埼玉・大野知事、トルコ人のビザ免除一時停止を再要請へ 「県民に負担と不安感」

入管政策は国の責任で「入り口でコントロールしてほしい」と話す大野元裕知事=県庁(那須慎一撮影)

大野元裕知事は産経新聞のインタビューで、トルコ国籍者の短期滞在の査証(ビザ)免除の一時停止を昨年8月に求めたことについて、近く外務省に対し、再要請を行うことを明らかにした。埼玉県南部では就労目的で難民申請を繰り返す不安定な滞在者が集中しており、治安の悪化が指摘されている。問題の解決には、「まず入管政策を国が行うべき」と判断しているが、国の動きがないことから再要請する。

国の管理が不十分

--トルコ国籍者の短期滞在の査証免除の一時停止を求めた

「査証免除などで入国した人々の管理が国側で十分に行えておらず、不安定な在留状況の人が地域に集中することで住民の不安を招いている。犯罪認知件数は県内で改善傾向にあるが、不安感は残っている」

--なぜトルコ国籍者に限ったのか

「トルコ人の在留資格のうち『特定活動』の比率が50%以上と非常に高い。特定活動とは難民認定申請中に、その審査が終わるまで一時的にビザを与えられたり、卒業後の就職までの短期滞在なども含むが、埼玉では難民申請を繰り返すケースが多いと推定される。そういった人たちの難民申請が認められた数はごくわずか。この特定活動が多くなることで地域に不安定な滞在者が集中し、地域の負担と不安感を生む構造になっている」

--再度、求める理由は

「入管政策は国の責任であるというのが大前提で、国に対してまずはトルコ人に査証を求め、入国時にスクリーニング(選別)を行うよう強く要請する。『入り口でコントロールしてほしい』というのが県の主張で、既に要望書を提出しているが、外務省の反応は十分でないため継続して働きかける」

地方に押し付け

--高市早苗政権が外国人政策の厳格化を打ち出している

「入管政策が実施されるよう国に対して要望する一方、実は入ってきた外国人は地方自治体からすれば地域住民として扱う必要がある。そこで長い間働いているのかどうかすら全く分からない状況でも受け入れなければいけない。これが今私たちが抱えている特徴的なところだと思う」

「県内にいる特定活動のトルコ人は、政府が厳格化するといっている外国人材を何人受け入れるとか受け入れないとする政策の外にいる人たち。トルコ人を差別するつもりはないが、その間、国がコントロールできないのであれば、これを地方に押し付けるのではなくて、他の国と同じように、ビザを取って入ってくるようにしてほしいということだ」

--ビザ免除が治安悪化につながっている

「一般論で言えば安定した生活があって失うものが多い人たちというのは社会的な規範に従順になる。逆に、失うものがない人たちだと果たしてどうなるのか。これは私たちが、国の制度で結果としてそういった人たちが集中している地域を押し付けられている。これは国にしかできないことと私は思う」

介護に外国人材

--人手不足で外国人材の受け入れも必要だ

「県内企業の人手不足感は継続的に高く、令和7年4~6月期に2200社を対象に行った調査で中小企業の雇用者数の不足感が5年連続で『不足』が『過剰』を上回っていると報告があった。特に介護分野での人材不足は深刻で、外国人介護人材採用を希望する事業者に対して専門アドバイザーによる相談対応や巡回セミナー、登録支援機関との出会いの場を提供している」

「また、介護事業所が登録支援機関に支払う初期費用や、海外での人材獲得に必要なマーケティング活動に対する補助を今年度から新たに実施している。昨年11月には自らベトナムに行き、人材を送り出す機関との関係構築を進めてきたところだ」

--知事に就任して2期2年目。外国人問題に加え、物価高対策などやるべき課題も多い

「物価高やコスト高に対応するために、県として『価格転嫁の円滑化』に力を入れてきた。「価格交渉のエビデンス(根拠)になる資料を作れる『価格転嫁支援ツール』が大きな柱になっている。県内での直近調査(7年7月~9月期の動向調査)では、コスト高に対して6割以上価格転嫁できた企業が約57%に達し、国の統計よりも10ポイント以上高い水準となっている。足元の物価高に対しては、次年度(4月予算)において具体化していく」

--8年において最も力を入れる政策は

「物価高対策の目先の課題に対する補正などの短期策と、人口減少や危機管理に対応する中長期策の両方が必要だ。特に危機管理はいつ発生するかわからないため常に優先順位が高い」

県民満足度6割

--埼玉県5カ年計画「日本一暮らしやすい埼玉」が4月に最終年度を迎える

「少子高齢社会や人口減少に対応するため、高齢者の移動手段支援や見守り体制の整備、戦略的なインフラ更新に集中投資するなど市町村の持続可能なまちづくりを県が支援してきた。埼玉スーパーシティ構想と呼んでおり、63市町村のうち56市町が参加している。幸い、県民からの満足度が6割近くになっていて、前回調査から上昇しているという状況なので、おおむね順調に進んできていると自負している」

--少子高齢化が進む一方で、医療体制の維持が課題となっている

「高齢化のスピードが速く、救急搬送数が増加して医療機関の負担が大きくなっている。6年度の救急搬送は約37万6千件と過去最高で、うち75歳以上は約18万件と全体の約5割を占める。また、直近10年で1・8倍に増加している」

「救命救急センター11カ所と搬送困難事業受け入れ医療機関13カ所を整備したほか、75歳以上の重症救急患者への早期受入れ医療機関に対するインセンティブ制度を導入し、搬送困難割合を8・1%から7・3%に改善できた。また、医療従事者確保策として、地域枠奨学金制度による人材育成や医師派遣への補助、看護師養成所への運営費補助などを引き続き実施するなど、対策の拡充を図っていく」(聞き手 飯田耕司)

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