「顔が地面に埋まるんじゃ…」の窮地から 渋野日向子が4連続バーディで予選通過

◇国内女子◇樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント2日目(1日)◇武蔵丘GC(埼玉)◇6690yd(パー72)◇曇り(4543人)

2mのパーパットを沈めて大歓声に応える。キャップのつばに右手をやると、渋野日向子は秋空に思わず顔をやった。「ああ、疲れた」。笑顔で降りた9番グリーン。頭上にあった予選カットラインを、残り5ホールで飛び越える闘いに本音が漏れた。

初日2オーバー73位の出遅れにより、この日は10番からスタートした。多くのギャラリーを引き連れた“裏街道”の前半は静かな出来。2打目をバンカーに入れた14番で2mを沈めてボギーを免れると、16番(パー5)で3打目をピンそば1mに付けてようやくスコアを動かした。

バーディ先行の後が続かない。18番(パー5)、4m弱のバーディパットは上りのスライスラインからよれてカップの右へ。通算1オーバーで折り返し、「1(アンダー)ではムリだ」と誓った直後の1番(パー5)で絶望した。2打目をグリーン右手前まで運びながら、1.5mのチャンスを生かせない。「(バーディパットを)外した瞬間、顔が地面に埋まるんじゃないかというくらいキツかった」と大きく肩を落とした。

フェアウェイキープ率100%(14/14)、パーオン率88.89%(16/18)というショットの出来をスコアにどうしても繋げたい。「どこかで入ってくれたら…」という思いは崖っぷちで実った。5番で3mを沈めたのをきっかけに、8番(パー3)までミドルパットが立て続けに決まって4連続バーディ。「ゾーンに? 入っていないと、最近の私はあんな距離は入らない。マジで久々。本当に良い集中力で、周りは関係なく(プレーに)入りこめていた」と巻き返し、5バーディ「67」の通算3アンダー31位で決勝ラウンド進出を決めた。

3週前の「富士通レディース」でパターをスイッチ(テーラーメイド スパイダーツアーV ダブルベンド)し、パッティングをアドレスに入る前の所作から見直した。左手でボールを丁寧にセットし、打つ前に2~4回の素振りをする。冴えなかった前日のホールアウト後も「ルーティンを増やしているが、悪い方に行っているとは思っていない」とプロセスを重視し、同じ作業を続けて好結果を呼び込んだ。

「パットが入らなくなったらショットも悪くなる流れがすごく多かったんですけど、(きょうは)最後まで攻め続けられた」と納得し、熱を取り戻したロープの外にも目を向ける。「(4連続バーディは)『お待たせ!』って感じだったので。情けないところばかり見せいてたんですけど本当にパワーをもらった。いつもアメリカにもついてきてくださる方(ファン)もいらしていた。本当に涙が出そうです、マジで」

最終ラウンドは優勝争いとは遠い位置で、大勝負を控えたラストラウンドになる可能性が高い。来季の米女子ツアー出場権確保のため、2週後の「アニカ driven by ゲインブリッジ at ペリカン」(フロリダ州ペリカンGC)、または12月のQシリーズ(予選会)ファイナルステージ(アラバマ州マグノリアグローブGC)で好成績が必要な状況は変わらない。

それでも土曜日の午後に見せた窮地での踏ん張りは「フロリダの試合につながる。あしたにもつながる」と自信を持てる。「(来季は)どうなるか分からないですけど、どこにいようが、どこで戦おうが、やっぱり続けていかないといけない」。日々の積み重ねの価値を知れただけでも、日本でプレーした甲斐がある。(埼玉県飯能市/桂川洋一)

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