高石あかり、朝ドラ「ばけばけ」で夢のヒロインに トキも自分も支えてくれる人と歩む

NHK連続テレビ小説「ばけばけ」でヒロインの松野トキを演じる高石あかり=大阪市中央区(柿平博文撮影)

9月29日から始まるNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」で、ヒロインの松野トキを演じる。朝ドラのヒロインは小学生の頃からの夢で、オーディションへの挑戦は「舞いあがれ!」「あんぱん」に続いて3度目。合格の知らせを受けたときの心境を弾んだ声でこう振り返る。

「もう一生この気持ちは味わえないんじゃないかと思うぐらい衝撃でしたし、本当に目の前が真っ白で。今こうして現場にいることが不思議ですし幸せです」

憧れだった朝ドラの撮影現場だが、リラックスして臨めている。現場の雰囲気が、「ワンシーンずつ撮影が終わるたびにみんなで笑ったり、役者さんたちが笑ってしまってNGになったり」と明るいのだが、そう話すヒロイン自身が、とにかく明るい。

撮影現場では、スタッフたちの細やかなこだわりが光る。例えば作中の食事には、物語の舞台となる地元産の食材を使う。度々登場するシジミ汁のシジミも宍道湖産だ。「背景一つにしても、すごく丁寧に作ってくださっている」と気づいたとき、俳優としての成長を感じたという。

「現場でリラックスしてお芝居ができているからこそ、周りの動きや美術、衣装も、ささいなものへのこだわりに目を向けられるようになった」

トキのモデルは「怪談」で知られる明治時代の文豪ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の妻、小泉セツ(1868~1932年)。八雲がモデルのヘブンを演じる英国出身の俳優、トミー・バストウとは息の合った関係が築けている。

「ばけばけ」で松野トキを演じる高石あかり(NHK提供)

バストウは日本語が堪能だが、時々「ちゃんと意味を伝えたい」と通訳を介して英語で思いを伝えることがある。英語を話せるわけではないが、通訳される前に、バストウが伝えたいことが何となく分かるようになったのだとか。

「ヘブンというキャラクターにも、トミーさんにも一番近いからこそ、少しでも支えになれたらという思いが最初から大きかった。その気持ちがより深くなっていると思います」

今作の舞台は、急速に西洋化が進む明治の日本。武士だったトキの祖父や父は、時代の変化に取り残されたかのように、甲冑や刀を大切にしていて、周囲からは好奇の目を向けられることもある。

トキはこうした価値観の違いを否定せず、「この人はこういう考えだ」と言える寛容さと強さを持っているという。「トキは作品の中心にいますが、引っ張っていくというタイプではない。ヘブンさんだったり、家族だったり、ずっとトキの周りには誰かがいて、その人たちと生きていく物語」と評す。

セツと八雲は、当時の社会では珍しい国際結婚だった。夫婦をモデルにした役に身を置く中で、「言語も文化も含め、“違う”って大変だけど、そのあべこべがすごく楽しい生活にしてくれているのかも」とほほ笑む。違いを認め、支え合って生きた、名もなき人々に光を当てる物語。「私もスタッフの皆さんに支えてもらっている。早く見てほしいという思いが強い」と結んだ。(前原彩希)

高石あかり=大阪市中央区(柿平博文撮影)

高石あかり(たかいし・あかり)

平成14年12月19日生まれ、宮崎県出身。31年から俳優活動を本格化し、令和3年に映画「ベイビーわるきゅーれ」で主演を務めた。主な出演作に映画「スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナルハッキングゲーム」「遺書、公開。」、ドラマ「わたしの一番最悪なともだち」「御上先生」など。

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