アメリカ、再びヴェネズエラの船を破壊し3人殺害 麻薬を運搬と主張
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アメリカのドナルド・トランプ大統領は15日、同国に向けて国際水域を航行中だったヴェネズエラの麻薬運搬船を破壊したと発表した。
トランプ氏は、「暴力的な麻薬密売カルテル」への攻撃で3人が殺害されたと述べた。破壊した小型船が麻薬を運んでいた証拠は示さなかった。
この直前、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、アメリカの「攻撃」から自国を守ると述べ、マルコ・ルビオ米国務長官を「死と戦争の権力者」と呼んでいた。
アメリカは今月初め、対麻薬作戦と称してカリブ海南部に軍艦を派遣。ヴェネズエラの小型船を攻撃し11人を殺害した。以来、両国間の緊張は高まっている。
トランプ氏はこの日、「今朝、私の命令により、米軍は明確に特定された、極めて暴力的な麻薬密売カルテルと麻薬テロリストらに対して、2回目のキネティック(動的)攻撃を実施した」とトゥルース・ソーシャルに投稿。
「これらの極めて暴力的な麻薬密売カルテルは、アメリカの安全保障への脅威になっている」と述べた。
投稿には、海上で船が爆発、炎上しているように見える約30秒の動画も添えた。
トランプ氏はその後、ホワイトハウスの大統領執務室で、小型船が麻薬テロ集団のものだと示す、記録された証拠をアメリカはもっていると記者団に説明。
「積み荷を見ればわかる。海のあちこちに散らばっていた。コカインとフェンタニルの大きな袋が至る所にあった」、「私たちはそれを記録した。とても慎重にやった。あなたたちが私たちを追及するとわかっているからだ。私たちはとても慎重だ」と述べた。
トランプ氏はまた、最近のアメリカの対応によって、海路によるアメリカへの麻薬密売は減ったと主張した。だが、陸路での麻薬流入は続いていると認めた。
そのうえで、「私たちは今、カルテルに対し、お前たちも止めてやると伝えているところだ」と述べた。
一方、ルビオ米国務長官は同日、乗組員11人全員が死亡したヴェネズエラからの船への1回目の攻撃について、この船がアメリカへの密売に関与していたことを「100%確信」していると主張した。
ルビオ氏は米FOXニュースのインタビューで、「これらの船の一部は爆破されなくてはならない」と発言。また、マドゥロ大統領について、麻薬密売に関与しているとされ、アメリカの「安全保障に対する直接的な脅威」になっていると付け加えた。
マドゥロ氏は同じ日、アメリカとの関係は「(同国の)爆弾による脅迫で破壊された」、「ボロボロの関係から、完全に壊れた関係へと移行した」と述べた。
また、ヴェネズエラ政府は「正当な自衛権」を「完全に」行使するとした。
国際水域を航行する船へのアメリカの1回目の攻撃に対しては、国際人権法および海洋法に違反している可能性があると、法律の専門家らがBBCに指摘している。
トランプ氏は14日、「ヴェネズエラ本土への攻撃を開始するのか」と記者から質問されると、「どうなるか見てみよう」と答えた。
同氏はまた、ヴェネズエラが「ギャングのメンバーや麻薬の売人、麻薬を送っている」と記者団に主張。カリブ海南部での密輸は「最初の攻撃以来」大幅に減少したとした。
今月2日にあった1回目の攻撃に対しては、ヴェネズエラは2日後に、F16戦闘機2機を米海軍の駆逐艦の上空で飛行させる対応を取った。
これを受けてトランプ氏は、「私たちが危険な状況に」置かれることがあれば、ヴェベネズエラの戦闘機を撃墜すると警告した。
両国の緊張は一時和らいだが、ヴェネズエラのイヴァン・ヒル外相が13日、同国の船に米軍が乗り込んだと非難したことで、再び高まった。ヒル氏は、「小型で無害な」漁船が8時間にわたって「不法かつ敵対的に」拿捕(だほ)されたとした。
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ヴェネズエラ外務省は声明を出し、この拿捕を命じた人は「カリブ海で戦争をエスカレートさせ、(ヴェネズエラの)体制転換を正当化する出来事を求めている」と主張した。
米当局はマドゥロ氏について、「太陽のカルテル」と呼ばれる麻薬カルテルを率いていると非難し、逮捕につながる情報に5000万ドル(約73億円)の報奨金を与えるとしている。
マドゥロ氏はこの疑惑を否定。自分を退陣させようとする「帝国主義の動き」だとして、アメリカを非難している。
マドゥロ氏は国民に対し、民兵組織への入隊を呼びかけている。この組織はこれまで、主に政治集会やパレードで参加者を増やすために使われてきた。公共部門で働く人は、入隊の圧力を受けているとされている。