イラン最高指導者の「力」の源泉 謎の資金源「セタード」とは
イランの最高指導者ハメネイ師=テヘランで2022年11月2日、WANAロイター
イスラエルとイランの戦闘が続く中、イスラエルと連携するトランプ米大統領はイラン最高指導者アリ・ハメネイ師(86)について、「今のところは排除(殺害!)しない」(We are not going to take him out (kill!), at least not for now)とソーシャルメディアに書き込んだ。
だがイスラエルのネタニヤフ首相はハメネイ師殺害の可能性を否定しておらず、その動向が注目されている。なぜハメネイ師はイランを長年にわたって統治できているのか。その力の源泉は何か。過去の取材からひもといた。
米が異例の経済制裁
イランの首都テヘランを歩くと、ハメネイ師の肖像画や写真を各地で目にする。イランは1979年のイスラム革命で親米王制が倒れ、以後はイスラム教シーア派の宗教指導者が国政全般に最終決定権を持つ「政教一致」体制に変わった。初代最高指導者のホメイニ師が89年に死去して以降、2代目として統治するのがハメネイ師だ。「師」の敬称は、宗教指導者であることを指す。
2019年に記者がイランを訪れた際、テヘラン市民の間で話題になっていたのは、当時の第1次トランプ米政権が実施したハメネイ師に対する経済制裁だった。
国家元首への制裁は異例で、ムニューシン米財務長官(当時)は「何十億ドルもの資産」を凍結すると強調していた。当時はトランプ氏もさすがに「殺害」にまでは言及していない。だが、早くからハメネイ師個人の弱体化を狙っていたことは確かだ。
テヘラン中心部の飲食店従業員の20代の男性は、「(経済低迷で)イラン国民は生活に苦しんでいるのに、指導者(ハメネイ師)はどこまで資産があるのでしょう」と苦笑していた。
謎が多い資金の実態
…