延長終了間際の痛恨ファンブル…東洋大GK磐井稜真は声震わせ「本当に申し訳ない」神戸GK新井は擁護「痛いほど気持ち分かる」

悔しさをあらわにするGK磐井稜真

[8.6 天皇杯4回戦 神戸2-1(延長)東洋大 ノエスタ]   震わせながら話す言葉が、より悔しさを滲ませた。「チームとしても自分としても120分いいゲームをしていたからこそ、自分のひとつのミスでゲームを終わらせてしまったことは、チームのみんなだけじゃなく、応援してくれた人たちに本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」。

 間違いなく東洋大の快進撃を支えた選手の一人だった。これまで大学リーグ戦にも出場していなかったGK磐井稜真(2年=東京Vユース)だが、天皇杯2回戦の柏レイソル戦でいきなりスタメンに抜擢されて公式戦デビュー。そこから約2か月間、東洋大の正守護神としてプレーしてきた。

 王者・ヴィッセル神戸の前にも磐井は立ちはだかった。前半36分に起点となるキックでMF湯之前匡央(4年=柏U-18)の同点弾に繋げたかと思えば、後半7分にはMF佐々木大樹に許した決定的なシュートを右手一本で弾き出した。

 それだけに最後の最後のプレーが悔やまれた。延長後半アディショナルタイム1分、神戸の右サイドからDF広瀬陸斗に入れられたクロスを磐井がキャッチミス。後ろにいたFW宮代大聖にヘディング決勝弾を押し込まれてしまった。

 試合終了直後にあったのが、現実を受け止めきれない様子の磐井の姿だった。しかしそこに神戸の選手でただひとり、肩を抱きながら声をかける選手がいた。相手GKとして対峙したGK新井章太だった。

 新井は「痛いほど気持ちは分かるし、素直に喜べないというのが同じGKとしてある」と神妙に振り返る。だからこそ、磐井には「お前じゃなかったら延長まで来ていない」「だから自信を持ってやれよ」「ここで終わりじゃないから」とポジティブな言葉をかけ続けた。  新井自身は国士舘大出身だが、大学3年生までセカンドチームが戦うインディペンデンスリーグ(Iリーグ)にしか出場していなかった。「そんな奴がこうやってプロで15年もやれている」。大学サッカーの先輩としても「選手がダメになってしまわないような声掛け」を心がけたという。  磐井も糧にして今後の成長に繋げたいと意気込む。磐井は高校1年生の時に負った右手首の骨折の影響で、今も骨が完全にくっつかない状態でプレーしている。大学に入ってからすぐに手術をしたが、完全に治すことはできなかった。  ただ言い訳にすることもできない。完全に治すことが難しいと分かった以上、「上手く付き合いながらやるしかない」と決めている。大学での公式戦デビューとなった天皇杯には今まで以上に特別な思いを持った様子。磐井は「この経験を今後に生かしていくことがみんなのためになるのかなと思う」とリベンジを固く誓っていた。 (取材・文 児玉幸洋) ●第105回天皇杯特集●第99回関東大学リーグ特集▶話題沸騰!『ヤーレンズの一生ボケても怒られないサッカーの話』好評配信中

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