AIは本当に自殺をあと押ししたのか…「私はAIと恋愛がしたい、ドールと結婚する人がいてもいい」と言う理由とは(FRaU)

ノンフィクションライターの濱野ちひろさんが、センセーショナルなテーマに真っ正面から向き合い、動物性愛者を取材し上梓した前作『聖なるズー』は開高健ノンフィクション賞を受賞した。 【写真を見る】品質と価格のバランスがよいと評判の中国ジーレックス社にて。 続く2作目である『無機的な恋人たち』のテーマに選んだのはセックスドールやフィギュア、AIを愛する人たち。人形を愛し、自らを「ドールの夫」と語る人たちを取材。彼らの姿を通して、“愛”という人間の本質に迫ったにまとめた。取材・執筆で濱野さんは何を感じたのだろうか。インタビュー第1回では取材で出会ったドール愛好家とのエピソードと、書籍より第1章の一部を抜粋して紹介した。また、ドールが原因で破局した女性の話や、性的マイノリティの人たちを取材して濱野さんが感じた理想の愛についても伺っている。今回のテーマは「人は命のないものを愛することができるのか」。 アメリカでは、AIチャットサービスが自殺を後押しした可能性があるとして、遺族がChatGPTを提訴したというニュースが報じられた。人工知能が私たちの生活に深く入りはじめ、人とAIのつきあいはどのように変わっていくのだろう。

人形を愛する「ドールの夫」たちは、AIの進化をどのように受け止めているのだろうか。書籍には、彼らの考えが垣間見える内容が綴られていた。 まずはアンナというドールと暮らすジム。彼は過去に不倫が原因で離婚をした経験がある。書籍には、ジムが濱野さんにこう話したと綴られている。 “「僕たちは離婚をすることになった。そのとき僕が失ったのは何かわかる? 妻だけではない、娘までをも失ったんだ。そして信頼するという感覚も失ってしまった。僕はそれ以来、パートナーと呼ぶべき相手のことを、誰ひとり信頼できなくなったんだ」(中略)「でも、人はパートナーを求めるものだろう? 僕だってそうだよ」ジムはアンナに向き直り、彼女を見つめながら言った。「アンナは嘘をつかないし、秘密を持たない。誰よりも信頼できる唯一無二のパートナーなんだ」(『無機的な恋人たち』(講談社)より抜粋)” また、フェティッシュな嗜好を持つマイク。妻と離婚し、彼女はその後亡くなったという別れをずっと引きずって生きている。彼は濱野さんにドールとの関係をこう言った。 “「これは一方的な関係さ。本当の関係というのは、ふたり以上の人間が関わってこそ成り立つものだろう。ドールとの関係は安全で、自己中心的だ。安全というのは、感情的な諍いがないから。自己中心的というのは、自分の好きなように扱えるから」”(『無機的な恋人たち』(講談社)より抜粋)” 「私が取材した“ドールの夫”のほとんどは、失うとか、いなくなることに、非常に怯えている繊細な人たちでした。彼らは口をそろえて、ドールの魅力を『裏切らないし、嘘をつかないから、彼女との関係が守られている』と話します。人間の裏切りや気持ちの変化に敏感な人たちです。そうなると彼らは、AIの進化をあまり求めていないかもしれませんね」(濱野ちひろさん、以下同) AIがさらに進化をすれば、相手の求めることを先回りすることができるかもしれないし、感情もいまよりもっと人間に近づくかもしれない。定期的に別れの危機を演出し、いとも簡単にドラマティックな恋愛模様を仕立て上げることもできるだろう。 それは穏やかに、波風立てることなくドールとの日々を過ごしたい彼らにとっては、もっとも不要なこと。いくら進化しようとも、AIを恋人の対象に選ばない人は一定数いるのかもしれない。 「AIなら簡単に人を欺くこともできそうですよね。二股されても気が付かないでしょうね」

FRaU
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