれしかできなくて。いま地獄の中にいるなっていう気分で…」 その後の懸命な捜索により助け出された息子達。しかし、その再会は平野さんが願った形ではありませんでした。平野さんがようやく自宅へ戻ることができたのは、災害から一週間経ってからのことでした。 ■平野 朋美さん 「その頃には晴れていたんですよ、一週間経って。晴れていることが悔しくて。あの1日雨じゃなかったらこんなことになってないのに、それが悔しくてどうすることもできないんだけど、妹に今から行くねって言うのがあと3分でも5分でも早かったら、家は壊れてたとしても命は助かったのにって思って。 苦しかっただろうなとか、災害が起こってからどれくらい命が続いてたんだろう、どれくらい苦しい思いしてたんだろうとか、せめて一瞬だったらいいなとかそんなことばっかり考えていました」 悔やんでも、悔やみきれない日々。生きる支えとなったのは二男の存在でした。 ■平野 朋美さん 「二男が助かってくれたから、とにかくこの子をもう泣かせたくないと思って、二男がずっと笑顔でいられるように暮らしていこうって、ただそれだけ思って」 自宅を離れる選択肢もありました。それでも平野さん家族は「ここを悲しいだけの場所にしたくはない」と暮らし続けることを決めました。少しずつでも日常を取り戻そうと庭に花や野菜をたくさん植えました。 そして、災害から2年。平野家に新たな命が生まれました。 ■平野 朋美さん 「(災害後は)うちも実家も家族も、みんな心から笑ったことなかったんですよね。娘が生まれてから本当に家族が笑えるようになったんですよね。 だからすごいよかったなって思ってます」 娘の成長を見守る中で平野さんはある思いを抱くようになります。土砂災害の教訓を次の世代へ繋いでいくということです。6年前に地域の人たちとともに防災をテーマにした「紙芝居」を制作。学校や地域の行事などで伝えてきました。 平野さんが、いま伝えたいこととは。 ■平野 朋美さん 「土石流とか言うから流れてドロドロと流れてくるイメージをしていた。まあうちは大丈夫かと思っていたけど、そうじゃなくて一瞬で土の塊が降ってきたみたいな、天から落ちてきたみたいな感じだったんですよね。12年前の自分がそうであったように災害がよそ事に思っちゃうけど、そうじゃなくて自分の身にも起こる可能性が誰にでもある」 ■広島テレビ 塚原 美緒記者 「遥大くんと都翔ちゃんに今声をかけたいことってどんなことですか?」 ■平野 朋美さん 「いつも見てくれていると思っているから、また会える日まで堂々と生きてるよっていうことかな」 あの日の経験を胸に、この場所で生きることを選んだ平野さん。家族とともに歩み続けます。 【2026年8月20日 放送】