非ランダム率は18京分の1未満。量子もつれが生んだ「真の乱数」とは
ランダムって、もはや奇跡。
裁判員の選出や宝くじなど、私たちの生活には「無作為の抽出」、つまり「乱数」がおおいにかかわっています。
ただ、その抽選で選ばれた数字は本当にランダムなのでしょうか? 現代社会に欠かせない乱数生成ですが、今そのタスクを担っているのはコンピューターです。ただ、どんなに法則性を排除してランダムにやろうとしても、そこにはどうしても何らかのパターンが存在しています。
たとえば、猿がキーボードを叩いて適当に文字列を打ったとしても、その指の長さやキーボードのレイアウトがわかれば、ある程度の推測は成り立ちます。まして、そのシステムが改ざんされたりハッキングされたりすれば、その「ランダム性」は信頼できなくなってしまいます。
そんななか、米コロラド大学の物理学者、Gautam Kavuri氏らの研究チームが”Colorado University Randomness Beacon(CURBy)”と呼ばれるプロトコルに基づく乱数生成器を開発しました。
量子もつれが生み出す「真の乱数」
米国国立標準技術研究所(NIST)が発表したその内容は、「もつれた光の粒子」をもとにした新しい乱数生成プロトコルで、高度な不正防止機能を備えたものだと2026年6月11日付けのNature誌に論文を掲載しています。
この乱数生成器では、一対のもつれた光の粒子(光子)を生成し、それを110メートル離れた2つの場所で同時に測定します。そのプロセスはハッシュチェーンと呼ばれる一連のデータ上に公開記録されることになり、プロセスを改ざんする動きがあっても検出でき、真にランダムなものにすることができるのだそう。
Kavuri氏らは40日間でこのプロセスを7,454回実行し、そのうち7,434回が成功したと発表。各回での非ランダム率は18京分の1未満でした。さらにこのネットワークへの参加機関が増えれば、信頼性はさらに向上することになります。
こうした量子レベルでもつれた粒子を利用した不正防止機能の誕生は、今後選挙や証券、暗号といったあらゆる分野への応用が期待されています。
「ランダム」という言葉の信頼性と重みがグッと高まることになるでしょう。
Source: Nature via Science Nature