軍艦島元島民、「地獄島」汚名返上へ 対話を求め「韓国と仲良く、しかし水には流さない」
長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)が戦時中の朝鮮半島出身者にとって「地獄島」だったとする韓国での論調に反論するドキュメンタリー映像「報道の嘘と戦い続ける元島民たち」の公開記者会見。80代、90代の元島民らは16日、韓国の活動家らとの対話を通じ、虚偽情報の発信を取りやめるよう働きかける考えを表明した。「われわれの活動はこれで終わりではない。これからが本番だ。世界中に拡散した『地獄島』『監獄島』『生きて帰れない島』という汚名を絶対に晴らさなければならない」と語った。
映像は韓国メディアが戦時徴用と結び付けて引用し続けた昭和30年放送のNHK番組「緑なき島」の坑内映像を巡り、元島民らが約4年にわたって技術的な矛盾点を指摘し、軍艦島の映像ではないと訴え続けた経緯を記録した。昨年3月には当時のNHK会長、稲葉延雄氏が元島民らに謝罪した。元島民らはクラウドファンディング(CF)で制作資金を募り、先週16日に映像を公開した。
「韓国と日本の子供のため」
「韓国の皆さんとは仲良くしなければならない。だからといって水に流すわけにはいかない」
映像制作を主導した「真実の歴史を追求する端島島民の会」(72人)の幹事長、中村陽一さん(88)は会見で支援者への感謝を述べたうえで、こう訴えた。
韓国では韓国人の少年が軍艦島で過酷な労働を強いられる様子を描いた童話絵本なども出版されている。稲葉氏の謝罪以降も、韓国メディアは軍艦島を「人間の尊厳が崩れた場所」「朝鮮人が強制動員され、過酷な労働と苦痛を経験した歴史の現場」(ニュース済州、6月9日配信)などと報じている。
真実の歴史を追求する端島島民の会の記者会見=7月16日午後、東京都千代田区中村さんは「元島民の一次証言から分かる通り、端島で強制労働や虐待はなかった」と改めて主張し、「島民は端島に誇りを持っている。大正時代の初めから朝鮮半島出身者が働きに来ており、小さな島で『一島一家』として苦楽を共にしていた」と振り返った。
そのうえで、「間違った教育を受けた韓国の子供たちと日本の子供たちの間に分断があってはならない。そのためにも真実を正すのは今を生きるわれわれの責務だ。命ある限り頑張る」と力を込めた。
NHKの対応「とんでもない話」
映像制作に踏み切った背景には、NHKが稲葉氏の謝罪の場面や、「緑なき島」が韓国メディアなどに与えた影響を報道していないためだという。
元島民の溝辺武磨さん(83)は会見で、NHKの対応について「自分たちが作った番組が(韓国メディアに)利用されて世界中にばらまかれて、とんでもない話だ」と語った。
中村さんも「公共放送でありながら、自らの放送を検証しないのは問題だ」と指摘し、「われわれはもう80代、90代になり、いついなくなるか分からない。だからこそ、自分たちで検証映像を作り、記録として残さなければならない」と述べた。一方、稲葉氏については「謝罪は素晴らしかった」と評価した。
元島民の「記録に残す情熱」
戦時徴用を巡る虚偽情報の拡散は、軍艦島を含む「明治日本の産業革命遺産」が2015年に世界文化遺産に登録された前後に激しさを増した。南ドイツ新聞(ミュンヘン)は同年7月、軍艦島で韓国の強制労働者ら1000人以上が死亡し、遺体は海か廃坑に投げ込まれたなどと報じた。
産業遺産情報センターの加藤康子センター長世界文化遺産への登録を民間の立場で主導した産業遺産情報センターの加藤康子センター長は会見で、元島民らについて「アウシュビッツ強制収容所と比較されるようなプロパガンダにも、敢然と立ち向かってきた」と述べ、「『もう済んだこと』ではなく、最後まで真実を記録に残そうとする情熱に心から感謝したい」と語った。
世界遺産登録当時については、「端島出身だと言えず、孫娘の縁談への影響を心配した島民もいた。私は心底申し訳ないと思った」と明かした。(奥原慎平)