【ボクシング】高見亨介、世界初挑戦TKO王座「10回で倒せてびっくり」2階級王者ロサに勝利

<プロボクシング:WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦>◇30日◇横浜BUNTAI

WBA世界ライトフライタイトルマッチで、世界初挑戦となった同級1位の高見亨介(23=帝拳)が王座獲得に成功した。無敗の同級王者で世界2階級制覇王者のエリック・ロサ(25=ドミニカ共和国)に挑戦し、10回2分48秒、TKO勝ち。プロ10戦目で世界初奪取となり、名門・帝拳ジムでは元WBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太の14戦目を抜き、最速となった。

「宣言していた6ラウンドで倒す、6ラウンドをこえたあたりで判定でもいいんじゃないか、というのがよぎったんですが、10回で倒せて、びっくりした自分と、練習を頑張って良かったなと自分を誇れるところがある」

今年4月の日本同級王座獲得から約3カ月で、世界ベルトを手にした。プロデビューから3年で迎えた大きなチャンスだった。「1発で取って1番下っ端の自分が(ジムを)勢いづけたい」と意気込んでリングに立った。プロではアジア圏外の選手、サウスポーとの対戦も初めて。それでもアマ時代からサウスポーにも全勝しており、高見自ら「苦手意識はない」と断言していた。今春からスタミナ強化のため、週3回のペースで走り込みを継続。プロ初の12回戦で判定決着にも対応できる体づくりをした世界初挑戦の舞台だった。

今年5月からは現役時代、アマチュアでフロイド・メイウェザー(米国)を最後に倒した米国人としても有名な元米国代表ユースコーチのオギー・サンチェス氏、中学時代から指導を受ける田中繊大トレーナーの2人指導体制で心身の向上を図ってきた。所属ジムの本田明彦会長からは「ジムで1番、生意気」と評される。25年4月に日本ライトフライ級王座を獲得したリング上で「会長、世界挑戦させてください」とアピールした。その“ビッグマウス”は世界奪取後からと言いながらも、同門のWBC世界バンタム級1位那須川天心(26)の名前を出し「(那須川は)スター性が抜群なので、試合内容では負けないようにしたいなと思う。そこはちょっと頑張りたい」と意気込んでいた。

5歳で自宅近くのキックボクシングジムで格闘技をはじめ、小学2年からボクシングに転向。中学1年から帝拳ジムに通い始め、田中トレーナーから指導を受けていた。本人は中学卒業した後からプロ転向を希望していたが、周囲の説得もあって日出高ボクシング部に進学。幼少期から待ち望んでいた世界王座挑戦だった。高見は「自分のボクシング人生の大きな分岐点となる試合だと思う。世界を取れば人生が変わるぞと聞いているので、どれぐらい変わるのか楽しみ。やっぱり期待もすごくされているので、なおさら、しっかりと勝ち切らないといけない」との思いを胸に決戦のリングに立っていた。

【ラウンドVTR】

1回 高見はジャブをついて、じりじりとプレッシャーをかける。サウスポー構えのロサは細かいステップで左右に動きながら、様子見。ラウンド中盤にロサが右フックをヒットさせた。高見も手を出すが、ロサは巧みな防御でかわす。ラストは高見が連打を出した。日刊採点はロサ10-9

2回 ロサは1回とかわって、前に出て接近戦を敢行。高見も細かく手を出しながら、ボディーで応戦した。ロサ優勢で進んだラウンドだったが、終盤に高見が左フックをカウンターでヒット。ロサがクリンチにくるところで、連打をたたみかけた。左ストレートもヒットして、ロサはゴングに救われた。日刊採点は高見10-9

3回 高見は積極的に出て、パンチを繰り出した。右ボディーフックを何度もヒットさせた。ロサも左フックで応戦するが、ロープを背負う場面が増える。残り1分の時点ではスリップダウンで手をついた。高見は右ボディーを軸にパンチを集めた。日刊採点は高見10-9

4回 ロサが盛り返そうと前に出る。高見も応戦。頭をつけあう距離でのパンチ交換も増えた。ロサが前進する際に、高見は右ボディーフックを効果的に当てて、手数を増やした。日刊採点は高見10-9 

5回 高見は右ボディーフック、右ストレート、右フックと多彩に打ち分けて、ロサに攻撃をさせない。終盤にはコーナーにつめて、左フックをカウンターで痛烈にヒット。ロサはがくりと腰を落として、必死でコーナーからエスケープ。高見が追い打ちを狙ったところで、ゴングが鳴った。日刊採点は高見10-9 

6回 ロサは、中間距離を捨てて、頭がぶつかる距離での攻防を選択。決死の前進で距離をつぶしにかかった。左ストレート、左ボディーストレートなどをヒット。高見は右ボディーフックで対抗。際どいタイミングの右アッパーもみせた。終盤には再び右をヒットした。日刊採点はロサ10-9

7回 高見は右ボディーフックを集めてから、左ボディーフックも放つ。ロサはラウンド中盤に、動きが鈍り後退を繰り返した。終盤はロサも反撃を見せたが、高見が終始、パンチを打ち込んだ。日刊採点は高見10-9 

8回 高見はボディー攻撃を軸にロサを攻撃。ロサはボディーを嫌がるそぶりをみせる。ロサは接近戦を挑むが、高見は細かいステップで角度を変えて、ガードのすきまをぬって右フックを何度もヒット。ロサがたたら踏んで下がる場面もあった。日刊採点は高見10-9 

9回 前に出るロサに対し、高見は足を使ってリズムをとる。ロサは接近戦を狙うが、パンチが届かず、近づくと連打を打たれて、なかなか近づけない。高見は終盤に左フック、ボディー攻撃も有効だった。日刊採点は高見10-9

10回 高見は左ジャブをついて、ロサに攻勢をかける。右ストレートのカウンター、左ボディーフックでダメージをあたえる。ロサが前に出た瞬間、ななめ後ろにステップして角度をつけて、右フックをヒット。ロサにダウンをあたえた。残り30秒で再開されて、高見はラッシュ。ロサは必死のクリンチで逃れようとするが、左右フックを浴びる。スリップダウンした姿をみて、レフェリーが試合を止めた。

◆高見亨介(たかみ・きょうすけ)2002年(平14)4月5日、東京・新宿区生まれ。幼少からムエタイを学び、小学2年からボクシングをはじめる。中学から帝拳ジムに通い、U-15、アンダージュニアで全国制覇。日出高校(現目黒日大高)で高校総体、国体を制し、アジアユースで銀メダル。アマ戦績43勝4敗。高校卒業後にプロ転向し、22年7月に1回KO勝ちでプロデビュー。25年4月、日本ライトフライ級王座を獲得。家族は両親と兄、妹。身長168センチの右ボクサーファイター。

◆帝拳ジム輩出の世界王者(JBC登録のみ) 大場政夫、浜田剛史、ホルヘ・リナレス、西岡利晃、粟生隆寛、下田昭文、山中慎介、五十嵐俊幸、三浦隆司、カルロス・クアドラス、木村悠、村田諒太、尾川堅一、岩田翔吉、高見亨介

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