Nintendo Switch 2ロングレビュー:初代からまさに「1UP」。性能ではなくゲームへの熱中にコミットした任天堂らしいゲーム機
Nintendo Switch 2、遊んでますか? 日本のギズモード編集部はいまだに落選報告をしあっており、第5回抽選販売に希望を繋ぐのみ。日本はたぶん入手最難関国なんですよね…。
一方、米Gizmodoは米任天堂の事前招待で、本体や『マリオカート ワールド』に触ったうえに、発売日にしっかり入手し『サイバーパンク2077 アルティメットエディション』 をプレイして感動しているところ。
発売から3週間ほど、米GizmodoがSwitch 2のロング・レビューを公開しました。
Wii Uの大失敗を経て、2017年に初代Switch(300ドル・2万9980円)が発売されたとき、多くの人は任天堂のギミック的なやつでしょ? プレステやXbox買った方がいいんでしょ?と思っていました。
しかし、取り外しができるJoy-Conがついた据え置きゲーム機かつハンドヘルドゲーム機というSwitchは、年齢層を問わず大ヒット。ポータブルかつテレビでも遊べるというゲームシステムは革命的で、すぐに理解され市民権を獲得。Wii成功の再来です。
そして、今回その後継機のSwitch 2。初代の上をいくことができるのかと発売前からドキドキしていました。
全方位的に上へ上へ
Image: Adriano Contreras / Gizmodo任天堂はDRM(デジタル著作権管理)が厳しいからな…とゴチャゴチャ抜け道を探すくらいなら、Switch 2でゲームするのが早い。後方互換性があるので、初代Switch向けタイトルもSwitch 2でプレイでき、ここが非常にプラットフォームとして優れているところ。
7.9インチのIPS液晶ディスプレイは、6.2インチの初代より30%明るくなっている上、ダイナミックレンジも広がりコントラスが綺麗にでます。結果、ゲーム映像がより鮮明によりポップに。HDR対応で、最大120Hzの可変リフレッシュレート(VRR)にも対応。ただし、VRRは手持ちモードでしか使えないので注意。
基本は手持ち派という人も、(4K対応以外は)ドック接続+テレビ派の体験と比べてとくに大きなマイナスポイントなし。また逆に、ドック接続+テレビ派という人も、Switch 2向けのソフトをプレイする限りは不便も制限もとくに感じることはないでしょう。PS5でたまに聞こえる「がんばってる音」も、Switch 2からは聞こえません。静かなタイプ。
任天堂が初代Switchをもって世間に知らしめたのは、芸術的に考えられデザインされたゲーム機は、ゲーミングPCや他社ゲーム機のグラフィックを重視する姿勢に対抗する策になりえるということ。
単純に性能だけを見れば、初代SwitchはPS4にもXbox Oneにも劣ります。しかも、この2機はリリースが2013年、初代Switchよりもずっと前にリリースされたというのに。当時搭載されたNvidiaのチップセットは、初代Switchローンチタイトルだった『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』にすら圧迫されていた感は否めません。さらに、その後リリースされたPS5、Xbox Series S/Xと比べると周回遅れもいいところでした。
あれから8年。とうに時代遅れのスペックをアップグレードしないといけない時期がやってきました。Switch 2のリリースは必然だったのです。
過去タイトルをプレイして感じる差
ゲームを楽しくプレイする上で、性能は必要不可欠。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』と初代Switchがいい例で、プレイできたのはある意味奇跡であり、フレームレートでゲーム体験を若干低下させたと言われてもしょうがないでしょう。
てことで、Switch 2で再び『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』をプレイしてみましたが、隅々まで素晴らしい映像です。過去タイトルとはいえ、ゼルダをプレイするなら圧倒的にSwitch 2の方が適しています。いちどSwitch 2でプレイしちゃうと、初代Switchでプレイしようとは思えないレベルです。
『スーパーマリオ オデッセイ』のような4kアップグレードなしのタイトルも、初代の720pより、Switch 2の1080pでプレイした方が圧倒的にいい。もちろん、過去タイトルをプレイするためにSwitch 2を買うべきとは思いません。ただ、初代とSwitch 2どちらも持っているならば、どんなタイトルもSwitch 2でプレイした方がいいという話。
大きく明るくなったディスプレイ。有機ELはひとまず忘れよう
Image: Adriano Contreras / Gizmodo発表前は、黒の美しさが魅力の有機ELディスプレイを期待してました。が、フタをあけてみたら液晶ディスプレイ。初代Switchでは、2021年に有機ELモデルがリリースされましたが、つまりSwitch 2でも将来的に有機ELモデルが準備されているのかもしれませんって話はあります。
が、今後出るかもしれない画面が綺麗なSwitch 2有機ELモデルを待つくらいなら、液晶のSwitch 2をいま買えばいいと思います。有機ELモデルは絶対価格もあがるでしょうし。というのも、HDR対応のSwitch 2の液晶で十分綺麗なんですから。
有機ELのSteam Deckがオフィスにありますが、別にその画面を見て羨ましいと思うこともありません。有機ELの方が絶対いいと漠然に思い込んでたなと自分でも今回思い知りました。
結局は、画面だけの比較ではなく、ゲーム機における画面としてそのサイズや価格も「いい体験」に影響するからです。Switch 2は液晶ディスプレイですが、初代より大きく明るくなっています。その分初代より値段もあがりました。それで十分。
もちろん、1度有機ELのディスプレイにしたら、液晶に戻るのは嫌になるでしょう。ただそれはディスプレイを比べているときの話で、ゲームに没頭しゲームを見ているときは黒が黒いとかもう頭から飛んでしまいますからね。
あ、ディスプレイの注意点として1つ。薄いプラスティックの保護シートは剥がしたらダメですよ!
触って感じるアップグレード
Image: Adriano Contreras / Gizmodoディスプレイに先に触れましたが、もっとも大きなアップデートはJoy-Con 2。磁石接続でフィジェットトイのようなクリックの快感がある、取り外しができるコントローラです。
ZL/ZRボタン近くのリリースボタンを押すと、簡単に取り外し可能。これ、意図せずうっかり触っちゃうと真ん中のSwitch2本体がおっこちるので注意は必要です。Joy-Con 2のSL/SRボタンが大きく、よりクリック感が高まったの、個人的に好きです。
背面のキックスタンドも適切なサイズ感。あとは、USB-Cポートが上部と下部に1つずつ、計2つあるのも使い勝手がいいと感じました。内蔵スピーカーも初代より音が大きく、ボリューム上げてもキンキンしません。
Image: Adriano Contreras / GizmodoImage: Adriano Contreras / Gizmodo今日市場にある手持ちタイプのゲーム機では、端末が薄い作りのSwitch 2。軽いので、ソファやベッドでまったりプレイしていていも苦になりません。
バッテリーもちはプレイするタイトルしだい。例えば、2Dゲームの『HADES』なら4時間強いけました。『スーパーマリオ オデッセイ』は3時間強。グラフィック負荷の高い『サイバーパンク2077 アルティメットエディション』は2時間。これ、Steam Deck OLEDでプレイするともうちょっとだけ長持ちします。
ただ、バッテリー重視ならAsus ROG Ally Xなど、より高額なハンドヘルドを検討すべき。バッテリーもちも、もし有機ELモデルがリリースされたらもう少し長くなるはず…。フレームレートを調整して省エネする方法もありますが、グラフィック=ゲーム体験に影響するくらいなら個人的には充電する方を選ぶかな。
Image: Adriano Contreras / Gizmodo初代Switchのジョイスティックといえば、触ってないのにゲームキャラが動いてしまうドリフト問題がありました。Switch 2ではこの対応としてホールセンサー型の採用が期待されていましたが、実現されず。ドリフト問題は経年劣化によるところも大きいので、2週間ほどプレイしたくらいではなんともいえず、当然ドリフトは発生していません。
任天堂の中の人、Nate Bihldorff氏が、Switch 2ではジョイスティックを根本的にゼロからデザインしなおしたというので、長く使ってそれを確かめたいですね。ただし、一部ではすでにSwitch 2でもドリフトしたという声もあがっており、ガジェット解剖のiFixitやガジェットCTスキャンのLumafieldは、中身を見た上で、改善はされているが解決はしていないとコメントしています。また、Joy-Con 2の磁石構造が、ホールセンサー型を採用できなかった理由かもしれないという意見もでています。
『サイバーパンク2077』があげてしまったゲーム界のハードル
Image: Adriano Contreras / GizmodoSwitch 2で1番驚いたこと、それは『サイバーパンク2077』がめっっっっっっちゃプレイしやすいということ。
ゲーム映像の色見、ディティールは、液晶Steam Deckの720pよりもずっといい。これは、ゲーム開発側がSwitch 2向けにゲームを最適化してくれたこと、『サイバーパンク2077 アルティメットエディション』という存在のおかげです。また、NVIDIAのDLSSを採用したことも大きい(Switch 2で採用されているDLSSのヴァージョンは明かされていません)。DLSSはAIの力で画面を生成するのですが、それによって若干グリッチが発生するのは事実。ただ、そんなに気になる程でもない。
『サイバーパンク2077 アルティメットエディション』の存在は、Switch 2における美グラフィックだけでなく、Switch 2そのもののポテンシャルをうまく見せることにも一役買っています。というのも、Switch 2の大きな特徴である、取り外したJoy-Con 2のマウス操作がゲーム体験により厚みを持たせているからです。
Image: Adriano Contreras / GizmodoJoy-Conマウスは、正確さがビミョーなときもありますが、そのレスポンス精度と速さは見事。とくに、『サイバーパンク2077』のようなゲームだと、操作の選択肢が増えるのはメリットだと思います。
問題点を挙げるとしたら、長時間のマウス操作は手首がツラいこと。人間工学に基づいたカバーとかないと、ずっとマウス使いはツラい形なんですね。年内発売予定の『メトロイドプライム4 ビヨンド』では、マウス操作とジョイスティック操作が簡単に切り替えできるという話なので、今後全体型な使い勝手はどんどんあがっていきそう。
Joy-Conといえば、大人数で集まっての任天堂らしいゲームを想定した作り。すでに、いろんな人を呼んで『マリオカート ワールド』をプレイしていますが、誰がきてもJoy-Con 2を楽しく回してプレイし、最後はみんな笑顔で帰っていきます。これぞ、Joy-Conのなせる技。
Switch 2に搭載されているNVIDIAチップは「一昔前のスペック」と揶揄されていますが、実際PS4時代レベルであり、グラフィック性能などはPS5の足元にも及びません。ただ、Joy-Conを回してみんなで遊んでいると、ゲーム体験って結局はソフトがどれだけそのハードに合わせてくれるかなんだなと思わずにはいられません。4人で『マリオカート ワールド』プレイでしたときも、フレームレートの低下が気になることもなかったし、『サイバーパンク2077 アルティメットエディション』のグリッチも邪魔になるほどではなかった。それもこれも、ゲーム体験度が高くゲームに熱中していたからだと思います。
ゲームという点では、Nintendo Switch Online + 追加パックに加入すると、Switch 2ではニンテンドー ゲームキューブも遊べます。専用のコントローラもあるよ。
総評
Switch 2(450ドル・日本語版は4万9980円)は、新たなハードウェアと呼ぶにたるアップグレードだけを行い、奇をてらったところがない端末です。2代目を名乗る存在として全方位的にアップグレードした一方で、後方互換性があるのがいいところ。
処理性能があがり、スクリーンは大きくクリアになり、Joy-Con 2は磁石取り付けになりマウスとしても機能し、ゲームチャットがついています。負荷の高い『サイバーパンク 2077』のようなゲーム含め、年内に任天堂ONLYでリリースが予定されるタイトルを思えば、Switch 2のプラットフォームでプレイできるゲームに不満もとくにありません。
Switch 2の最大の敵は初代Switch。今日の一大プラットフォームを作り出した芸歴8年の大ベテランです。Switch 2には、PS5・PS5 ProやXboxSeris S/Xほどの性能はないけれど、自分の未来を切り開くだけのスペック性能は持ち合わせています。初代が築いた名に恥じず、さらに切り開いていく力が十分あるのです。
とすれば、Switch 2はスペックをあげた上で初代をリピートする存在だとも言えます。iPhone 3Gが初代iPhoneを踏まえてアップグレードされた端末であるのと同じように、Switch 2もまた初代を踏襲した端末なのです。
Image: Adriano Contreras / Gizmodo先代のコンセプト踏襲、アップグレードだけで十分だと言える理由には、任天堂独自のプラットフォームがあります。任天堂の最新ソフト、例えば『マリオカート ワールド』をプレイしたいと思ったらSwitch 2しか選択肢はありません。PS5やXbox Series S/Xを持っていてもダメ、Switch 2じゃなきゃダメなんです。任天堂の独自プラットフォームと同じく、ゲーム機自体も他社に比べ制限が多いのは特徴。これだけ優れたハードを展開しつつ、ゲームの権利まで制限できる「強さ」は任天堂だけ。ゲームの共有、セーブデータの共有がしづらいのは残念。端末が優れているからこそ、ゲームのプラットフォームがもっと開かれたものだったら...と思わずにはいられません。
Switch 2は間違いなく売れまくるでしょう。大成功を収めるでしょう。それは、このプラットフォームでしかプレイできないゲームを求める人が多いからです。
発売日には各地での行列が世界中でニュースになり、発売4日で350万台を売り上げました。処理性能では劣っても、PS5やXbox、PCにはないポータブル性、人とのつながり、共有力があり、その魅力は大きいのです。
いいところ:軽くて安定している。HDR対応のディスプレイ。マウス操作で新たなゲーム体験が可能。『サイバーパンク2077 アルティメットエディション』 がプレイできるほどパワフル。USB-Cポートが2つある。ゲームキューブのゲームもできる。
残念なところ:有機ELではなくLCDだったこと。2025年にストレージ容量256GBは小さすぎ。動画ゲームチャットとサウンドのクオリティ。DRM厳しすぎ。
ここから先は本体そのものではなく、その周辺へ。
ゲームチャットは期待ハズレ、かも
Switch 2で使えるゲームチャット機能に特化したレビューでも触れましたが、これはちょっと期待ハズレかも。みんなで一堂に介してゲームで盛り上がることを得意とする任天堂ですが、ネットを介したマルチプレイはまだまだこれから。
Switch 2にはマイクが内蔵されており、2〜3メートル先まで声を拾えることになっていますが、実際使ってみるとそうでもない。せいぜい1メートルちょいというところな気がします。声拾っても、相手が聞こえづらかったら意味ないです。
同じく、公式アクセサリのSwitch用カメラもいまいち。ドック接続でテレビ前に置いて使う想定なのですが、これが暗い。また、背景をボカす機能があるものの、めちゃくちゃイマイチ。本体上部にUSB-Cあるし、サードパーティでなんかいいやつでないかなーと思っているところです。
Image: Adriano Contreras / Gizmodo任天堂としては、コントローラにチャットの「C」ボタンを設け、Switch 2の目玉機能としたいゲームチャット。メインメニューを介さず、チャットにアクセスできるボタンは便利に聞こえますが、Switchオンライン経由でしか電話できないなど、まぁいろいろ制限もあって便利機能とは言い難いかな。
Image: Adriano Contreras / Gizmodoゲームの「所有」について
Image: Adriano Contreras / Gizmodo購入したゲームは所有か、使用ライセンスかというのは昨今よくディスカッションされる問題です。Switch 2でもこれは同じことになります。
ゲームソフトにはオンラインラインセンス設定があり、複数端末で同じゲームをプレイできます。が、制限があって、同プロフィールで同じゲームを同時に2台でプレイすることはできません。また、セーブデータは1つに紐付け。SwitchからSwitchにセーブデータを移動させるのは、あくまで移動であってコピーではありません。移動元であった方からはデータが消えます。物理ゲームカードだけだった時代からすると、どうしても自由度や所有度は低下します。
一方で、Switch 2では「おすそわけ通信」という良機能も登場。初代Switchユーザーやゲームを持っていない友達にもゲームを共有して遊べます。ただ、現時点ではこれに対応しているゲームが少ないので、これもまだまだこれからの機能。
Switch 2のゲームは、パッケージ版(ゲームカード・キーカード)とダウンロード版と2種類あり。Switch 2の容量は初代の32GBから8倍の250GBにアップしています。8倍というと大きいですが、容量250GBなんてあっという間…。
Switch 2のOSのために、まず10GBが埋まってしまいます。これに『サイバーパンク2077 アルティメットエディション』なんて入れようものなら、それだけで60GBもっていかれます。『スプリット・フィクション』なんて70GB。『ストリートファイター 6』なら48GB、『龍が如く0 誓いの場所』なら54GB。…容量なんていくらあっても足りませんね。